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アングラミュート 銀の弾丸  作者: 土野 絋
抵抗者たち
16/24

停滞と焦らし

俺が書くと主人公なんもしねぇな……

「よくいらっしゃいました。」


褐色、と言うより灰色に近い肌の色をした神霊兵が上品に、優雅にお辞儀をした。

その唇には真っ赤な口紅が塗られている。

そのお辞儀の相手は小柄な少女に不釣り合いな白く輝く巨大な十字架を背負っていた。


「そう堅苦しくしないで欲しいです。」


リンドは苦笑し、背負った十字架のベルトをきゅっと握った。


「いえいえ、そういう訳にも行きませんわ。特にそれが次期神霊騎士様、リンド様とあれば尚更。」


特殊な肌の色をした神霊兵は優しく微笑んだ。

真っ赤な唇が横に薄く伸びる。

それはどこか不気味で、優しく微笑んでいるだけなのに、リンドの背筋にスッと緊張が走った。


リンドはこの女が得意でなかった。

それはミトラも同じく苦手であったからかもしれない。

油断を見せてはならないこの女のオーラを感じ取れる者は同じような感想を述べるのだった。


──背中を見せた瞬間、意識を奪われるような気がする。


しかし、同時にこの女からはむせるような、胸焼けを覚えるほどの色気と魅力があった。

かなりグラマラスな肢体をしているが、締まるところは締まっている。

女性らしい体を体現したような女だった。

リンドとは真逆である。


「相変わらず礼儀正しいのですね、あなたより若輩で格下の人間であるのに。」


リンドは緊張を飲み込み、出来るだけ微笑みを絶やさず話す。


「もちろんです、そのような無礼はこのカーマ・スカーレットルージュが一番嫌悪することですから。」


この女、シスター=カーマは帝国最北端に位置する神霊騎士団支部長である。

約50人の神霊兵を統制する、腕は一流だ。


こちらへどうぞ、とシスター=カーマは支部の奥へ歩いていく。


リンドはその後ろをついて行くが、違和感が強くあった。

歩く後ろ姿は体のラインが出やすい神霊兵の兵装のせいか、かなり揺れる腰に目を奪われるが……。


──あまりにも静か過ぎるのでは?


「ところでシスター=カーマ?」


「どうされました?リンド様。」


「ほかの神霊兵は?見たところあなたしかいないようですが……。」


シスター=カーマは振り返ることなく、笑っている口調で応えた。


「今は警備巡回に全員出払っていまして、申し訳ございません。私しかおもてなし出来ずに……。」


「いえ!そういう事ではなかったんですが……、本部と比べるとやはり静かだなと思いまして。」


「まぁ、それは本部ですからね。やはり支部は人出が足りないですから。」


「そうなんですね。」


リンドは周りをキョロキョロと見回している時、シスター=カーマがどのような顔をしているか分からなかった。


カーマは頬を赤らめ、悦楽と殺意に満ちた顔をしていた。


あぁ……、早くイってしまいたい……。


カーマはただそれだけを頭の中で回しながら、自らの豊かな胸を乱暴に握った。







「レジスタンスと言うよりは、避難キャンプみたいだな。」


ヴァルナはピュセルにレジスタンスの案内をしてもらっていた。


「お年寄りも子供も見過ごせないでしょ……?だからよ。」




「おーよしよしよしよし、良い子にしてたか皆ぁ。」


少し離れたところでジャックマンが大人数の子供たちを抱え、撫で回していた。


「子供好きなんだな、アイツ。」


なんというか─。


「分かってるわ、キャラじゃ無いわよね。」


「ああ。」


しかし、こんなお年寄りや子供が沢山いるレジスタンスがあるだろうか。


「これじゃ、そもそも帝国に牙を剥こうなんざ夢のまた夢よりもまた夢だぞ。」


「言い回しが独特ね。」


ピュセルが無表情で突っ込む。

俺にとっては素で言ったんだが。


「まぁね、こんなんじゃ確かに帝国はひっくり返せない。」


でも、とピュセルがまっすぐと俺の目を見た。


「ここにいる人達は行方不明になった人達の家族や、帝国の圧政にあってた人達なのよ。貴方みたいに帝国に仕えていた訳でもない!なのに、生活だけが苦しくなる。だから私の親父はその人たちを集めてレジスタンスというレッテルを貼られながら、その人たちを助けていたのよ。」


「じゃあ親父さんは今何してるんだよ。」


「死んだわよ。1年前貴方が死んで、その後にレジスタンス狩りが起きて……。それで……。」


「そうか……、だとしても帝国を討つ必要は無いだろ。今まで通り暮らせばいいじゃないか。」


ピュセルは下唇を噛み、少し黙った。


「この地底に追いやられている時点でわかるでしょう?もう、余裕も後もないのよ。」


それに、と続ける。


「元々私たちは五人兄弟なの。私とジャックマンと、幼い時に亡くなったピエール。あとはジャンとカトレア。」


「ジャンとカトレアは?」


「1年前に帝国に捕まった。私たちは助けに行きたいのよ。2人の兄弟を。」


「帝国に奪還は無理なのか。」


「都市ベリィは完全な封鎖。何度も忍び込もうとしたけど、ジャックマンの怪我が増えただけ。1年前に何もかも変わったのよ。」


「帝国は今、そんなに荒れているのか。」


「噂では王が亡くなったあと王子が継いで、軍事力に力を注いで他国を侵略しようとしているとか、あとは奴隷制の採用、行方不明者も増している……。」


「大荒れ……だな。」


「噂だから確証は無いけどね。でも恐らく本当。」


ジャックマンは子供たちに腕を掴ませて、人間メリーゴーランドをしていた。


ここで本当に帝国を殺せるのか。

ヴァルナは1人覚悟していた。


PUBG面白いです(・∀・)

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