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婚外恋愛  作者:
17/84

会いたい衝動

 夏の終わりに差し掛かった時、せいさんから来週末に帰れそうと連絡があった。

 どうしてもずらせない予定が入っていて今回は会うのは難しそう……と返した。

 せっかくだったけど……でも無理だった。


 週末、無事こっちに着いた?と連絡すると、


「今、実家。 こむちゃん、会いたかったな。」


 と、返ってきた。


 この街のどこかにせいさんがいる。

 「あの辺り」としか分からない場所だけど、でもいつもより確実に近くにいるんだ、と思うと嬉しかった。

 会いに行けないもどかしさと、会う事の怖さと、会わなくてよかったのかも…という安堵と、いろんな気持ちでぐちゃぐちゃだった。


 朝からソワソワしてしまって何も手につかない。

 何かうわの空。

 やっぱりダメだ……。


「ちょっと1時間ぐらい外していい? 買わなきゃいけないもの忘れてた」


 気付いたらそう夫に言っていた。


「あ、いいよー。 一緒に行かなくていいの? 気を付けてねー」


 と、快く承諾してくれた。


 心の中に、ごめん……!の3文字しか浮かばなかった。


 私はせいさんの実家近くというショッピングモールへ向かった。


 せいさんの顔は知らない。

 頼りはあの似顔絵だけ。

 いるかどうかもわからない。

 けど、もっと近くに行きたかった。

 時間は1時間だけ。


 ショッピングモールに着いた私は何となくいろんなところを歩き回った。

 もちろん、会えるはずもない。

 いるかいないかもわからないのに。

 私は勇気を出して、せいさんへ連絡する。


「今、ショッピングモールに来てるよ。 けど、あと30分くらいで帰る。」


 コーヒーショップでコーヒー飲んで待ってよう。

 一人でドキドキしながら待つ。

 いつもは美味しいコーヒーなのに、今日はコーヒーの味なんてしない。

 時間潰しに喉に流し込んでるだけ、そんな感じだった。


 人生とはうまくいかないもので……せいさんから連絡は来なかった。

 時間も来た事だし残念だけど帰る事にした。


 まぁ、急だし仕方ないよね……。


 でも、自分の行動力にびっくりした。

 私ってこんな事もできるんだ……。


 私が家に着いてしばらくしてからせいさんから連絡が来た。


「え! もう帰った? さっきまでいたの? 30分なんて早いよーー! 帰ってきてよ」


 DMに気付かなかったみたいで、見てたら行ってたのにーー!と言っていた。


 仕方ないよね。

 でもこれが最後じゃない。

 また会えるよ、元気に生きてれば。


 残念過ぎるけど今はそう思うしかない。


 またお互い、いつもの毎日に戻った。

 あの後すぐせいさんは自分の暮らす街へ帰った。

 また帰ってくるから今度こそ、そう言っていた。


「会えないけど、こむちゃんの事は少しずつ知っていくよ。」


 ふわりとした心地いい優しい風みたいなせいさんの言葉。


「ありがとう」


 私はそう返すのが精一杯だった。

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