第二十二話 がんばれー!の力
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セフィの「おしごと」はだいたい毎日続く。
弱い雨の日も風の日も暑い日も続く。嵐や台風の時はちょっと休む。大雨の日も休む。
危ないので。当然だ。
だが、だいたいは毎日続けられるのである。
ところで覚えているだろうか?
セフィの「がんばれー!」は、里の中に生える大樹や外周を囲む茨の壁にかけられていた事を。
その対象に、俺は含まれていなかった。
しかし勘違いしないで欲しい。それはセフィに俺を応援する気持ちがないというわけではないのだ。ちゃんとした理由がある。
進化前の俺はウォーキングウィードだった。
そしてセフィに抱えられて移動することもあるために、あまり大きくなるわけにはいかなかったのである。
もちろんセフィは聞いてくれていた。
『ユグ、セフィが「がんばれー!」っておうえんしてあげようか?』
と。
俺はそれに断腸の想いで『あまり大きくなるとセフィじゃ持てないだろ? だから今は遠慮しておくよ』と返したのである。
だが、それも今は昔の話だ。
俺はマナトレントに進化した。
普段、セフィといるときは依り代のウォーキングウィードに宿っているので、本体を応援してくれることには何の問題もない。むしろ推奨したい。とりあえず里でも一番の大樹になることが当面の目標なのである。
なので――、
「ユグ、がんばれー!!」
いつもの時間。
順々に大樹を巡って広場へやって来たところで、セフィは俺の本体に魔法をかけた。
一時的に本体へ意識を戻している俺は、セフィの魔法を受けて体の奥底から力が湧き上がってくるような感覚を得た。
『おおおお~!!』
全身の細胞の一つ一つが賦活するような鮮烈な感覚は、レベルアップした時に感じるものと似ている。
実際にセフィの魔法を受けてみるまでは、おそらく「グロウプラント」の魔法であると思っていた。そうでなくとも、同じような効果を持った魔法だと。
だがしかし、それらの推測は間違いであった。
セフィの魔法を受けると、微々たる数値ではあるが、なんと【生命力】と【魔力】の値が一回毎に上昇していたのである。
それまでレベルアップ以外では上昇しなかった数値が、だ。
このような現象を、いまの俺では引き起こすことはできない。というより、植物魔法でも不可能と言うべきだろうか。
それは植物魔法ではなく、まさに「魔法」としか言い様のない不思議な力だった。
おそらくハイエルフだけに許された特別な力なのであろう――というか、実際に長老がそう説明してくれたのだが。
「ユグ、どう?」
と、セフィが聞いてくるので、いつものように礼を言う。
『おう! めっちゃ元気になったぜ! ありがとな、セフィ!』
「ふふーん!」
セフィは胸を張って満足そうなドヤ顔を浮かべた。
そんなセフィを横目に、俺は自らのステータスを確認してみる。
【固有名称】『ユグ』
【種族】霊樹・マナトレント
【レベル】34/50
【生命力】1027/1027
【魔力】1415/1415
【スキル】『光合成』『魔力感知』『エナジードレイン』『地下茎生成』『種子生成』『地脈改善』『変異』『憑依』『結界』
【属性】地 水
【称号】『賢者』『ハイエルフの友』『エルフの里の守護霊樹』『人気者』『武器製造の匠』
【神性値】167
ウォーキングウィードの時は1レベル上昇する毎に初期値――つまり1レベルの時の数値と同じだけ【生命力】も【魔力】も上昇していた。
しかし、それは「2」とか「3」とかいう微々たる数値である。さすがにその時と同じわけにはいかないのか、上昇幅は初期値の10分の1となっていた。
それでも1レベル毎に「15」「23」という上昇値なのだから、進化前とは比べ物にならない成長率だ。
まあ、その分だけレベルも上がりづらくなっているのだが。
そして、レベルアップで上昇する値に加えて、マナトレントとなってからセフィの「おうえん」を受け続けた結果、今の数値になった。
セフィの「おうえん」では【生命力】と【魔力】のどちらもが上昇するが、その上昇値は「1」である。それも魔力の方は比較的上昇しやすい傾向にあるものの、生命力は上がらないこともある。
それでも1年と数ヵ月、毎日のように魔法を受けていれば、魔力は400以上、生命力も400近くが上昇していた。
これはかなり凄いことであると思う。
まあ、そんなわけで今の数値に至ったわけだ。
進化前とは雲泥の差である。今のところ俺が率先して戦うような事態には遭遇したことがないが、実際戦ったらまあまあ強いんじゃないだろうか?
