包囲戦
次回辺りで前座終わりです。(長ぇよ)
朝から騒がしい日だった。
帝国に対するデモ隊は今日も何人か暴れていて、昨日と同じ様にまた拘束。
聴取をした後に報告書を書くと、もう昼近くになっていた。
カウラと共に昼飯を食べに行く時にリンドと出会い、
「塩投げるぞ!くそあほ!!」
と悪態をつかれて。
結局のところ昼飯は食べれず、喧嘩をしていた二人の男を仲裁していた。
カウラはその際に巻き込まれて殴られ、今は本部で頬を冷やしていた。
「ヴァルナぁ……痛いぃ……。」
「機動隊が殴られてへこむなよ……。」
ため息をひとつ。
へこみながらも行方不明者の資料を読むカウラの頬は軽く腫れていた。
俺は氷をタオルで包み、簡易的な氷嚢をカウラに渡した。
「ヴァルナ、俺の嫁にならないか?」
「早くカミさんを見つけろバカ。」
氷嚢を頬にあて、資料を読み始めた。
俺も被害者リストを開き読み始める。
被害者のほとんどが何の変哲もない人間であり、共通点が見つからない。
性別、出身、家柄─、全てがバラバラでランダム。
強いていえば年齢層が高めなこと。
老人が割合では多く、若者はそこまで多くない。
カウラも俺もバァナが原因とは考えていない、つまり共通点があるとすれば年齢。
しかし、それも偶然と思えば偶然と思える。
うーん……。
思い詰めている時、警報が鳴った。
次いで点と線が印字された内容書が印刷されカウラの机にひらりと落ちる。
それを手に取り、カウラが読む。
「仕事か、今回は……。」
厄介だな……、とカウラは呟く。
「レジスタンス関連か。」
「ああ、告発だな。アジトを見つけたって一般市民が。」
「面倒だな。」
この関連は義務的に調べる必要があるが、証拠を見つけづらい。
しかも相手は国に対して明確な敵意を抱いているため、機動隊相手でも戦闘になることが多い。
「一度、ハラリ総監に報告しよう。」
結果、ベリィに常駐する機動隊の100人を招集し、アジトを包囲した上で中に突撃することとなった。
その突撃のメンバーの中には俺とカウラも入っていた。
2時間後。
「準備は良いか。」
カウラが10人のメンバーに確認を取る。
メンバー全員が各々の得物を携え、頷く。
カウラは短剣と片手剣。
俺は両手剣。
他は銃火器、ナックル等。
アジトはベリィの南にある潰れた酒屋だった。
アジトの周り、半径30レーデルを総勢100人近くの機動隊で包囲した。
3……2……1……。
「突撃!!」
俺がドアを蹴破る。
そのまま中へ10人全員で雪崩込む。
「機動隊だッ!!」
中に入って分かったことがある。
「これは─!」
酒屋の中には、1人の神霊兵が血にまみれ倒れていた。
「おい!」
俺は両手剣を納め、駆け寄る。
「何があった!?」
コヒュー……と口から呼吸をしているが、胸の大きな刺傷を見るに肺をやられている。
「ば─」
焦点の合わない目で、俺の顔を必死に捕らえようとする。
「ばぁ……な……が……。」
バァナ─?
「カウラさん!!」
外から機動隊の1人が叫ぶ。
「バァナに……包囲されてます!!」
「嘘だろ……!」
カウラが驚くのは無理もない。
バァナは原則として舗装した地面からは出てこない。
何も無いただの地面から湧き出るのだ。
ベリィはインフラとバァナ防止策が進み、舗装していない地面はない。
「─あ。」
苦しそうに息を漏らして神霊兵が喋り始める。
「もう一人の子が……ばぁなに……上に……」
上!?
1階の天井が軋み始めた。
俺達が反応した瞬間、天井に穴が空いてどさりと神霊兵が落ちてきた。
もう、その子は事切れていた。
「全員、戦闘態勢に入れ!!」
カウラが叫ぶ。
俺も両手剣を片手で持ち上げる。
ガシャンッ。
2階の穴からバァナが降りてきた。
「ヴァルナ……。」
「ああ、こいつはヤバい。」
デカい。このバァナは他のバァナと比べ1.5倍のサイズ。
酒屋とはいえ、この狭い空間で10人と大きいバァナ。
「カウラ!!」
「分かってる!皆外へ出ろ!!」
外へ出て開けた場所へ走り出る。
既に機動隊のほとんどがバァナとの戦闘に入っていた。
「神霊騎士団に連絡を!!」
「既に連絡に向かわせました!」
カウラにもさすがに焦りの顔が出る。
「クソッ─。」
機動隊はバァナ相手の戦闘を得意としていない。
元々バァナ自体が神霊騎士団の管轄であるため、100人の機動隊でも分が悪い。
「ヴァルナ!」
カウラの一言で後ろに強烈な殺意を感じとった。
寸で避ける。
先程の大きいバァナが俺のいた場所に爪を突き刺していた。
危ない……。
「とりあえずやるしかない!」
カウラにそう呼びかけるとアイツは頷いて、
「神霊騎士団の到着まで持ちこたえろ!!」
しかし、この戦いが大きな後悔を産むとはこの時俺は思ってもいなかった。
オチが見つからなかったことは認めましょう、
あと白猫の茶熊キャラが揃いません、助けてください。