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第十八話 セフィの超感知

11/2 ゴー君2号と3号が逆になっていましたので、修正しました。

正しくは茨のゴーレムが2号、蔦のゴーレムが3号です。

すでに読んでいた方は、混乱させて申し訳ありませんm(_ _)m


 ●○●



 ぽかぽかとした陽気に照らされている。

 光合成が捗るのはもとより、気持ちの良い太陽の光を浴びてのんびりしていると、眠くなってしまうのは生命の本能だろうか。


 セフィが昼食を食べてお昼寝をしている時間、特にするべき事もない俺も、セフィと一緒に昼寝をするのがいつの間にか日課となっていた。

 窓から入り込む風、さやさやと揺れる木の葉の音、セフィの微かな寝息をBGMに心地好く微睡む。

 と――、


「――だれかきたっ!!」


『……ふぁ?』


 セフィの叫び声で目を覚ます。

 寝起きのぼんやりとした意識でセフィの方を向けば、寝起きとは思えないほどぱっちりと目を開いたセフィが慌ただしく起き上がるところだった。


『え? なに? どしたの?』


 誰か来たという割に、室内には誰もいない。

 魔力感知を広げて周囲を探ってみても、ウチに近づいて来る存在は感じ取れなかった。


『……寝ぼけたのか?』


 きっと夢の出来事と勘違いしているのであろう。

 そう判断した俺はもう一度寝直そうとして、しかし、勢い良くセフィに否定される。


「ちがう! めっちゃいっぱいこっちにくるの!」


『誰が来るんだよ?』


「わかんない! わかんないから、いこ!」


『え? どこに行――ちょっ!?』


 何やら珍しく焦った様子のセフィが、鉢植えに植わっている雑草姿の俺を勢い良く引っこ抜いた。

 そのまま家を飛び出し蔦に掴まり勢い良く地面に降りると、里の中を走り出す。

 向かう方向からして行き先は……里の門か!?


『おいおいセフィ! まさか外に出るつもりか!?』


「うん!」


 走りながら元気良く頷くセフィだが、勝手に外に出てはダメだと長老に言われているだろうに!


『長老にはちゃんと言うんだろうな!?』


「あとでいう! いっぱいいるから、はやくしないと、あぶないかも!」


『じゃあ護衛役にウォルナットとローレルについて来てもらえよ!』


「わかった!」


 ウォルナットとローレルは、俺がこの里に初めて来た時に会った青年エルフたちの事だ。

 今の時間なら昼食を終えて門の近くにいるはず。最悪でもどちらかはいるだろう。


 そう考える間にも、茨の門へ近づいていく。

 視界の中に門が入り確認すると、青年エルフの片割れたるウォルナットだけがいた。赤毛でエルフにしてはちょっとだけ活発そうな感じの男だ。

 セフィは怠そうに突っ立っているウォルナットの横を通り過ぎ様、


「ウォル! ついてきて!」


「え!? 姫さん!?」


『ウォルついて来い! セフィが外に出るつもりだ!』


「精霊様!? ちょっ! 待っ!」


 まったく突然の事に慌てる気持ちは良くわかる。

 だが、セフィはウォルナットがついて来るかなど確認もせず、門を出て森の中へ。

 一年以上セフィと暮らして、この幼女ハイエルフがどれくらいの力量を持つかはだいたい理解できたつもりだ。そこらの魔物に害される事さえそうそうないだろうと分かっているが、それでも子供だ。油断してという事もあり得る。

 おまけにセフィ曰く、「めっちゃいっぱいこっちにくる」との事である。

 それが敵対的な何かであり、力量も高い存在であったなら、多勢に無勢で敗北することも考えられた。

 だから――、


『ほら早く! セフィを一人にするな!』


「わ、分かってますよ! ああ、もうっ!!」


 後方のウォルナットを急かす。

 彼は諦めたように門衛の役を中断し、俺たちの方へ向かって走り出した。

 そうしてすぐに横に並んで、


「後で叱られるのは俺もなんですからね! 精霊様、ちゃんと取りなしてくださいよ?」


 情けなくもそんな事を言う。

 セフィの無茶は日常茶飯事だが、ウォルナットには保身ではなくセフィの身を第一に考えてほしいものだ。いやまあ、彼の言うことも理解できるのだが。


『大丈夫だ、長老には俺がちゃんと言っておく』


「ローレルにも、お願いします」


 青年エルフの片割れたるローレルは神経質で生真面目だ。ウォルナットが門衛を放棄して勝手にどこかへ消えたとなれば、烈火のごとく怒り出すかもしれん。


『それは自分でなんとかしろよ』


 幼馴染みなんだし。

 ローレルの怒り方がちょっと恐いからではないよ?


