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人の事情と霊の事情  作者: ゆきまる
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真実2

 クリスさんはその後、今回の件で動きがあったとかで自分達の本拠地に戻った。本拠地というのは隣村にある教会と言っていたが、どこまで信用できたものか。

 今回教えてもらった情報に関してもそうだが、嘘をつく理由も見当たらない。

 僕は檜山さん居場所を探るべく、いろいろな人に聞き込み調査を行うが、今の所有力な情報は得られない。一昨日は見たという情報が関の山だ。

 にしても、ここの村人は警戒せずになんでも話してくれる。そういう土地柄なのかもしれないが・・・滅んでほしくないものである。そんなことを考えながら歩いていると、ばったり静さんに出会った。


「これはこれは比見さん。こんなところで会うとは偶然ですね」

「・・・そうですね」


 静さんは明らかに落ち込んでいた。察するに、冴子さんからのメッセージ、‘即身仏’になって欲しいという尋常じゃないお願いを知ってしまったばかりなのだろう。


「比見さん、少し、お話をしませんか?」

「すいません、そんな気分ではなくて」

「生憎とそんな顔の女性をそのままにしておけるほど器用ではありませんので」

「・・・失礼します」


 僕とは目を合わせず、そのまま立ち去ろうとする静さんだったが、僕の言葉でその歩みを止める。


「即身仏になる必要はありませんよ」

「・・・風野坂さんは何でも知っているんですね」

「何でも知っているわけではありませんよ」


 知らないことのほうが多すぎる。

 檜山さんが今どこで何をしているのか。

 静さんが今何を思っているのか。

 先生は、厳丈先生は何を考えているのか。

 全く・・・わからない。知らない。


「即身仏になるのは、母の最期の望みで、この村を守る最後の手段です。私はあなたに止められてもやる気ですよ。それが私の運命です」

「運命なんてくだらない。他にも方法があるはずです。最後まで諦めないでください」

「36時間です」

「はい?」


 静さんはその場にしゃがみ込み、上を見上げて涙を流さないようにしながら言う。


「この村に災厄が降りかかるまでのタイムリミットです。それまでにあなたにこの問題が解決できるんですか?」

「・・・」

「答えてください!」


 真っすぐに僕に顔を向け、先ほどまで隠していた涙を見せる静さんの言葉に、僕は石になったように動けず、声も出せずにその場で馬鹿みたいに固まっていた。

 降り注ぐ夕日がこれでもかと目の前の少女の姿を濃く映している。

 その姿を正面切って見ることができなかった弱い僕。それを見て、自分の運命を、終わりを察した静さんは立ち上がり、僕の横を通り過ぎていく。


「1つ、よろしいでしょうか?」

「・・・なんでしょう」

「何故あなたはそんなに素直に自分が即身仏になることを受け入れることができたんですか?信じないという選択肢もあったはずですが」

「母の遺書が蔵から見つかりました。そこには今までの全てが書かれていたんです」

「全て?」

「母が死ぬ時期、この年の祭で鎌が盗まれることから、桜さん達が来ることまで全部、全部全部書いてあったんです。そこまで書いてあって信じないなんてことのほうが無理です」


 そう言い終わると、静さんは自宅の方に走って行ってしまった。

 僕は静さんの涙で濡れた地面を見ながら考える。


「何か・・・見落としている?」


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