後日談
―脾片目村の土砂災害から1日が経った今日、私達は現場に来ています。現地は酷い状況で、復興の目処が全くないような状況です。しかし、政府は事前にこの土地が土砂災害に弱いことを把握しており、災害の前に村人を避難させていたので、被災者は被害に比べて極めて少なかったようですー
そんなニュースを部屋のテレビで見ながら、僕はふてくされている。別に、今回の件の結末が気に食わない、納得できないという訳ではない。クリスさんからの連絡がないのが不満なのだ。いや、不満ではなく不安なのかもしれない。
今回の件、僕が解決したとは言い難いが、解決したといえばした。となると、僕への報酬、クリスさんに‘1つ聞きたいことを聞ける’という報酬はどうなるのだろう?
いや実際、今回の件で聞きたいことは増えたので1つと言わず2つ3つ答えて欲しいものだが、それでも最初に聞きたかったやつだけは答えて欲しいものである、でないと、今後の方針を立てづらい。
聖杯について詳しく聞いた後行動に移そうと思っていたのだが、計画が頓挫してしまった今、僕は部屋でテレビを見ることしかできない。他にやることがない。
そんな感じでふてくされていると、僕の携帯が鳴り響いた。
「もしもし!クリスさんですか?」
僕は相手が誰かも確認しないまま勢いよく電話に出るが、
「すまんなクリスじゃなくて。俺だ。厳丈だ」
どうやら僕の早とちりだったようで、思わず肩をすくめてしまう。
「どうしたんですか?」
「お前が知りたいと思うことを俺が話そうと思ってな」
「どういう心境の変化ですか?僕に知られたくないような感じだったのに」
「いやなに、このままだとお前は中途半端な情報を掴んで、無茶な行動をすると予想してな。それなら、ここで俺が情報だけでも渡せば、無茶はしないと思って」
「・・・遠慮します」
「なんでだ?」
僕自身も意外だった。あんなに欲しがっていたはずの情報を、自ら手放すようなことを言うなんて。でも、
「厳丈先生は話したくないんですよね?」
「そりゃあまぁ」
「そんな人から無理やり聞き出すことはしませんよ」
それに、
「信用してますから」
そうだ。
僕は厳丈先生を信用することに決めたのだ。
「だから、待ちます」
「・・・」
「待っています」
今回の件でわかった。
この人はどうしようもなく大人で、保護者で、僕のことを大事に思ってくれていることを。そして、僕はどうしようもなく子供で、守られるべき対象で、まだまだ無力だということを。
「わかった。この件は俺が話せると思ったタイミングでお前に伝える。だけどな、無茶だけはするなよ」
「はい。わかりました」
「最後に1つだけ」
「なんでしょう?」
「コクレアに注意しろ」
「コクレア?それはいったい?」
「今は頭の端にとどめておくだけでいい」
そう言って電話は切れた。
まだまだ僕の知らないことは多そうだ。




