〜宮島零〜
2 俺は俳優。
「おい、ドラマ見たか?」
「ああ、見た見た。やっぱ、零かっけぇよな〜」
「ほんとそれ、俺らと同い年なんて見えねぇ〜、嘘なんじゃねえの?」
「経歴詐称?ww」
ーーーーーチッ、ふざけんなよ。経歴詐称?そんなことするかよ、屑どもが。ーーーー
「だってよ、あの身長。やばくね〜?」
「…195…だっけ?」
「多分…しかも筋肉やベーし…」
「確かにな、高2にしてはカッコよすぎだよな〜」
ーーーー195じゃねぇ!196だ!でもやっぱ、俺ってかっこいいよな〜(ドヤァァ)ーーーー
「でもよ、うちのクラスにも長身がいるぜ」
「あ〜いるいる、根暗。」
「ぎゃははは…」
ーーー悪かったな、根暗で。俺だって好きでこんな姿してるわけじゃねんだっつうのーーーー
澄ヶ丘高校2年4組宮島 零、俳優だ。「完璧男子」という名前がつくほど、俺は完璧だ。
頭脳明晰、容姿端麗、全てにおいて、俺は負けたことがない。
小さい頃から子役をしていて、俺は、顔もかなり良かったし、成績も良くて、小学校のテストは、一番点数が低くても、99点ぐらいで基本は100点だった。完璧な俺はスカウトをよくされた。子役としてうまくいってテレビ出演もあって、そこそこ名が知られてたせいか、物凄くモテた。
小学5,6年になると体つきや、声などが成長していって、男らしくなったのもあって、2月14日のバレンタインの日は下駄箱や机の中、家のポストの中など女どもからのチョコが大量にあった。ほとんどのチョコは、手作りでガチで不味い菓子もあった。見た目だとか、匂いだとかが無理で、ほとんど食べずに捨てた。ゴミ箱もパンパンになって、いい迷惑だった。そういうこともあって俺はチョコが嫌いになった。
って、俺の紹介は後でにするとして、俺がなんで根暗を演じているのかっつうと、俺は今、世界中が注目する俳優だからだ。頭脳明晰のおかげで、英語はもちろん、フランス語や、スペイン語、中国語、韓国語など10ヶ国以上喋れる。だから、基本的に海外に行って不便なことはないし、自分の思いだとか意見も伝えることができるから、撮影がうまくいく。
ちなみに、俺の名前を中国語,韓国語で書くとこうだ。
・미야지마 영(韓国 ハングル)
・宫岛丽(中国 簡体)
かっこよくないか?俺は、もちろん書くこともできるから、撮影の為に韓国に訪れた時に、お礼の手紙を書いたら、ネットで拡散されて有名になった。
こんな感じで俺は、世界的大スターだ。だから、こんな普通の学校に通っていると知れば大変なことになる。そういうわけで、クラスではあまり人と関わらないようにし、根暗を演じて俳優の「零」というのがばれないようにしている。
さっきも言ったように、世界的有名だと海外での撮影は多く、学校に中々いないから、注目を集めることになるけど、それは持病があって休みがち、ということにしてもらっている。それができるのも、子役時代の時に、お世話になった事務所の社長さんと、高校の校長が旧友という関係のおかげで、学校を簡単に休めている。ただ、そんなことが許されるのは、俺が成績優秀のおかげだ。今のところテストは全教科100点、順位も1位をキープし続けている。学校も全然行ってないため、変な噂もたっているがそんなくだらないことは気にしない。
俺には、モデルの天崎 雫がいればいいから。
実は俺はモデルの天崎雫の大大大っっっファンだ。
俺は、子役をやっていた頃に1度だけ天崎雫と共演したことがあった。雫は覚えていないかもしれないし、そもそも共演した相手がこの俺ってことも知っていないと思う。
なぜなら、子役をやっていた時の芸名はひらがなで「れい」だったからだ。さすがに、本名は危ないしな。小4ぐらいまで子役をやって、その後受験だからって親に無理やり辞めさせられた。そのあとは受験が終了して、中学入る頃にまた復帰した。
俺は家から1時間半かけて、偏差値が70くらいある学校に行った。
その後澄ヶ丘高校に進学した理由は、そこまで馬鹿な高校じゃなかったっていうのと、正体がばれずに登校できそうだったからだ。
まぁ、俺の学力だったら県で一番頭がいい学校とか余裕だっただろうし、まず推薦入試が来てたくらいだから余裕だったけどな。事務所の社長には、アイドルとか芸能人専用の学校を勧められたけど、プライバシーを守るため芸能高校には行かなかった。
