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人の事情と霊の事情  作者: ゆきまる
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人食いオルガン3

 その後、会議が終わった郷田先輩とカタリーナさんと合流し、またも駅前の喫茶店に集まった僕達。集めた情報のすり合わせを行うことにした。


「そうか。4,5年前にも同じような事件があったのか」

「知りませんでしたわ」

「お2方も知りませんでしたか」


 となると、疑問が1つ浮かび上がる。

 郷田先輩辺りはダーム学園の過去も新聞などの情報から調べていそうなものだが、その郷田先輩が知らないと言う。それすなわち、事件になっていないということだ。今回の件もそうだ。ニュースになってもおかしくないこの情報が、未だ僕達にまわってきてないというのは不思議な話である。


「今回の件、先生方は生徒になんと言っているんですか?」

「なにも言っていないです」

「なにもですか?」

「はい。そもそも、長期休暇の今、失踪した方なので、学生のほとんどが知らないというのが現状です。大半の生徒は家に帰省していますので」

「ですが、自分の娘が帰ってこないとなると、心配する親御さんもいるのでは?」

「失踪中の方々は、全員ずっと寮にいる生徒です。親御さんがいなかったり、折り合いが悪く帰れない方々でした」


 なるほど。学園内でその情報を閉じ込めておくにはうってつけのシチュエーションだ。だが、長期休暇が終われば、情報は拡散するだろう。防ぎようがないだろう。

 そんなことはダーム学園の先生方も承知しているはずなのだが。

 それとも、この休み中に事件が解決する目処めどがあるというのだろうか。


「郷田先輩はどうでしたか?実りのある会議でしたか?」

「姉妹校になるという点だけで見れば実りのある話があったといえるが、今回の、行方不明に関する件については実りはなかった」

「そうでしたか」

「風野坂さん、あのオルガンは本当に呪われているんですか?」

「はい。残念ながら」

「あんないかつい呪い、翠は久々に見たっす」


 翠はオルガンを見た時を思い出してか、身震いをしてしまっている。


「ですが、あれは毎回ミサや学校集会の時に使っています。私達全員が呪われているんでしょうか?」

「それに関しては安心してください。どうやら何かしらのスイッチ、引き金があって初めて起動するタイプの呪物です。なので、あのオルガンを聞いている生徒、先生方が全員呪われるということはありません」


 とはいえ問題は山積みだ。

 今から呪物をなんとかしようとするのは簡単だ。あのオルガンを破壊すればいい。もちろん正規の手順を踏んでだが。しかし、解呪とは違い破壊となると、行方不明の生徒の手がかりを失うことになりかねない。

 それは避けたい。

 となると解呪になってしまうが、こう強力な呪いを払うには準備も時間もかかり過ぎる。その間、カタリーナさんが無事だという確証がない。


「やっぱり、犯人を捜すのが一番手っ取り早いですね」

「そうなるっすね」

「なにか手がかりはあるのか?」

「それがさっぱり。この夏休みに行方不明者が出たということは、その期間中に学園にいる生徒、もしくは職員が容疑者ということになりますが」

「呪いとかそういうオカルトには詳しくないが、帰省した生徒が事前に呪ったということはないのか?」

「100%ないとは言えませんが、その可能性は低いでしょうね。あのレベルの呪物を遠隔で、または事前に呪ってこの期間に失踪者が出るようにするなんてまね、よほどの技術がないと無理です。それに、夏休みに集中して被害者達を失踪させる理由がありません」

「事前に呪っておいて、自分のアリバイを作るという理由はどうだ?」

「扱っているのは超常のそれですよ。他にも簡単にアリバイ作りはできるはずです」

「ということは、突発的犯行っすね。夏休みの少し前か入ってから、呪いを操れるようになった、もしくは呪いの手順を見つけてしまったってところじゃないっすか?

「いい線いっていると思いますよ」


 郷田先輩は溜息1つ吐き、椅子に全体重を預ける。


「お前ら、いつもこんな厄介な案件に首を突っ込んでいるのか?素直に尊敬するぞ」

「なんのなんの。風紀委員も日夜忙しく働きまくっているじゃないですか」

「そうだな。日夜ブラックリストに入っている馬鹿を追い回すのに忙しいな」


 なんだろうか。翠と郷田先輩の視線が痛い。

 カタリーナさんは訳も分からずといった様子だが、2人からの謎の圧で、僕の体は思わず委縮してしまう。


「話を戻すぞ。容疑者はこの時期にダーム学園で生活を送っている者。あるいは出入りしている者」

「そうです。呪いの手順についてわかればもっと人数を絞り込めそうなものですが」


 ここで僕は容疑者の共通点を思い出す。


「そういえば、反省室では何が行われているんですか?」

「反省室ではまず、先生方との注意と対話が30分程行われます。その後は主な校則の復唱、祈りの言葉、祈りの歌を歌って終わりました」

「祈りの歌!?」

「は、はい」

「歌っていうのはアカペラっすか?それとも・・・」

「伴奏があり・・・もしかしてあのオルガンも?」


 どうやら反省室にもオルガンがあるらしい。


ついで1つの呪物かもしれません。明日確認したいんですが、ダーム学園に行ける口実はありますか?」

「俺が無理矢理でも口実は作ろう。明日の12時にこの喫茶店に集合でいいか?」

「ありがとうございます。では明日の12時に」


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