神霊騎士と裏試練
久しぶりに書きたくなったので。
何となく分かっていた事だった。
恐らくベリィに行方不明者が集まっていることも、あの王子が糸を引いていそうなことも。
「ですが、何の痕跡も無くて。強いて言うなら一年前に出来た施設ですかね……。」
「施設?」
カーマは首を傾げた。
「流行病などの研究施設と表向きにはなっていますが……、実態は正直不明ですね……。」
王子直属の部下しか出入りを許されていない施設。何度かカウラが潜入したものの得られる情報は少なかった。
「貴方でも分からないなら誰も分からないわよ。にしてもあの王子、相変わらずろくな事してないわね。」
溜息をつきつつ、私の持つグラスに水を注いだ。優しい。
「いなくなった警備隊の代わりを騎士団で請け負って……本来ならもう神霊騎士も決まってるはずだと言うのに……。」
だから、これからは私が神霊騎士として……!
「私……頑張りますね……!」
ふふっとカーマは微笑む。
「そうね、そのためにまずは神霊騎士になるための課題をこなさなきゃね」
「そうですね……、あとは西と東と南。支部長に挨拶回りをして手形を貰うまで旅は続きますから……。」
「待って。」
カーマが私の言葉をさえぎった。
「まだ私のところの手形が完全じゃないわよ。」
「いえ、先程貰ったはずですが……。」
「あれは極北支部に訪れたという証明手形よ、私の承認手形はまだ渡してないわよ。」
承認手形?私が聞いているのは証明手形のみで……。
首を傾げた私の顔を見て、ああ、とカーマは納得したような顔をした。
「急な代替わりだったから知らないのね。神霊騎士になるためには今回の場合4人の支部長から承認手形、つまりは私達があなたを次期神霊騎士として認める必要がある。」
「認めるというと……?」
「実力を示せということよ。私達と戦って、勝ち取りなさい。」
戦う……?つまり私はこのカーマに勝つ必要があるということ……?
私は先程の戦いを思い出していた。擬似神性解放までして現状ピンピンしているカーマ。とてもじゃないが、勝つビジョンが見えない。
「あら、気づいたわね。そうよ、まだ貴方を神霊騎士として認めるには力不足。まずは組手をして私に勝ってみなさい。」
「そんな……。」
「弱い神霊騎士はいらない。」
カーマは急に冷たい口調でそう言った。とてつもないプレッシャーを感じる。空気がズンと重くなった。
「あなた、あのミトラの次になるのよ。意味が分かる?歴代最強の神霊騎士でバァダバァナの封印すらして見せたミトラの次。」
ハッとした。甘かった。
あのミトラ様の次代が弱い私ではダメだ。
「明後日なら身体も全快してるかしら?」
先程とは変わって明るい口調になったカーマの顔を見る。
「えぇ、それまでにはいつも通り動けるかと。」
「じゃあ、その日にしましょう。殺し以外はルール無用の組手試練。立会人はキーロン。」
「そんな急に!」
「ミトラは出会って30秒で私に認めさせてたわよ。」
いたずらっぽく笑うカーマ。
「それに本来なら私も含めた各支部長と本部の推薦人から次期神霊騎士を決めるのに、貴方に決まった理由をご存知?」
「今回は異例としか聞いていなくて……。」
「組手試練のときにたっぷり教えてあげるわ。」
そう言ってカーマは部屋から出ていった。
気が向いたらまた投稿します。