俺が雫のファンっていうのには、もちろんかわいいっていう理由はあるが、もう一つあって、雫が俺の初恋っていうのもある。ドラマの打ち上げとかで共演した女優と飲んだりするけど、妙に寄ってきて、自分の自慢話だとか、俺を褒め上げたりだとか嘘ばっかり。
どうせ、そんなこと少しも思ってないくせによく言うよなー
俺は自分の点数稼ぎのためのたかが『駒』、SNSに投稿して、フォロワーだとか自分の好感度を上げるって言う役目。子役として活動していた頃もそうだった。俺自身、「宮島零」を見てくれてるわけじゃなくて、「子役」の「れい」しか見てくれない…。
近寄って来るやつらは、みんな必ず写真を撮りたがる。それを投稿して、自分の好感度を上げる。ただそれだけの繰り返し。それに気づいたのは、受験で仕事を休んでいた時だった。俺が仕事休んだとそった途端、周りから人がいなくなった。あんまり気になんなかったけど、いい気分ではなかった。だからわざと頭のいい、うちの小学校出身のやつがいなそうな学校に進学した。
初恋のきっかけは、受験前最後のドラマ撮影で俺と雫が幼少時代を演じたものだった。
主人公の幼少時代を雫が、その幼馴染の幼少時代を俺が、という撮影だった。シーンはあまり多くなくて、俺らの撮影期間は短かったけれど、雫と撮影した時間はすっげぇ早く感じた。それほどに、雫との撮影が楽しかったという証拠だ。受験で忙しくて、勉強ばかりしていたから、中学に上がる頃はもう既に俺は、流行に遅れていた。だが、受験が終わったと聞いて、すぐさまスカウトが大量にきた。元いた事務所の勧めもあって、今の事務所に入っている。俺はすぐに売れ出した。
でも、その頃には「天崎雫」の姿はなかった。聞いた話によると受験前に出たドラマで消えてしまったらしかった。その後1年ほどは、何を聞いても誰に聞いても「天崎雫」の情報は耳に入ってこなくなった。俳優デビューした少し後にモデル、天崎雫として売れだしていた。そのことを知ってどれほど嬉しかったか……。
会いに行って、また話がしたい。そう思っても向こうもうまくいってて、俺も仕事で埋まってて、2年後のスケジュールまで埋まっていたくらいだった。だから会いに行くことはできず、共演することもなかった。
そんな中、俺には「もしかして雫なんじゃないか?」と疑っている人がいる。
それは、クラスメートで地味子の天崎雫だ。疑っている点はこんな感じだ。
①同姓同名
なかなか、「天崎雫」という名前は聞かない。噂で、モデル天崎雫は本名だと言われて
いるが、確信があるわけじゃないからなんとも言えない。
②身長が同じくらい
おれはかなりの長身で、高校生にしては高すぎると思う。俺は基本的に人を見下ろす状
態だから、体のどこらへんが何センチ、みたいな基準がある。雫は165cmという。
俺からしたらかなりの小柄だが、肘あたりだと思っている。それが妙にあてはまる気が
するのだ。
③学校をよく休む
俺もそうなのだが、クラスメートの天崎は学校をよく休む。理由はよく知らないが。
ただ、おかしいのがモデルの雫の撮影期間だとか、いろいろあるがその期間とクラスの
天崎が被っている気がするのだ。
まあ俺のことだから、モデルの雫の撮影期間、場所など関係者にうまく言えば、教えて
もらえるんだけども、それと天崎の休みが被っていた。(俺の調べた限りだとだが……)
こんなにも被ることは早々ないと思う。だから俺は同一人物ではないか、と疑っている。
なんやかんや考えていたら俺は消しゴムを落としてしまった。しかも天崎の席の付近に落としてしまった。俺は消しゴムを取りに行った。
天崎が席を立とうとしているにに気づかず………。
ドン!!!
「ってぇ……」(ふざけんなよ…)
「宮島くんっ!ご、ごめんなさいっっ!!」
「僕のほうこそすみませんっっ!!」(何で俺が謝らなきゃいけねーんだよ!)
「あ、あの怪我とかないですか…?」
「僕は平気です。天崎さんこそ、大丈夫ですか?」(おいおい、手に擦り傷できたろーが!!)
「私は、平気です。あ…で、でも…宮島くん、手…」
「こ、このくらい平気です、では。」(平気なわけあるかボケ!!)
こんなところで俺の正体と素顔がばれてたまるか!今日も一応ドラマの撮影があるが、それまでまだ時間があるから、俺は素早く眼鏡を拾って、イメージ的(←根暗の)に一礼して
実験室に向かった。俺は、その後内心ドキドキしていた。天崎が思った以上に美人だったからだったというのと、眼鏡が取れて、正体がばれないかヒヤヒヤしたからだと思う。
俺はこの時、天崎に恋をしたとは思ってもいなかった。




