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人の事情と霊の事情  作者: ゆきまる
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霊の証明2

 ここ風野坂高校にある風紀委員は校舎の3階にある風紀委員室というところで業務を行っている。業務といっても風紀委員の業務のほとんどは校舎をまわっての取り締まりで、3階の風紀委員室にはほとんど人がいない。そんな風紀委員室よりも人の入りが少なく、ほとんどの生徒が知らない部屋が存在する。旧校舎2階にあるその部屋は、ある種の人達の間でこう呼ばれている。


‘尋問室’


 とても高校に存在する施設の名前とは思えないが、本当に存在しているのだから恐ろしい。そんな部屋を知る、または入ることになる人種とは、風紀委員のブラックリストに載っている、いわゆる学校の危険人物達だ。

 遺憾ながら僕もそのリストに名を連ねているのだが、これまでその部屋に入ったことがなかった。今まで華麗なテクで逃げてきたのだ。逃げたところでまた後日捕まるのでは意味がないのではと思う方もいるかもしれないが、風紀委員の特別ルールにより僕は拷問室行きを免れているのだ

 風紀委員長である郷田先輩が掲げる特別ルール。それは時効制度だ。時効期限は1週間で、罪を犯してから1週間以内に捕まえなければ注意だけで済ます。あの羅刹らせつのような先輩らしからぬルールではあるが、風紀委員達はこれを頑なに守っているのだ。

 そんな尋問室は恐ろしい作りになっている。6畳程の部屋の中心にあるのは机と椅子が1つだけあり、他は何1つ存在していない。電気もなく、日光の光が少しだけ入るその部屋は、まさに尋問室と言って過言ではない。ここで尋問されるとなると、ただの高校生に反抗は不可能だ。

 そんな部屋の様子をつらつらと語る僕。語れるということは勿論、僕はこの部屋を見たということだ。いや、見たじゃなくて見ているといったほうが正しい。


「不覚でした」


 まさかまさかの尋問室なう。僕は縄で手足を縛られて尋問室の床に転がっている。僕の華麗な逃亡劇も、ここで終了と相成ったわけである。


「お前を捕まえるのに1年半かかった。なかなか感慨深いものだ」


 僕の目の前にいるのはこの尋問室を作った張本人である郷田先輩。風紀委員の長であり、この学校の裏番長。多くの生徒が畏怖の感情を持たれるその人である。

 そしてもう1人縄で縛られ床に転がされている人物がいる。


「風野坂君も捕まっちゃったか♪」

「はい、捕まっちゃいました」


 臓器販売に関わり‘上’の方々に連行された篠原先輩だ。

 篠原先輩も僕と同じくブラックリストに載りながらも尋問室に入ったことのない強者だったのだが、連れていかれたブランクがあったからか、彼女も僕と同じく捕まったのだ。


「2人共、ここが何故尋問室と呼ばれているかわかるか?」

「文字通り罪を問いただす場では?」


 僕の答えに対して郷田先輩は首を横に振る。


「拷問室だと聞こえが悪いだろ」

「「誰か助けてーーー!!!」」

「安心して叫べ。ここは完全防音だ」


 僕達の叫びはこの部屋に響き渡るだけで、決して外には漏れないらしい。恐怖に身を震わせながら僕達は芋虫のように這いながら出口に向かう。出口は勿論閉まっているのだが、奇跡を求めてそこに進む僕達を誰が攻められようか。

 いや、僕達は実際これから攻めらるのだが。


「まずは罪状を言おう」


 そう言って郷田先輩は懐から巻物のようなものを取り出し、罪状とやらを僕達に述べる。


「風野坂桜、貴様は3日前に我が校の女子更衣室のロッカーに潜み、女子の着替えを覗いていたな」

「意義あり!」

「なんだ?」

「迷子になった結果です」

「どんなに馬鹿でも自分の高校で迷子にはならん。よしんばなったとしても、女子更衣室のロッカーに入るなんてことはせんだろ」

「不可抗力です」


 郷田先輩は僕に蹴りを入れて黙らせる。拷問室の名に恥じぬ行いだ。


「篠原ひより、貴様はまた先生に色目を使ったな。しかもまた数学教師」

「私知的な人に目がないの♪特に数式に向かう横顔なんてもう・・・きゃーーー♪」

「貴様の性癖なんて聞いてない。お前のせいで我が校の数学教師陣は壊滅状態だ」


 相変わらず恐ろしい。

 我が校の数学を壊滅させるその手練手管てれんてくだ、数学が苦手な翠あたりが聞けば喜びそうなものだが、学校側としては悩まずにはいられない案件だろう。


「さて、‘今回’の罪状はこんな感じだ。異論は?」

「愛を探していたら女子更衣室に迷い込んだだけで、僕に一切の罪がないことを主張します」

「私も愛故にってやつよ♪」

「安心しろ。そこまで重い刑にはせん。自白すればな」


 郷田先輩のその温情を受け、僕と篠原先輩はお互いの顔を見合わせ頷く。


「「申し訳ありませんでした!!」」

「反省の気持ちを込めてこの場で懺悔ざんげをしろ」


 今日日きょうび懺悔なんて言葉が聞けるとは思わなかった。そして自分がそんなことをする羽目になるとは思わなかったが、ここは懺悔するほかあるまい。


「かぐやさんという愛があるにも関わらず、他の愛を探すという愚行を行ってしまい申し訳ありませんでした」

「手を繋ぐまでしかいかなくて申し訳ありませんでした♪」


 僕と篠原先輩は誠心誠意懺悔を行ったが、どうやら郷田先輩はお気に召さなかったようで、顔をピクピクと痙攣させながらその手にメリケンサックを装着している。

 僕と篠原先輩はまたも芋虫のように這いながら逃げる羽目になる。


「なんでお前らの反省は俺の予想の斜め上を行くんだろうな。ここまでくるとむしろ愉快になってきた」


 郷田先輩は僕を尻に敷き、篠原先輩を足蹴にしている。


「郷田先輩、この体罰をPTAに知られてはまずいのでは?」

「安心しろ。PTAには俺の息のかかった奴らが多い」

「・・・安心しました」


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