騎士服と裏番付
テキトー執筆継続中。
「ほれ、出来上がっとるぞ。」
試練の翌日。
ヴルト様は出来上がった神霊騎士の制服を私に渡した。
「“天衣無縫”でこしらえた特注品さ。あんたの髪の毛を布に溶け込ませて神性解放しても裸にならないようにしたし、縫い目の存在を消したから下手な衝撃、斬撃で裂けることも無いだろうね。」
神霊騎士は軍服コートを基本的に着用するが、私の場合は背が小さく不格好になるので騎士団の制服の色を白黒反転させたものにした。
私専用の騎士服は出来たてホヤホヤ過ぎて白が光を反射して輝いている。
とりあえず、背中の十字架を下ろし、袖を通した。自然と背筋が伸び、小走りでそのまま鏡の前に立つ。
「わぁ……。」
あまりにも綺麗で思わず声が漏れた。
「うん、なかなかさね。」
鏡には神霊騎士の象徴である純白の制服を着た……。
顔がパンパンに腫れ上がった私が映っていた。
「にしても手酷くやられたもんさね」
「神霊騎士の試練があるなんて知らなくて……。」
カカッとヴルト様は笑う。
「この旅は4人の支部長に認められるためにあるからね、名目は就任前の長期休暇となってはいるが。」
昨日の戦いを思い出して口から漏れ出る。
「シスター=カーマは、その、化け物でした。」
殴られた腹をさする。さする腕も痛い。そもそも痛くないところがない。
「ということは手も足も出なかったろう?」
「ええ、手加減された上で……。」
結局、私は彼女に異能すら使わせることすら叶わなかった。
ヴルト様は私が着ている神霊騎士服を所々弄りながら呟く。
「そりゃ、騎士団の中で最強だからね。」
「最強……?最強はミトラ様では?」
私は脇の下部分を弄っているヴルト様に尋ねた。とてもくすぐったい。
「神霊騎士団には各支部長4人と神霊騎士がおるだろう?」
「ええ、神霊騎士候補の5人から神霊騎士を1人選んでそれ以外の4人を支部長にすると……。」
今回に関してはその支部長全員が神霊騎士候補から降りたから私が神霊騎士になった。
「ミトラ様の世代は各能力の序列1位がなっているのさ。」
「序列……ですか。」
ある程度服を見終わったのか、ヴルト様は1度服を脱ぐように私に指示した。
「神霊騎士団の裏番付があるんだよ。神霊騎士のお前ならそのうち見るだろう。」
ま、お前さんが試練を抜けられたらの話だが。と意地悪く笑う。
「そこでカーマ様は最強と?」
「体術の、だがね。」
ヴルト様は仕立てた服を手直しするためか、針を手に持った。空間が少し歪む。
さらっと神性解放している。慣れない。
「今の各支部長は体術、神霊術、武器術、戦術の序列1位なのさ。」
「ミトラ様はそのどれでもないんですか……?」
「それらの序列2位だね。」
まさか……!あの歴代最強の神霊騎士と言われたミトラ様が?!
かなり驚いた顔をしていたのかヴルト様はニヤニヤしながら言った。
「カーマとやったんならわかるだろう?化け物揃いだよ。その序列2位さね、しかも僅差の2位さ。ミトラ様が正真正銘の化け物だよ」
「そう、ですか……。」
でも少しだけ、ほんの少しだけ……。
「残念かい?」
ヴルト様が服の手直しを続けながら私へ聞いた。
私は何も言えず俯いた。
「まぁね、ミトラ様も人間なのさ。じゃなきゃ今も生きてたよ。」
裏番付という存在はミトラ様の努力を示したものだったのかもしれない。人間であるうちに人間の限界を突き詰めて、才能を超えて、人を超えて。
それなら私は、私は……。
「次は、必ず勝ちます。」
彼女は微笑んだまま。
「アンタの序列はきっとしぶとさ1位だろうねぇ。」
手直しが終わったのか、騎士服を軽く振りさばいて私に手渡す。
私は少し下唇を噛みながら受け取り、袖を通した。肩周りがより一層動きやすくなった。
ふと頭に浮かんだ疑問。
そういえば、ミトラ様って……。
「あの、ミトラ様はなんの序列1位なんですか?」
「総合力と騎士団の生涯無敗記録だよ。」
結局のところ、私たちの誰もが、彼女に勝てなかったのさ。
彼女は少し微笑んで窓の外を見ると、寂しそうな目を机の上に落とした。
「どうやってあのミトラ様を殺せるんだか。きっと、きっと……敵はひどいことを強いたんだろうね。」
ヴルト様は少し震えていた。
テキトー投稿を継続していく予定です。
次回未定。(ここもテキトー)