誰にも言えない
何度かやりとりがあり、少しずつお互い自分の事を話す様になった。
どこの高校の出身かとか、部活は何やってたとか、今、ダイエットしている事、そんな事も話した。
「何でダイエットしてるの?」
そう聞かれた私は、
「いつまでも綺麗で可愛い人でいたいから。
歳をとっても、女の人である事を忘れたくないし、何に対しても興味を持つとか、ドキドキする気持ちは持っていたいと思うから。
そういうのが若さの秘訣かな、って思うから」
と、答えた。
「それは大事な事よね。
こむちゃん、綺麗になってね!」
と、言っていた。
確実に連絡を取り合う回数が増えていっているのが自分でもわかった。
朝、出社する前に、「行ってきます!」や、帰ってきたら、「ただいま!」とか、最初はこんな連絡してくれるんだ、って思っていたけど、いつしかそれが当たり前になり、私もSNSにログインする事が多くなった。
普通にやりとりしているだけだったが、どこか悪い事をしている気がして、でも、友達なのに悪い事じゃないし……と、頭の中で悪い事と思う事を打ち消していた。
確かに、既婚者の私が既婚者の相手と意味もなくDM送り合ってます、なんて大きな声では言えない。
言えない時点でダメなのかな、とも思う。
けれどその時の私は、
悪い事ではない。
男の子の友達だっている訳でせいさんも一緒だ。
そう強く思っていた。
DMを送り始めて1ヶ月くらい経った頃、
「写真交換しない?」
と、提案された。
私は、まだ写真は恥ずかしいなと思ったので、まだ恥ずかしいからと言ってまたにしてもらった。
私のプロフィール写真は、私が好きな車を絵にしたものだったので全く想像もつかない。
せいさんはというと、随分昔に描いてもらったという似顔絵だった。
似顔絵でも少しイメージができた私は、少し悪いな……という気持ちになった。
考え直した私は、時間をもらえるようにお願いした。
自撮りは何か嫌だしなぁ……、私だけの写真なんてないし……。
顔が見えない角度から何とか撮った写真を送った。
顔がわからないと意味がないけど、これが今の私の精一杯だった。
これで、少しは私という人をイメージできるかな……。
嫌だと思っていた自撮りをした私。
そんな勇気あるんだ、と、意外過ぎる自分にびっくりした。
そんな自分は初めてだ。
案の定、もうちょっと、顔見せてよーー、と言われたが、今回はここまでが限界……と言って諦めてもらった。
「こむちゃん、ストレートなんだね。
綺麗な髪だね。 触りたいな。」
そう言われ、そう思うものなのかな?と思った。
言われて嫌な気はしなかった。
大した意味はなく何となくそう言ったのかな?と思った。
少し話しやすくなった事もあり、疑問に思っていた事を聞いてみた。
「前から聞きたかった事があるんだけど、聞いていい? 何で私にDM送ろうと思ったの?」
大勢いる中で、なぜ私が選ばれたんだろう……?
私はそれが聞きたかった。
せいさんは、
「【笑顔でいる事】かな。」
と、答えた。
それは、私の自己紹介欄に書いていた内容だった。
結婚して独身時代の時の様に自由な時間はなくなってしまったけど、楽しく過ごしていて、笑顔でいる事を忘れない様にしています、みたいな事を書いていたその事だった。
書いた私も記憶になく、読み返しても書いた当初の事も思い出せない。
でも確かに朗らかでいる事はどんな事があっても忘れないでおこうと思っているので自分で考えて書いたものに間違いはない。
そして、それも現在進行形だ。
明るく楽しく、毎日を過ごす。
そこをいいと思ってDMを送ってくれたんだと思うと嬉しかった。
気付けば毎日の様に何時間もやりとりしていた。
今日は何話してくれるんだろう?
私はせいさんとのやりとりが楽しみになっていた。




