いつか訪れるべき別れ
「そうか、主もいくのか。聖魔殿よ」
「二人なんだから、オリヴィアでいいですよ。オヴニルさん」
「…その響きも久しいものよ」
「そんな寂しそうな顔しないでください。これは順番です。でも私だけ遅過ぎたかもしれません」
「そんなこと無いわ。主と出会った時も老いぼれたと思っておったが、あれから歳をとった。友の死とはいつまでも慣れぬものだな」
「そんなもの慣れない方がいいですよ。でも結構変わっちゃいましたね。魔王領も人間界も」
「なに、儂にすれば他愛も無いものよ。我ながら好かんな、この龍の生というものを」
「それよりも気をつけて下さいね。最近人間界では、龍狩りが横行してますから」
「クク、やつらも変わらんな」
「そうですよー。身勝手な奴ばっかりなんです」
「主が言うと違うわ」
「フフ。オヴニルさん、お願いがあります」
「なんじゃ?煙草ならあと少しあったはずじゃが」
「オヴニルさんのしけってるじゃないですか!違います。手を握っていて欲しいんです」
「シュナが嫉妬せんかの?」
「多分、今日だけはいいと思います」
「そうか。こんな老いぼれの手なんぞ好きなだけ…」
「オヴニルさん昔のままじゃないですか。綺麗なままですよ」
「主も変わらんな。グレイス嬢の城で初めて会った時からかわらん」
「ふたりとも、元気ですかね」
「さぁな、死後の世界とやらがあるなら元気じゃろ。所でオリヴィアよ。主からしたら二度目の死じゃ。また何処かで生まれ変わるなんてことないかの?」
「どうでしょ。でももし生まれ変わったら、ここまで飛んできます!」
「…そんな事言われると、本当に待ってしまうの」
「今日のオヴニルさん、なんだかしおらしいですね」
「年寄りを揶揄うな」
「オヴニルさん、もうちょっとゆっくりしたかったんですけど…」
「その時か…」
「みたいです」
「大した感謝も伝えなんですまんな」
「いえいえ。いつも通りのオヴニルさんと話せたので良かったです。…オヴニルさんはゆっくり来て下さいね」
「…できればはよういきたい」
「ダメです。私の最後のワガママと言う事で!」
「主はズルいの」
「……オヴニルさん。後の事、お願いしますね」
「…うむ。向こうで皆によろしく頼む」
「オヴニルさん、ありがとうございました!ではでは」
「うむ。最後まで主らしいな」
「…」
「…」
「…」
「なぁオリヴィアよ…」
「…オリヴィア…」
「…ありがとう、オリヴィア」