いや、ゴー君たちと違って大して動けないし、攻撃手段も豊富ではないけれど、敵が近くにいるなら色々とやりようはあると思う。
ああ、それからついでに説明しておくと。
【神性値】も随分と上がった。
相変わらず進化時以外に使いどころが分からない数値だが、進化の時に使えるだけでも有用な数値ではある。
エルフの里で暮らしているとじわりじわりと上がっていたのだが、やはり、なぜかは知らないが、マナトレントに進化した後の方が上がりやすい気がしている。
それから狼人族がここで暮らすようになってから、一気に数値が上昇した。
森で一株で暮らしていた頃には全く上がらなかった数値だから、やはり他人――人であるとは限らないかもしれないが――と一緒に暮らすことが重要なのだろうか?
まあ、ともかく。
数値も100を余裕で越えているし、次の進化が楽しみでもある。
それから【称号】について。
幾つか増えた。
それぞれの詳細を見ていくと――、
【称号】『エルフの里の守護霊樹』
【解説】時にエルフたちに守護され、時にエルフたちを守護する。それはエルフたちと共にある霊樹の証。植物魔法の効果が少しだけ上昇し、エルフたちから好意を得やすくなる。また、エルフの里にある限り、その成長には補正がかかる。
【効果】エルフ族から好感度上昇。植物魔法効果上昇・小。成長速度上昇・小。
効果としては『ハイエルフの友』と似ているし、被っているところもある。
成長速度上昇というのは、レベルの上がる速度が早くなるようだ。
【称号】『人気者』
【解説】あなたは人気者である。皆から求められるキラリと光るものを持っている。それが何かは千差万別だけど、それがあなたの魅力であることに変わりはない。自らの魅力を自覚し磨くとき、あなたの中で特別な何かが目覚めるかもしれない。
【効果】特別な効果は付与されない。
うん。
俺ってばエルフたちからも狼人たちからも、大人気だからね。知ってる。
キラリと光るものって、果物でしょ? 知ってる。
【称号】『武器製造の匠』
【解説】あなたが作り出すのは剣? 槍? 弓? いいえ、違う。一つには拘らず、いくつもの武器を作り出す。幾人もが性能を認める優秀な武器を。目指せ、更に研鑽せよ! 神の手と呼ばれるその日まで。
【効果】武器製造に補正・小。
これはミストルティンを作ってやったからであろうか。
まあ、自分が作った物が優秀だと言われるのは、そう悪い気はせんよ?
いやでも、武器を作るのが目的ではないんだ。いったい俺に何を目指せと言うんだ。
まあ、進化してからの変化と言えば、これくらいのものであろうか。
俺も成長したもんだぜ、と自画自賛したくはあるが、実はそれ以上に成長し変化している者たちがいる。
何って?
もちろん、それはゴー君「たち」である。
「ユグー、つぎのとこいくよ!」
『おう、そうだな。行くか!』
ステータス画面を見ながらヌフフと笑っていると、痺れを切らしたセフィから促されてしまった。
移動用の依り代であるウォーキングウィードに憑依すると、セフィと一緒に次の大樹へ向けて移動していく。
里の大樹すべてを「おうえん」したら、次は茨の壁だ。
そしてその外側には無数のゴー君たちがいて、今では彼らの様子を見るのもセフィの「おしごと」の一環となっているのであった。
そんなわけで、行くぜ。
ゴー君「たち」のところに。




