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人の事情と霊の事情  作者: ゆきまる
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仮面

 人は常に仮面をつけている。なんて文言はどこにでもあるありふれたフレーズだが、なかなかどうしてこれは馬鹿にできない言葉だろう。これを認識しているとしてないのじゃ雲泥の差がある。

 他人との会話、行動、その全てに偽りの仮面があると考えてもいい、なんて言ったら、後輩に「人間不信っす」なんて言われてしまうが、それでも疑うに越したことは無い。いや、疑うに越したことないというのは言い方が違った。

 気にしなくていいのだ。

 仮面を被っての会話、行動は自分を守るためであり、相手を守るためでもあり、決して全てが悪というわけではないのだから。勿論悪として仮面を被る者もいるが、今回それは置いておこう。

 仮に仮面を被らずに相手と接すると、心が腐ってしまうだろう。これは厳丈先生の言葉であり、僕の言葉ではないが、大いに賛同するものである。歯に衣着せぬ言い回しは人を傷つけ、傷は腐り始める。オブラートに包むということが、仮面をつけるということが必要なのだ。それが社会を潤滑に回すのに必要なもので、遺伝子に刻まれているものだと言っても過言ではない

 ただ、仮面を使いこなすのは非常に難しい。仮面をつけたまま、仮面の下の本来の顔を忘れてしまう人もいる。今回はそんな人達の話だ。




 今回の依頼は郷連寺ごうれんじの住職である純雄じゅんゆうさん経由のもので、わざわざこちらから出向かはなければいけないのが面倒くさいところだが、うだうだ言っていても仕方がない。これも自分の呪いを解くためだ。

しかし、今のリモートが主流のこの時代、依頼の件もリモートでもいいのではないかと、僕はここに苦言をていす。直接会わないとわからないこともあるという意見もあるだろうが、それよりも大事なことはあるのではないかとも思う。

 それは時間だ。

 時は金なりとは言うが、時を金で買えた試しがない僕からすると、どうしても時間の方が重要ではないかという考えに行きついてしまう。

 そんな時間を、移動時間を短縮できる現代技術を活用しないのは、一種の怠慢ではなかろうか。不研部長として、僕はここに時間短縮宣言を行いたいと思う。機材集めなどの諸経費は結構かかるだろうが、コックリさんの件で、校長から結構な額の謝礼金が不研に入ったので、そこら辺は心配する必要はない。

 思い立ったが吉日、ぐだぐだとここで考えている時間も無駄というもの。この件が終わり次第、我が不研にもITというものを取り入れるべく動くべきだろう。


「と言ってた人がこの始末っす」

「掌返しにおいては他の追随を許さんな、お前は」


 今の状況を説明しよう。

 依頼人は湖上こじょう あかねさん。現在中学3年生で、この場所に似合わないゆるふわ系可愛い女子である。こんな僕に対してもフレンドリーに握手を求める気さくな方で、僕はそれだけで恋に落ちてしまいそうだった。今時中学生でもこんなスキンシップで恋に落ちたりはしないだろうが、僕の場合は特別だ。第1話から異性に酷い扱いを受けていた僕は特別だ。

 こんなことがあるから、対面での依頼はやめられない。何がリモートだ、馬鹿らしい。人と人とは触れ合ってこそなんぼでしょうが!


「で、この素敵紳士であるこの僕への依頼とは?きっちり解決してみせますよ」

「わーい、ありがとうございますー」


 厳丈先生、翠、純雄さん共々盛大な溜息をつくが、そんなこと知ったことではない。今は目の前にいる茜さんの好感度を上げるのが先なのだから。


「仮面を探して欲しんですー」

「仮面?」

「はい、おばあちゃんの家の仮面ですー」


 茜さんの話を整理すると、先月茜さんの祖母の家にある蔵にぞくが入り込み、仮面を4枚盗んでいったらしい。仮面として、歴史的なものとしての価値はそう高くはないが、祖母の大切にしていた仮面なので取り返して欲しいとのこと。

 もちろん、これは警察の領分なのだが、それを超えて茜さんが僕達に依頼してきたのは理由があるらしい。


「いわくつきなんですー、その仮面」

「いわくつきとは?」

「1度着けたら取れなくなるとかー、人に憑依ひょういしちゃうとかでー」

「なるほど。それでこちらにお鉢が回って来たということですか」


 茜さんは笑いながら頷いた。

 今回の件についていろいろと聞いてみたが、茜さんや祖母にも犯人の心当たりはなく、警察の捜査も難航しているらしい。後日現場に行かせてもらう手筈にはなっているが、犯人が人間のみの場合は、何の証拠も得ることができないだろう。

 というわけで、この件は一旦持ち帰らせてもらうことにして、僕と翠と厳丈先生は寺を後にした。


「あのしゃべり方、生理的に無理っす」

「まぁまぁ、いい子だったじゃないですか」


 翠は茜さんと合わなかったらしく、とてもご機嫌斜めだ。僕とはまるで正反対。


「で、この件はどうするんだ?」

「もちろん受けますよ。僕は可愛い女子の味方ですから」


 翠からキックを喰らうも、僕は毅然きぜんとした態度でやり過ごす。


「どうやって探すんだ。当てはないだろうに」

「そこは地道な調査ですかね。仮面が茜さんの言う通りいわくつきなら、その人間に何かしらの変化があるはずですから」

「調べるにしても。だいぶ範囲広いっすよ」

「そこも心配なく。これが僕に来た依頼だということは、風乃坂高校を中心に起きる問題の可能性が高いですからね」

「それも100%じゃないだろ」

「ですから、厳丈先生には他の学校と最近起きた事件を調べて頂きたい。風乃坂高校は僕と翠で調べますから」

「・・・わかった」


 面倒くさそうに返事をする先生だったが、やる時はやる人だ。ここは気長に待つとしよう。


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