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人の事情と霊の事情  作者: ゆきまる
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即身仏2

「そこまでです!」


 そう言いながら、僕は箱を思いっきり飛び蹴りするが、箱は壊れないどころかうんともすんとも動かない。おかげでかっこよく静さんを助けるという恰好が取れなくなった。何故なら僕の足に飛び蹴りの衝撃が全てきて。痛みでのたうち回っているからである。


「どうやってここが?」

「失礼ながら、勝手に比見さんの蔵に侵入してお母さまの遺書を拝見させていただきました。内容に動揺してしまったのはわかりますが、遺書をそのまま置いておくなんて不用心でしたね。おかげで探す手間は省けましたが」


 静さんと別れた後、僕も静さんの家へ向かったのだ。静さんにばれないように。そして上手いこと蔵に侵入した僕は、冴子さんの書いたとおぼしき遺書を見つけ拝見した次第である。


「やめてください。村を救うにはこれしか方法が」

「本当にそうですか?」

「何を言っているんですか?遺書にそう書かれていたんですから」

「この遺書、本物ですか?」

「え?」


 最初に疑問に思ったのが、静さんが信じる原因になった‘予言内容’だ

 冴子さんの死んだ時期はともかく、今年の祭りで鎌が盗まれることから、僕達が来ることまで事細かに遺書には書かれているが、それほどの能力は冴子さんにないはずなのだ。そこまで強い未来視ではないと、クリスさんに聞いている。正確無比だとしても、それならそれで鎌の保管場所を盗まれる前に変えることを指示してもおかしくないはず。正確無比すぎて盗まれる未来が確定しているにしても、そこまでの予知能力を持っている、力の波動を出している人材を、霊障対策課が放っておくはずがない。見つかった時点で捕まるのがオチである。

 このことから、冴子さんに備わっていた予知の能力は、弱いというクリスさんの意見が一番しっくりくる。予知の力が曖昧なのに、ここまでのことが書かれている遺書が見つかった理由は、簡単に言えば偽造というほかない。

 静さんが蔵を整理するタイミングで上手いこと遺書を置ける人間が、さも今までのことを冴子さんが死ぬ前から予見していたように書いていたのだ。


「でも、筆跡が」

「筆跡なんて真似ようと思えばいくらでも似せられます。昔から付き合いのある方なら簡単でしょう。そうですね?」


 僕はそう言って洞窟の入り口のほうにいる人物へ話しかける。


「その通りだ」

「檜山さん!?」

「やはりあなたでしたか」


 檜山さんは静かに僕達のいる社に近づいてきた。


「なんで・・・どうして・・・こんな酷いことを?」

「私は守ると決めたのだ。だから」

「なら、私が即身仏になれば村が救えるというのも・・・嘘?」

「それは本当ですよ」

「ど、どうゆうこと?」


 静さんは現状を飲み込めず、僕と檜山さんを交互に見る。


「檜山さんあなたは守りたかったんですね。‘静さん’を。村よりも‘静さん’とったのですね」

「・・・そうだ」


 何故檜山さんがこんな手の込んだことをやったのかというと、静さんを守りたかったからに他ならない。

 即身仏を遺書を通して勧めた檜山さんが、1番静さんを即身仏なんかにしたくなかったのだ。村長である檜山さんなら、祭具が消えた際に起こる土砂災害の被害が少ない所に覚えがあるはずだ。たぶん、この洞窟はその1つなのだろう。だから静さんをここで呼び出し、保護しようと考えたのだ。


「あの箱、重くて決して動きそうもないですが、どういう仕組みなのですか?」

「そう難しいものではない。呪力を扱えるものなら誰でも作れる簡単な代物だ」

「箱の下に酸素ボンベなどは?」

「5日分ある」

「箱の蓋もさぞかし重いでしょう。どうやって脱出させる気だったんですか?」

「24時間後に周りの土を吹き飛ばしながら開く仕組みだ」

「それは便利ですね」

「2人共いったい、何の話をしているの?」


 要するにこうだ。

 檜山さんはこの土砂災害の被害が少なそうな社に静さんをおびき出し、あの頑丈な箱に入ってもらい、閉じ込める。そして、その箱から出さないようにして、災害から静さんを守ることが目的だったのだ。被害が少ないからといってもここは洞窟の中。万が一を考えて生き埋めにされた時のことも考えている。用意周到なことだ。


「ですが1つ疑問があります。あなたは祭具である鎌を盗んだ犯人と仲間だと聞きました。このままでは彼らは災害の被害にあってしまうでしょう。それを良しとするのですか?それとも、もう1つの祭具も手に入れる算段があって、祭具を手に入れた後にここからすぐに去る計画でしょうか」

「前者だ。私達は今の時代にいていい人間ではない。誰かが、終わらせねばならんのだ」

「村人も巻き込んでですか?」

「あいつらはクズだ。生かしておく価値はない!」


 檜山さんの怒りの感情は洞窟を埋め尽くすほどの感じがした。


「僕には気のいい人達に見えましたが、過去村八分にされた経験からくる復讐でしょうか?」

「そんなちっぽけなものではない。あいつらは、祭具がなくなった時に、静さんを即身仏にするのに、なんの躊躇ためらいもない連中だ。静さんがそのためだけにいるとしか思っていないクズ共だ」

「どういうことでしょうか?」

「この村の連中は祭具の役割を知っている。そのうえで、この土地に住んでいる。祭具がなくなっても、巫女という人柱がいればいいと思っているんだ。そんなの、許されるわけがないのに」

「それはそれは、厚顔無恥こうがんむちとはこのことですね」

「それで、この真実を知って、君はどうするのかな?風野坂桜君」

「いえ、このままだとあなたの計画が頓挫とんざしそうだったので、あなたの加勢に来ました」

「何?」


 実は静さんの蔵に入る際、先客がこそこそと蔵から出ていくのが見えたのだ。その正体は、


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