第十三話 ジェラ……っ!
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その後もゴー君は何体かのゴブリン、角ウサギ、やたら好戦的な猪(長老曰くクレイジーボアという名前らしい)などを次々と打ち倒していった。
クレイジーボアだけは少々苦戦したが、勢い良く突進してきたところにゴー君が振り下ろしたエルダートレント製の木剣がカウンターのように脳天へ入り、ゴブリンより遥かに頑丈な頭蓋を砕いた事が致命傷となったようだ。
とはいえ、ゴー君もクレイジーボアの突進を何度も受けて弾き飛ばされていた。ダメージがないはずなかろうと確認してみれば、腹部へ収納していた俺の地下茎の内2つが『エナジードレイン』で吸収されていた。
回復薬代わりに使用したのだろう。
そんな激戦を制したゴー君は、自らの有能さをしっかりと俺たちに見せつけた。
どうやら大気中の魔力や魔素の濃淡で大まかな地形や構造物の形などを把握しているらしく、森の中での行動も支障ない感じであった。
これならば、色々と仕事を任せることもできそうだ。
戦闘力もそこそこ高いし、確かに有能であることは、俺も認めよう。
『はー、ゴーくんはすごいなー! セフィのつぎくらいにつよいかもしんない』
『セフィ、ゴー君ってば、俺が作ったゴーレムだからね? それってつまり、俺が凄いってことだからね?』
セフィがあんまりにもゴー君を持ち上げるので、制作者である俺の功績をそっと主張してみる。
だが、
『ちがうでしょ!』
『え!?』
『すごいのはユグじゃなくてゴーくんでしょ! ゴーくんのてがらをよこどりしちゃ、メッ!』
『……はい』
凄い勢いで怒られてしまった。
いやまあ、うん……。
ともかく、何体か魔物を倒したところでゴー君の性能試験はセフィと長老の二人にとって大満足に終了した。
その帰還の途中、ついでとばかりに遭遇したゴブリンを初戦よりも明らかに滑らかになった動きで、ゴー君が屠る。レベルアップでもしたのだろうか。
そしてまた、それを見たセフィが褒めるのだ。
『うーん、ゴーくんはもしかして、てんさい?』
『…………』
その後、俺たちは無事に里へ帰りついた。
そのまま広場へ戻る。
『きょうはなかなか、ゆーいぎなひだった。ゴーくんのかっこいいとこもみれたし』
『ほっほっほっ、そうですのぅ』
『………………』
そろそろ時刻は夕刻に差し掛かろうとしていた。
家に帰れば、メープルが夕飯の準備をして待っているはずである。
彼女を長時間待たせるのも可哀想だ。さっさと帰ろう。そうしよう。
しかし、セフィは名残惜しそうな表情でゴー君を見上げ、それから『あっ!』と何かを思いついたような顔をした。
『そうだ! ゴーくんもセフィのおうちくる?』
『……………………(ジェラ……っ!)』
俺の中で何かが燃え上がった。
『セフィ、残念だがゴー君は外にいた方が良い』
『そうなの?』
『ああ、今日はゴー君も頑張ってだいぶ疲れただろうからな。日没まで陽に当ててやった方が良いだろうし、ゴー君が入れる鉢植えもウチにはないだろ?』
『ああー、そっかー……そうかも』
『だろ? 今日のところは、ゴー君もゆっくり休ませてやろうぜ?』
『うん、わかった。じゃあ、ゴーくん、またあしたね!』
そう言ってセフィはゴー君に手を振り、踵を返す。
いつもなら俺もセフィと一緒に帰宅するところだが。
『そうだ、セフィ、今日は先に帰っててくれ。俺はちょっとだけ、このあと用事がある』
『ようじ? なにするの?』
『いや、なに、ゴー君のメンテナンス……まあつまり、保守点検とかな。セフィが里を囲む茨にやってるのと同じことだよ』
『あー、それはだいじなー。うん、わかった。はやくかえってきてね』
『おう!』
家へ帰っていくセフィを枝をわさわさと振って見送り、その姿が見えなくなったところで俺は呟いた。
『さて、と』
『精霊様、何をするつもりですかな?』
『長老、いたの?』
『そりゃいましたわい』
『まあ、いいや。何でもないから、長老も気にせず帰ってくれ』
『はあ……』
俺はゴー君の体をわさわさと登り、その肩に掴まると指示を出す。
『ゴー君、里の門まで行くんだ』
するとゴー君は迷う様子もなく動き出す。
どうやらすでに門の場所を記憶したようだ。まったく君は優秀な奴だよ。
しかし、だ。
主より優れた配下など、いてもらっちゃあ困るんだよ……?
悪く思うな。
内心でそう呟きつつ、俺はまだ門のところにいた青年エルフたちにゴー君を預けると、ゴー君には「とある命令」を下した。
それから一人(一株?)で帰ったのである。
そして翌日。
いつものように昼寝を終えて広場へやって来ると、セフィは首を傾げた。
『あれ? ゴーくんは?』
そこにはゴー君の姿がなかったのである。
『ああ、ゴー君なら里のすぐ外を、茨の壁沿いに巡回してるよ。里の自警団(青年エルフたちが所属する集団)の一員として、みんなの役に立ちたいっていう、ゴー君の願いでね』
『そーなの? ゴーくんしゃべらないのに?』
『喋らなくても俺にはわかるさ。なんせゴー君は俺の子供みたいなもんだからな』
『へー、そーなのかー……きょうもあそぼうとおもったのになー……』
『大丈夫だ。なにもいなくなったわけじゃないからな。いつでも会えるし。それより、ここ最近は子供たちと遊んでなかっただろ? 久しぶりに一緒に遊んで来たらどうだ? ほら、子供たちもセフィと遊びたそうにこっちを見てるぞ?』
そう言って枝で指し示した方向では、里の子供たちが遠巻きにセフィの様子を窺っていた。彼らもセフィと遊べなくて寂しそうにしているのだ。
それを見たセフィは、
『うん! セフィ、みんなといっしょにあそんでくる!』
『おう! 気をつけてなー!』
ゴー君のことも忘れて、嬉しそうに子供たちの方へ駆けて行った。
俺は枝をわさわさと振って見送りながら、内心で笑みを浮かべた。
――計 画 通 り !




