表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚外恋愛  作者:
1/84

穏やかな時間

「さむっ……」


 1月の朝のリビングはまだまだ寒い。

 エアコンを入れて部屋が暖まるのを待つ。


「ふぅーー」


 静けさの残るリビングで、温かいお白湯が体の中に入っていくのを感じながら、何かを考える訳でもなくぼーっと一息つく。

 お白湯を飲む音を感じ、これから始まる一日にエンジンをかける。



 冬の朝は嫌だ。

 寒くてなかなかベッドから出られないし、日が差し込むのも遅いせいもあり薄暗く侘しさを感じる。

 何をしなくとも悲しく思ったりする。

 だからあまり冬は好きではない。



「さぁ、朝ごはん作ろうっと!」



 気持ちを奮い立たせキッチンへ向かう。



 私の名前は、井川さえ。

 歳は43歳、専業主婦。

 2年前に念願のマイホームを建て、余裕がある訳でもなく、取り立てて大きな不満がある訳でもなく……ごくごく普通の毎日を過ごしている。



 とにかく、朝は戦争だ。


 部屋が暖まってきた頃、夫と子供達がリビングへやってくる。


 いつも眠そうな子供達。


「もっと早く寝なよーー! だから眠いんだよーー」

「さっさと食べちゃってーー」

「ちゃんと顔、洗った?」

「外でみんな待ってるよ! 急ぎなよーー!」


 朝はだいたい同じ事を言っている。


 子供は二人。

 最近、生意気になってきた小学生の女の子、そしてまだまだ甘えん坊の幼稚園に通う男の子。

 毎日が戦争で、学校や幼稚園へ送り出すまでが大変!

 朝から些細な事で言い合いになったり、喧嘩が始まったり……。


 バタバタしてる中、のんびりコーヒーを飲む夫。

 これもいつもの日常だ。


 夫はというと、朝は一人マイペース。

 ゆっくり朝ごはんを食べ、新聞を読む。

 時間になると動き出す。

 時間があっても早めに済ます……という事はしない。



「じゃあ、お父さん、いってきまーす!」



 出勤前の夫を残し、子供達と一緒に外へ出る。

 友達と合流した娘を見送る。


 友達と楽しそうに話しながら学校へ向かう娘を見て、これから楽しい事、悲しい事、悔しい事、いろんな経験や恋をしていく夢も希望もいっぱいの人生、なんてうらやましいんだ……そう思いながら見送り、下の子と近くの幼稚園バスの乗り場まで歩く。



「ねぇ、お母さん。 今日は幼稚園にパトカーが来るんだって!」



 幼稚園で交通教室があるらしく、パトカーにも乗せてもらえるのを楽しみにしている。

 こちらの男子も毎日を謳歌している。

 いいな、若いって……。


 バスに乗り、笑顔で大きく手を振り幼稚園へと出発した。


 夫も続いて出勤して、残された私一人。

 静まりかえったリビングに一人。



「みんなやっと行ったーー! 今日は何しよっかなぁーー?」



 これからの時間は私時間。

 のんびりできる大切な時間。


 みんなが帰ってくるまでの時間、自分に向き合う大切な時間。

 こんな贅沢な時間を過ごせるのはいつまでなのかな……。


 心躍る事とはウラハラにその頃の私はいろんな事を考え始めていた。

 漠然とした不安、未来へのビジョン……一人で考えたところで答えが出る訳でもなく、ただただ、心の中にあるモヤモヤしたものを感じる事しかできなかった。

 そう思い始めて結構経つ。

 解決策も見出せず、ただ何となく毎日を過ごしていた。


 私が住んでいる所は、同年代の家族が集まる住宅街で、子供同士も同級生だったりして子供を中心にコミュニティが自然と広がって行った。


 ありがたい事に、新しく引っ越してきた私達にもみんな親切ですぐに打ち解ける事ができた。


 私と夫の実家は近くにはなく、何かあっても親を頼るという事はできなかったが、ご近所さんの力を貸してもらえたり気遣ってもらえたり、恵まれた環境で暮らさせてもらえる事に感謝と笑顔が溢れる毎日を送っていた。


 心の中にあるモヤモヤしたものをふと忘れる瞬間もあり、これを幸せというんだろうな、それに気付く度、私はそう思っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