気付いた気持ち
この現状を何とかしたかった。
私とせいさんはSNS上での友達。
現実世界では知らない人。
私もそうあると思っていたし、そうあるべきだと思っていた。
お互い、その領域を越えようとしてはいけなかった。
せいさんは優しい入り口で私の前に現れ、私はまんまとその入り口に入ってしまい、せいさんの本心を探す迷路に迷い込んでしまったのかな。
会おうという話も、コーヒーショップでお茶するはずが、それがドライブデートになり、ホテルとははっきりとは言わないがホテルとなり……。
友達で会うならドライブまではわかってもホテルは違う。
本心がわからないままというのは私の中で混乱でしかなかった。
最初は友達作りのはずだったのか。
最初から『そういう人』探しだったのか。
今も友達作りのつもりなのか。
文字だけの関係はお互いのその時の気持ち次第で前向きにも後ろ向きにも取れる。
そんなつもりはなくても、間違って伝わる事の方が多いのかも知れない。
もし、そんな気はなくただふざけて言っているなら、文字を相手に送るという事にもっと慎重に打って欲しいと思った。
受け取った私はせいさんがふざけてる様には思えなかった。
話す内容も回数も……。
今まで送ってきてくれたメッセージに嘘はなく、ちゃんと私という人を思って送ってくれたものだと思っていた。
せいさんはどう思っているのか知りたかった。
私はせいさんに聞いてみた。
「私とのここでのやりとり、楽しい?」
「楽しいよ。 どうして?」
楽しいのか……。
どう楽しいんだろう……。
「私はね、このままでいいのかな?って思ったんだよ。 私、楽しい事、話せてない気がするんだよね。 もっとせいさんを知りたいと思ったよ。 私の事ももっと知って欲しいと思った。けど、最近話せてないな、と思って。」
それ以降、せいさんから連絡はパタリと来なくなった。
返信が来ないもどかしさってこんなに苦しいものなんだ……。
何日か連絡が来ない日だってあったのに、今回は全く待てなかった。
今、何してるんだろう?
今、仕事中なのかな?
仕事が忙しくて返信くれないのかな……。
少しでもいいから私の事を考えてくれてたらいいな……。
頭の中はせいさんで埋め尽くされていた。
私は自分の不安をかき消したいが為に、せいさんにメッセージを送った。
「私、何かしたのかな? 何で連絡してくれないの?」
「気を悪くしたならごめん。 私は元に戻りたいだけなんだ」
「私の事、嫌いなら嫌いって、面倒なら面倒って言っていいんだよ。 もうここでのやりとりをやめたいならそう言ってくれていいんだよ。 それは悪い事じゃないよ」
せいさんは何度メッセージを送っても返信はしてくれなかった。
SNSにはログインしてるみたいだったから意図的に返信してないのは分かった。
それが悲しかった。
急に返信しなくなった理由が全くわからなかった。
何度もメッセージを送る事はいけない事だし、逆効果なのもわかっていた。
その時の私は自分を何とか保つ為に送っていた。
せいさんの事を考える余裕は全く残ってなかった。
どうすればいいかわからなくなった私は、琴子ちゃんにLINEした。
琴子ちゃんは、
「やっぱり少し好きになりかけてるんじゃないかな? だから気になるんだよー。 SNSマジックだね。 顔も知らない人だけど、知らないうちに友達以上の気持ちになってたりするんだよ。」
と返信してくれた。
え? 私、好きなの? 会った事ないけど、好きなの!?
「友達なら既読スルーされても忙しいのかな?で、終わる話だけど、嫌いとか面倒とか思ってるなら言っていいよ、って相手を意識してるから言うんじゃないの?」
琴子ちゃんにそう言われてしっくりきた自分がいた。
私ってせいさんを好きになってたんだ……。
そっか……そうなんだ……。
私は自分の気持ちに気付いた。
けど、何も始まる事はない恋。
それは最初からわかっていた。
もしこの先何かあったとしても、せいさんとはこの先を進む関係にはなれないと思っていた。
思っていたその気持ちとは反対にせいさんに惹かれていったんだろうな。
DMでしか繋がっていない私とせいさん。
連絡を取れなくなったのなら知らない人と一緒だ。
会う事まで計画した相手。
他のSNS上だけの友達とは少し違う。
このまま何も言わずフェードアウトするのは簡単だけど、私はあえてそれをしないでおこうと思った。
私はせいさんに思った事を話して終わりにしようと決めた。




