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婚外恋愛  作者:
21/84

後悔と思い出

 いつもと変わらない騒がしい朝。


「お母さんーー! 靴下、片方なーーい!」

「これ、ボタンおかしくない?」

「あ、お水こぼしちゃった!」


 母に何が起きても同じ朝はやってくる。

 その騒がしい朝に助けられている自分もいる。


 ブロックされた事。

 意外にも相当ショックだった。


 自分は嫌いになれない、だから、ブロックしてくれたら楽なのにな……。

 そう考えていた事はあるけれど、ほんとにブロックされると思考能力ってなくなるんだ……。

 今、目の前で起こっている事を認めたくないという意識が働くのか……。


 私は、人を傷付けない様に、自分も傷付かない様に生きてきた……つもり。

 私は、彼を傷付けていたんだ……。

 ブロックなんて相当だよね。

 私は自分を責めた。


 私は過信していた。

 彼は警察勤務の人。

 警察官=誠実、正義。


 ブロックしてくれたら……と思っていたと言ってもせいさんはそこまではしないだろうと心のどこかで思っていたんだと思う。


 もちろん、誠実で正義なのが警察の仕事だと思う。 


 けど、せいさんだって警察官の前に心を持った一人の人間、それは私と変わらなかったのに……。

 

 人生最後の恋が人生初めてのブロックという悲しい結果に終わった。


 しばらくは後悔と自問自答の日々だったが、そのうちせいさんを心の中で描く事がなくなっていった。


 後悔はある。

 けれど、そこで止まってはいられないし、まだまだ生きてかなきゃいけない。


 私は今の状況を変えたくてバイトを始めた。

 初めての接客業。

 下の子を幼稚園に迎えに行くまでの数時間。

 初めての事だらけだけど、新鮮で楽しんで仕事をしていた。

 自分の居場所を変えるのは新しい風も入って私には心地よかった。

 

 気持ちの整理ができた頃、相談に乗ってくれた琴子ちゃんに連絡を入れ、直接会って報告する事にした。


 海沿いの小高いところにあるカフェ。

 天気も最高で見晴らしも抜群。

 潮風も気持ちいい。

 海も空も青く澄んで波がキラキラしてて見てるだけで爽やか。

 少し早めに着いた私はスマホで音楽を聴く。

 この待ってる時間、眺めのいい景色と、大好きな音楽と……最高に幸せ!


「こむちゃん、お待たせ!」


 いつも元気な琴子ちゃんがやってきた。


 私はこれまでの報告と現状を話した。


 終わりにしようとメッセージをしたら、また連絡すると言われた事、その言葉を私はそのまま受け止めていた事、待っても連絡は来なかった事、私からたくさんメッセージを送った事、ずっと全て既読スルーだった事、そして、SNSをブロックされた事、自分の気持ちや今の状況を話した。


「ブロック!? 最低! 何、その人! 既読スルーまではまぁ……と思ってたけど、ブロックって完全に関係を遮断した訳よね!? しかも、シカトのまま! 数ヶ月、こむちゃんの悩んだ時間を返せ!って言いたいよ! こっちもブロック返ししなよ!」


 私はせいさんをブロックしていなかった。

 もし、私までブロックしてしまったら嫌な思いするだろうな……と思ったから。


「こむちゃん、優し過ぎるよ。 こむちゃんだってブロックされてショックだったでしょ? 向こうだってこむちゃんを傷付けてるよ!」


 私の分まで怒ってくれてる琴子ちゃんがありがたかった。


 私自身、せいさんに対して怒りとかそういう感情を全く持てなくて、私が悪かったよね、申し訳ない事しちゃったよね、という方が強い。


 楽しく話してた事の方が大きくて、思い出すのは、笑ったりドキドキしたりしてる自分だけ。

 あの時、ああしとけば良かったとかはもちろんあるけど、今更な話だし、一つ勉強したと思うしかないかな……。

 

「こむちゃんが怒ってたり悲しんでたりしてたら辛いと思うけど……そうじゃないなら少し安心かな。 もうさ、忘れよう、その人の事。 このまま続いてたとしても、きっとその人、こむちゃんの気持ちなんて考えない自己中な人だよ。 会う前にそれがわかってよかったよ!」


 忘れよう……そうだね。


 琴子ちゃんの励ましでさらに一歩進めた気がした。

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