正直
少し暖かくなったある日、私は気分転換にいつも行くスーパーではないスーパーへ向かった。
スーパーの駐車場に車を停め、店舗まで歩いていると声をかけられた。
振り向くと、友達の琴子ちゃんだった。
「こんなとこで会うなんてねーー! 久しぶり!
元気にしてるのーー?」
琴子ちゃんは相変わらず元気だ。
琴子ちゃんは元同僚で今も仲良くしてもらっていて定期的に会っていた。
どちらともなく連絡してお茶したり、ランチに行ったりしていたが、最近はタイミングが合わず珍しく久しぶりになっていた。
私は思わず、琴子ちゃんを誘った。
「ねぇ、琴子ちゃん。 少し時間ある?」
「どうしたの? いいよ、カフェ行く?」
私と琴子ちゃんは近くのカフェへ移動する事にした。
優しい音楽が流れる店内には、コーヒーのいい匂いが充満していた。
少し遅いお昼ごはんを食べる営業さん、読書をしながらゆっくりお茶を飲む大学生、パンケーキを分け合って食べてる仲良しなカップル、それぞれがこのカフェに幸せを感じにやって来ていた。
私たちは外がよく見える窓際の席に座った。
いつもとは少し様子が違う私に気付いたか、琴子ちゃんが話し始めた。
「最近どうなの? 急に時間ある?って言うの珍しいね。 何かあった?」
私はせいさんとの事を話した。
「そっかーー。 まぁでもまだ会った事ないんでしょ? 会ったところで何かあった訳でもないならいいと思うけどなーー。 それに今は自分の心に正直に生きるべき時代らしいよーー。 でもさ、その人、結構こむちゃんにグイグイきてるよね。 そんな事言われたらさ、何とも思ってなくてもドキッとするよねーー」
琴子ちゃんからは、とりあえず今のままで、また何か変わった事があったら連絡してね、と言われた。
琴子ちゃんに話して私は少しスッキリした。
人の意見を聞けるのってほんとありがたい。
自分の心に正直に生きる……か……。
私の心はどうしたいんだろう……?
ぼんやり考える時間が多くなった。
ある時、毎日の様にあった連絡が少し途切れた。
最近、連絡ないなぁって思っていたら、朝連絡が来ていた。
「おはよう! 今日も仕事頑張ろうね!」
仕事をしていない私に入ってきたメッセージ。
もちろん、せいさんに私以外にやりとりをしている人がいても問題ないし、悪い事じゃない。
でも、そのメッセージを見て悲しくなった自分がいた。
そんな人がいてもいいと思ってるのに、なぜ悲しいの?
間違ってるよーー、って教えてあげればいいだけでしょ?
「せいさん、メッセージ送る相手、間違ってるんじゃないかな?」
この文字をどのトーンでせいさんは読むんだろう……。
私は自分のこの感情がよくわからなかった。




