初手で積んでますがなにか?
……
…………
………………
……あれ?
俺なんで両腕縛られてるんだ?
俺の目の前には大きな台座があり、その先には裁判官が着るような服に似た衣装を身に纏った美少女が俺を睨んで腰掛けている。
なにやら大きな声でいろいろと喋っているが正直内容が入って来ない。なぜなら、その少女の横にはこれまた可愛い美少女がタオル一枚で体を隠し立っているからだ。
そんなのガン見するわな、男なら。
「話を聞いていますの?そこの変体さん。」
冷たく発せられたその言葉に思考が現実に戻ってくる。
「さっきから言ってるように、俺は無実だ!不可抗力であんな事になったって言ってるだろ!」
裁判官風の少女に向かって叫ぶが、むなしいかな話を聞いてはもらえない。
本当、どうしてこうなった……
日本 東京 秋葉原 午前11時24分
「いやー、数量限定プレミアフィギュア付きのアストラル戦記のアニメのBlu-ray Disc。やっと手に入ったー!」
秋葉原に有るとあるアニメショップの裏手、路地裏で俺はついさっき買った限定付きBlu-ray Discを高々と掲げ喜びの高揚に涙を流しながら喜んでいた。
そう、この変体じゃねーのと勘違いされそうな(実際変態だけど)男こそ俺、高橋 竜。
どこにでもいる普通のオタクをしている高校生だ。
昨日の深夜からここ秋葉原に有るアニメショップに並び続け若干テンションはおかしいが普通の高校生だ。大切だから二度言った、文句あるか。
学力は学年テストでいつも赤点ぎりぎりで、勉強するぐらいならアニメやゲームに生きると誓う程馬鹿ではあるが……
そんな事はいいんだ、大事なのは今買ったフィギュアを早く家に帰り大事にケースに入れて飾るという任務がまだ残っている。これは、どの任務より最優先事項だから速やかに遂行する義務がある。
心に熱い決意を燃やしながら意気揚々と家に向かって歩きだした筈だった。
そう、筈だった。
「?」
踏み出した一歩目の足は地面に付かず、空気を踏み抜いた。比喩とかではなく本当に空気を踏み抜いていた。
「な、何じゃあああぁぁぁぁぁ……」
頭が理解するよりも、驚きで声を上げるよりも早く体は空から地面に向かってダイブを始めた。
さっきまで地面の、それも日本の東京の秋葉原のアニメショップの路地裏の地面に立っていたはずなのに何故空に居るのかって?こっちが聞きたいわ!
「ぉぉぉぉおおおおお!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!このままだとマジで死ぬ!!!」
雲の上から高度が下がっていき、地面がこんにちわをしはじめてやっと自分の状況が本当にやばいって事を頭が理解し、今まで感じたことの無い恐怖と焦りが全身を支配し体が硬直して動かなくなり自分がパニックになってるのを実感した。
「まじで誰か、いや神様助けてください!!死にとうないです、神様あああぁぁぁぁぁぁ!!」
落ちながら居るかわからない存在に祈りながら尚も落下を続ける。
暫くいない神に祈りを捧げて居ると迫り来る地面ではなく、何かの建物の天井窓だろうか?一面ガラス張りの天窓が落下予測地点にある事が落ちる先にある事が分かってきた。
まぁ、だからどうしたって話だけどさ。
このまま行けば間違いなくあの天窓を突き破り飛び散ったガラス破片で身体のあっちこっち切りながら地面に無事落下、見るも無惨な血肉の塊の死体の出来上がり……ってうっさいわ馬鹿!
そんな事には成りたくないが、生憎普通の人間にはこの状況を打破出来る手段は無いんだなー。
てなワケでグッバイ我が人生、いい夢見れたぜ……
死を覚悟しこれ迄の人生を思い返して天窓にぶつかろうとした瞬間、身体が不思議な感覚に支配された。
ガラス窓と自分の身体の間に空気ボールを挟んだかの様な感触を感じた。
その圧迫に耐えかねたのかガラス窓が割れ、再度落下をしたが幸いにもそんなに高さが無かったのか直ぐに地面とご対面出来た。ただしびしょ濡れになったが。
「……プッハ!アッツ!え、お湯?」
腰あたりまでの深さにタップリと溜まったお湯に驚きと困惑でもう頭がどうにかなーれっと思考を明後日の方へぶん投げた。諦めるなよ俺の脳みそ、頑張れば今どんな状況が解るだろ……
だが、一応命に関わる程の怪我は無いしガラス破片も空中で漂って止まってるし良かった良かっ……た?
んー、ん?破片が空中で止まってる?
ハハッ、俺ってば疲れてるのかな?幻覚が見えるぞ。
現実を受け止めようとしない脳内に非常な現実を視覚と言う確かな情報網が現実を見ろと言わんばかりにクッキリと目の前の状況を脳内にリークしてくる。
「だれ!そこに誰か居るの!」
脳みそと視覚が脳内で格闘していると女性の、それも警戒してるような鋭キツイ感じで声をかけられた。
助かった、そう思った自分が正直浅はかだったと思う。
腰までの深さにタップリと溜まってるお湯、当然湯加減は丁度いい熱さでこのまま肩まで使って日頃の疲れを取りたい気分になる。まぁ、ここまで来ると今自分は何処に居るか想像出来る。
そう、お風呂だ。
いや、広さ的には温泉だろうか。だがそんな事はどうでもいい、肝心なのはお風呂にしろ温泉にしろそこには誰かが入ってる可能性がある事。そして、先程聞こえた警戒する様な女性の声。
あれ、これって俺積んでない?
結論が出た所で目の前の湯けむりの中から身体の前をタオルで隠しながら歩いてくる女性が目に映る。
腰まで長く真紅のように赤い色をした美しい髪、顔は幼さが残るがそれでも美しいと思ってしまう程綺麗に整っている。身体のラインは女性のいい所だけを集めたかの様な流れるラインで出るところ、主に胸が出ていて申し分ない。
って、違う違う。
これは非常にまずい。えぇ、非常にまずい。
裸の美少女を目の前に俺はこれから起きる事態にどう対処するかを必死に考えるしか出来なかった。