「そんなぁ」


 情けない声を出すウォルナットだが、一つ深い深いため息を吐くとキリッとした表情で顔を上げた。

 どうやら今はセフィの護衛に専念する事にしたらしい。


「それで、どこに向かってるんです? 何があったんですか?」


『知らん!』


「は、はあ!? 知らんてちょっと!?」


『セフィがいきなり走り出したんだ。なんかいっぱい里に向かって来てるらしい』


「げっ」


 ウォルナットはそれを聞き、嫌そうな顔をした。


『なんだよ? 心当たりでもあるのか?』


「まあ、はい……ゴブリンの群が移動してる程度なら良いんですがね。ほら、強い魔物なら基本群は作りませんし、里に近づくこともないですから」


 だが、その口ぶりからすると、どうやらそうとは思っていないらしい。


『そうじゃなかったら?』


「人ですよ。種族は分かりませんが、どっちにしろ、面倒事になりそうだなぁ……」


 心底嫌そうな表情を隠さないウォルナット君。

 俺は彼のそんな態度に、このままウォルナットだけを護衛として向かうのは危険かもと考えた。

 もしも本当に人であった場合、何が起こるか少し読めない。知恵が働くというのは悪知恵が働くという事でもある。


『そういうことなら――』


 さらなる護衛が必要だ。

 だから呼ぶ。

 俺はウォーキングウィードの依り代が持つ大部分の魔力を用いて、広域に念話を発信した。



『ゴー君たち!!! 俺んとこに集合ッ!!!』



「ッ――!!?」


 隣にいたウォルナットが、まるで大声に驚いたように飛び上がる。

 それからこちらを向いて文句を言ってきた。


「ちょ、精霊様! 大声出すなら最初に言ってくださいよ!」


『いや、念話だから耳塞いでも意味ないだろ?』


「心構えが違うんすよ心構えが!」


 そうは言うが、俺を握り締めるセフィは平気そうだぞ。

 まあともかくも、これで近場にいるゴー君たちのどれかはこっちに来るだろう。

 と、考えている間にさっそく来たようだ。まったくゴー君たちは優秀だぜ。


「おお、守護者様たちが……これなら安心ですね」


 現れたのは3メートルほども体高のある人型のウッドゴーレム。

 もはや人の形をやめてしまった、茨の塊であるプラントゴーレム(今は丸太のように太い大蛇状になって移動している)。

 蔦が絡まり人型を成した成人エルフと同程度の大きさのプラントゴーレムの3体だ。


 彼らは俺が最初に作ったゴーレムたちであり、それぞれ作った順番にゴー君1号2号3号である。

 俺が進化した一月後くらいに彼らも進化した結果、今の姿になった。いや、3号は見た目的にはほとんど変わっていないのだが。強いて言えばよりスマートになっただろうか。

 ちなみに、今ではエルフたちから「守護者」と呼ばれるようになっており、称号まで得ていた。


「あっ」


『どうした?』


 セフィが何かに気づいたように声をあげる。

 聞き返せば、とんでもない事を言い出した。


「くまさんがいる」


「げっ! じゃあ危ないし帰りましょうよ!」


 顔をひきつらせたウォルナットが流れるように撤退を進言した。

 だが、それも無理はない。セフィの言う「くまさん」とは「タイラントベアー」という、この辺りでは最強の魔物だ。

 そこそこ知能が高いからセフィを襲うような事はないはずだが、奴が本気で戦いを始めれば、その余波だけで周辺にも被害をもたらす。流れ弾的なものが被弾すれば、当然危険だ。


『こっちに来るのか?』


「ううん。いっぱいいるひとたちのところ」


『なぬ? ひとなのか?』


 近づいたからはっきり分かったのか、それともここまで言わなかっただけか、セフィは近づいて来るという存在を「ひと」と言った。


「たすけなきゃ」


『助けた方が良いのか?』


「うん!」


 これもまた、迷いのない様子で頷く。

 だから俺も、そうする事に決めた。


『よし、わかった。じゃあ最初にゴー君たちを向かわせるから、セフィたちは後からついて来い』


「わかった! きをつけてね!」


『おう!』


 さすがにセフィに先頭を走らせるわけにはいかん。

 俺はセフィの手からゴー君1号の頭の上に移動して鎮座すると、セフィにくまさんの場所を教えてもらい、その方向にわさりっと枝を向ける。


『ゴー君たち、あっちに移動だ!』


 3体のゴー君たちは素早く森の中を走り始めた。


 あ。

 ちなみに。

 この1年で俺は、エルフたちの言葉を習得することに成功した。

 ほら、セフィたち念話で喋ってなかったでしょ?




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― 新着の感想 ―
[良い点] ゆるふわな世界ではなかったのですね
[良い点] 試しに開いてみて一気読みしました。 面白かったです。
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