きっかけとなる出会い
ドン!!!
私は、誰かにぶつかったようでしかもその相手が最悪だった……
それは、根暗で存在感が薄くて、クラスに馴染めていない宮島零だった。
「ってぇ……」
「宮島くんっ!ご、ごめんなさいっっ!!」
「僕のほうこそすみませんっっ!!」
「あ、あの怪我とかないですか…?」
「僕は平気です。天崎さんこそ、大丈夫ですか?」
「私は、平気です。あ…で、でも…宮島くん、手…」
「こ、このくらい平気です、では。」
そう言って宮島は落ちた眼鏡を拾い、ぺこりとお辞儀をして向こうに行ってしまった。
そして私は失態をおかしたことに気づいた。
モデルの天崎雫が、一般人に怪我をさせてしまったのだ…。擦り傷でも、怪我をさせたことは事実であり、消えない。
バッ!と、時計を見ると学校を出なければいけない時間になっていた。
今日は「sunshine」という大人っぽいカジュアルな服装がメインの雑誌の撮影で、私は誰にも正体がばれないように、スタジオに向かう途中にあるショッピングセンターの、トイレで、制服からあまり目立たない私服に着替えて、スタジオに向かった。誰にも見つからず楽屋に行く方法は秘密だが、秘密のルートがあって、その秘密のルートを通って楽屋に行くのだ。
この日、メイク中など一切言葉を発しない雫が言葉を発した。
「 …坂本さん」
「!!?!!?!?!は、はい!」
「俳優の零って知ってる?」
「!?当たり前ですよ〜逆に知らない人いませんって。」
「……ふぅ〜ん」
「…どうかしたんですか?」
「零って、どこの高校に通ってるか、誰も知らないんだよね?」
「は、はい。……それがどうかしましたか?」
「別に、同い年だから気になっただけ…」
「同い年ですもんね〜」
「………」
それ以降、雫は話さなかった。
ただ、これを聞いたのには理由があった。
それは、ついさっきの宮島零とぶつかった時のことだ。雫とぶつかった零は、ぶつかった勢いで、していた眼鏡が外れてしまったのだが、パッと見た時に顔が、零にすごく似ていたのだ。それだけではない。不思議な点は何個かある。例えば、私と同じで、学校をよく休むし、体育は必ず見学、どんなに暑い夏でもジャージは脱がない。
そして何と言っても身長は高校生にしては、高めで、すらっとしているのに、見た感じ筋肉質ということ。
零と宮島零が、同一人物ということを、裏付けるには証拠が少ないが、重なる部分も多々ある。
零と宮島の漢字がたまたま一緒かもしれないし、あんな、根暗があの零なわけないか…
結局そういう結果に行き着いたということで、雫は考えるのやめ、撮影に臨んだ。
今日の服装は、白いブラウスにピンクベージュのニットベスト。それにデニムパンツといったよくあるカジュアルな服装だった。他にもキルトスカートや、チュールロングスカートといった、大人可愛いコーデもあった。
私は、普通に可愛いモデルさんが似合う洋服は、当たり前に似合うけれど、コーデのセンスだとか、本当に似合う人しか着れない服装が、似合っちゃうから評判もいいし、売り上げもいいのだ。
でも、これは私が努力してきた結果であって、容易に手に入れたわけだはないことはわかってほしい。
元々子役として、活動していたけれど、他にも代わりはたくさんいたから、中々オファーが来なくなって、子役をやめた。でも中学生に学年が上がる頃に、またやりたいと思い始めて、日々努力を重ねた。
オーディションも何回も受けて、落ちて。太ったりしないように、また、体のケアも欠かさずやった。そんな、なんやかんや1年やり続けて中学2年生の春、冬に受けたオーディションを受かったという通知がきた。それが今の事務所である。
中学1年の、ちょうどその時期に、アイドルからモデル、そして女優とデビューを果たした、咲村檸檬 ちゃんがブライクしてて、オーディションに受からなかった。でも、ある騒動をおこして、収まった頃に私がでてきたというわけだ。
もちろん最初は、全然売れなくて、仕事も少ない方だったけれど、渋谷のビルのポスターにのるはずだった子が、急遽撮影ができなくなって、一か八かで私がやることになったのがきっかけで、ブレイクした。
私のブレイクのきっかけはそのポスターであり、それがなければ今この舞台にはいないだろう。
「努力」という私自身の頑張りもあるだろうが、ほとんどはラッキーだ。そのポスターが私に回ってこなければ、私が失敗しなかったことが今の私につながっていると思う。




