諍い
「命で支払ってもらうかラ」
イクリプスの返答にやおらと室内が殺気立つ。
「ハハ、冗談ですよね?」
オリヴィアの渇いた笑いが虚しく響く。
無論、彼女にもその答えは不要であった。
「フフフ。どうかしラ?」
オリヴィアとは対象的にイクリプスの艶めいた笑みが、剣呑な空気を包む。
場はすでに、
争いが起きるか否か、ではない。
いつ仕掛けるか、である。
そうなるのか、とオリヴィアが逡巡する。
目に写る、音に聞こえる物は全て戦の糧となる。
ここで狼狽え、困惑するには彼女は魔王を歩み過ぎた。
キン、と重苦しい一重の金属音。
天夜童子の刀とオリヴィアの剣が重なる。
その鬼の狂気を孕んだ悍ましい笑みは、先の無表情の者とは別人である。
「悪いねぁ、王さんや。きさんは悪鬼の匂いねや」
恐らく対話の意味はない、と巡らせる。
戦それ自体に意味を持たせる修羅の言だ。
鍔迫る魔剣に力を込める。
シェーンと白詰を見やる。
文字通りではなく、剣を置いている。
この二方に戦いの意思はない。
いや正しくは無くなった、であろうか。
オリヴィアは横目で流し見る。
「お前、この前やったばかりだろ。まったく」
白詰の狐耳が力なくへたり込む。
「まぁまぁ今回は天ちゃんが連れてきたんだし、それによっぽど特別なんじゃなイ?」
「だろうけどよ〜」
二人は酒盛りを再開していた。
呑気なものだ、と少し苛立つ。
不思議とこの状況に疑問は少ない。
それは冥獄の魔瘴がそうさせるのか。
「すいません。少し跡形もなくなるかもです。」
オリヴィアは返事も聞かず、魔力を爆ぜさせる。
彼女の口角も少し、ほんの少しだけ上を向いているのは、きっと自身にも気づかないだろう。
いや、気付かぬフリかもしれないが。




