いつか訪れるべき出会い
目を覚ます。目を覚ます?
私は確かに死んだはずだ。
魔力の消え入りも、オヴニルさんの手の温もりも確かに覚えている。
周りを見渡す。
「…荒野?」
思わず口に出る。
夜とも夕ともつかない、どんよりした空。
魔力は…ある。
刺々しいというか、毒の様というか。
そうだ!
思い立って指先を切ってみる。
「血…はでないか」
身体は魔族の様だ。
ここは死後の世界…かな?
周りを見渡す。
一面の荒れた大地。乾いた土に吹き荒ぶ砂嵐。
「…まるで死んだ大地」
「へへへ、女だぞ」
「あぁ久しぶりだな」
「なにやら高そうな服きてるが強いんじゃないのか」
「大丈夫だろ。どうせこんなところに落とされる様な女だ。ろくな事してねぇよ」
突然なんだ?
見るからに野党のような四人組。
「何なんですか!あなたたちは」
「何なんですか、だってよ。お上品な玉だぜ」
「なぁさっさと遊んで食っちまおうぜ」
ん?引っかかる。
私で遊ぶ、と言うのはわかる。
食べる、と言うのもわかる。と言うか同じ意味のはずだ。
だが、遊んで食べる、と言った。
少なくとも私は魔族か人間の認識のはずだ。
食人?そういう種族か?
元いた世界では確認できなかった。
やはり違う世界なのか?
まぁいい。
聖魔女王オリヴィア・グラスバインの力は失っていない。
しかし!
新手か!?
「とう。」
上空より何かが落下してきて、そして黒い靄の様な物で野党共を抑え込んでいる。
「捕まえた。」
目が合う。
黒髪に赤目。魔族か?
しかし額から二本の紅い角。
見慣れぬ装いの黒い鎧。
見た事も無い種族。
「…天夜童子。」
なんだ?
「…名前。天夜童子。」
名乗りだったのか。
完全に空気に飲まれていた。
「オリヴィア・グラスバインです」
「オリヴィア。そう。」
一人頷いている。
敵意は無さそう。
だが、魔力量がおかしい。
さっきの野党共とは比べ物にならない。
シュナいやグレイスと同量もしくはそれ以上。
更には秘められた憎悪にも似た殺意。
今はまだ鞘に収められた状態だが、抜き身となればどれほどの力になるか想像もできない。
「オリヴィア。」
「は、はい」
油断はできない。
「行こう。」
「え?」
ちょっと待って。何処に?
―――――
孤高の魔女
「で、連れてきたってワケ」
イクリプスは軽いため息を吐く。
「うん。」
「すいません。でも私も目が覚めたらこの世界で、野党が現れたと思ったらいきなり行こうって言われて」
「あぁ、ゴメンなさい。アナタはいいの。そっちの鬼の子。鬼ってわかる?」
オリヴィアの、
「いえ」
と言う返事を聞かずにグラスを出すイクリプス。
「おい。ワタシも」
白詰は面倒くさそうに呟く。
オリヴィアは白詰の獣耳九尾を見やり、「あぁ言う人もいるんだな」位にながす。
「ワタシはシェーン。シェーン・イクリプスよ。アナタの名前は?」
「申し遅れました。オリヴィアです。オリヴィア・グラスバイン。一応、魔王をしてました」
言ってから、変な肩書きだな、と思い耽る。
「まさかアナタがあのオリヴィアだとはね。天夜ちゃん、アナタ大物拾ってきたわネ。それとも分かってて連れてきたノ?」
天夜童子はグラスを煽るのみである。
「私の事、知ってるんですか!?」
思わぬ返答に高揚するが、
「知ってると言っても期待しないでネ。私が元いた世界の古い話に出てくるだけ。生きてるアナタとは会った事も無いノ」
「古い話って。私はさっき死んだんですよ?」
「ここは時間の流れが少しだけ変わってるからネ」
「少しだけって次元なんですかね?」
「おいおい分かるわ。ここでの暮らしも長くなると思うしネ」
「そうだ。この世界は一体何なんですか?」
「ここは『冥界』。アナタが元いた世界がまぁ『人界』とでも呼ぼうかしら。ちなみに『神界』『獄界』って所もあるわヨ」
イクリプスもグラスを傾ける。
やけにこなれていて様になっている。
「この『冥界』って所は、要は魂のゴミ箱ってところかしラ。基本的には『神界』で管理できない魂を、まぁ捨てる所ネ。アナタ一体どんな悪いことしたノ?」
オリヴィアは、
「私は別に、」
と、口籠る。
シェーンはそれを見て、
「ヤダ、冗談よ」
と、笑って流す。
「ここに来る魂なんて碌な事して無いんだかラ」
オリヴィアは少し返答に困り、グラスを鳴らす。
「あの、私お金とか何にもないんですけど…」
「でしょうネ。この世界で誰も持ってないわよ。でもお代は貰ってるノ。アナタでも支払えるモノ」
オリヴィアの顔が引き攣る。
こう言う時は大体面倒を言われる事を理解している。
「ここでは命で払ってもらってるノ」




