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婚外恋愛  作者:
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小さな恋

 私は大学まで地元で通いそして当たり前の如く地元で就職した。


 私の学生生活は、それなりに楽しかった。

 今思えばそれなりに……。


 近所には幼なじみもたくさんいて、小さい頃からいつも誰かと一緒に遊んでいた。

 暗くなるまでずっと一緒。

 鬼ごっこしたりままごとしたり。

 今では考えられないけど、とんぼや蝶々、捕まえて遊んだり…。

 今は見る事ももちろん触る事も無理になってしまった。


 何も考えなくていい毎日。

 私は寂しいさから遠いところで生きていた。


 そんな時、いつも遊んでいた幼なじみが住んでいる町のミニバスケットボールクラブに通い始めた。

 練習がある為これまでの様には遊べなくなってしまい、私は一人取り残されてしまった。

 寂しさなんて無縁だったのに初めて長い1日を過ごした感じがした。

 バスケに興味はなかったけど、幼なじみと一緒が良くて遅れて私も通い始めた。

 その一択だった。

 でも、やってみると楽しくて私はバスケにのめり込んでいった。


 そのミニバスは、同じ町の中にある3つの小学校に通う子達で結成されており、小学校の違う子達が集まり一緒に練習していた。

 そのミニバス仲間に私は恋をしてしまう。


 隣の学校に通う一つ年下の彼は、頭も良くて走るのも早くてバスケも上手で、彼の周りにはいつも友達が集まっていて楽しそうだった。

 彼には付き合っている子がいるとか、そんな噂も聞いた事があるけれど、私は土日の練習で会う事だけで満足だった。

 ふざけ合ったり、男子と女子のよくある攻防や口げんかみたいな事もしたけれど、本心はその時間を楽しんでいた。


 ある時、その男の子から、同じバスケクラブに通う自分の友達が私の事を好きだと聞かされた。

 小学生ながらその気持ちは嬉しかったがもちろん応える事もできず、そして、その男の子から報告された複雑な感覚を大人になった今でも覚えている。


 その彼とは中学も一緒、お互いバスケ部に入ってまた一緒。

 中学になると小学生の頃と違い、今度は先輩と後輩。

 中学になると男子と女子の見えない垣根みたいなものが生まれてくる。

 小学生の時と違って話す事も少なくなってきて、さらに遠くから見ている事しかできなくなってしまった。

 地元の高校に入学した私は、これでもう彼と会う事もないんだと思っていた。

 しかし翌年、彼は同じ高校に入学する!!


 なぜ!?


 びっくりでしかない!!


 彼は頭が良かったので、私が入った高校ではない高校へ入学するとばかり思っていた。

 当時、高校に合格者の名前を張り出していて合格発表の日、部活で学校に来ていた私は彼の名前を見つけてとても複雑な気持ちになった。

 嬉しい様なまだこの気持ちが続くのか…でもやっぱり嬉しかった。


 彼は高校ではバスケ部には入らなかった。

 少し期待していた分、残念に思った。


 文化祭の時、彼に久々に会い何年か振りにちゃんと話をした。


「バスケ、どうなの? 顧問の先生、厳しい?」


「厳しいよーー。 しんどいよ……。 何でバスケ部入らなかったの?」


 勢いに任せ、そう聞いてしまった。

 彼は進学クラスに入ったので学業を優先させたらしい。

 聞いて納得した。


「頑張れよ!」


「はいはーい」


 絶対に気付かれてはいけない私の気持ち。

 何でもない様に返事をするのは大変だった。

 彼の、


「頑張れよ!」


 は、涙が出る程嬉しかった。


 大きく深呼吸。

 人混みの中へ消えていく彼を私はそっと見る事しかできなかった。


 学年も違うし校舎も違ったりでさらに会う機会も話す機会も減ってしまったが、ばったり会えば、


「よ!」


 と、会話程度な事を交わしたり、存在に気付いて目で挨拶したり。

 よく会っていた購買部前のあの薄暗さや涼しさは切なく儚い私の気持ちを表現するかの様にどこか似ていた。

 そこへ用もないのに行ってみたり……、そんな事をしていた自分を思い出すと笑ってしまう。


 好きだったけど不思議と告白しようとか今の状況を変えたいとは思わなかった。

 私にとっては自分の気持ちが確認できる程大きくなってからの初めての恋だった。

 きっと、自分が動いて現状を失うより、いい関係のままひっそりと想っている事で彼の存在をいい想い出のままにしたかったのだろう。

 今でも忘れない人に変わりはない。

 たまに思い出す、あの頃の自分。


 誰にも打ち明けず想い続けた7年は、思い出すと気持ちが和らぐいい思い出で、本当にいい時間を過ごしたんだなと思う。


 彼は今どこで何をしてるんだろうか……?


 実は、一度だけ見かけた事がある。

 ファミレスで友達とドリンクを飲みながらいろいろ話している時、私の視線の先にふと目に止まった人がいた。

 作業服を着たその人はあの彼だった。


 あ!

 え?

 どうしよう……。


 友達の話が入って来ない……。


 彼は同僚らしき人といて、今から帰るところだった。

 私の目の前を通る彼は最後に会った時とそれ程変わってなく、私は彼を目で追いかけたが、高校時代の時の様に私に気付く事もなく彼は去っていった。


 あれから10年くらい経つ。

 また会えるかな。

 偶然会えるその日を私は楽しみにしている。


 中学時代も高校時代もバスケ部に入り、バスケに打ち込み、結果はともあれよき仲間に出会えた。

 いつの時代も私の周りにはたくさんの友達がいてくれた。

 友達との時間ばかりで恋なんて全くの学生時代だった。

 バスケや友達といるのが楽しかったというのは表向きの理由で、本当は恋をする事を避けていたのかも知れない。


 恋に臆病なのはこの頃からだった。

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