蘇生の代償
冬休みは書かないで過ごそうかとも考えたんですけど、書きました。
えーと、良いお年を。
「誰だ、お前。」
「それはこちらの質問でもあるわ。」
ピュセルという女は拳銃を構えながら、凛とした表情で尋ねる。
あまりにもミトラと似すぎている。
だが、確かに別人だ。
幼く、朱髪では無い金髪。
「ヴァルナ・ドラースだ。」
「まさか、そんなはずは無いわ。」
拳銃をピュセルは下ろした。
驚いた顔。
「ミトラ様の夫……、1年前に亡くなったはずよ……。」
「1年前?!」
蘇生が無償で行われるはずが無い。
しかし、僅かで大きく失った時間は残酷だった。
「行ってらっしゃいませ!」
心霊兵達が声を揃えて私を見送ってくれた。
「しばらくは騎士団を頼みます。」
私は軽く会釈をした。
「行ってらっしゃいリンド、本当は私もついて行きたいんだけど……。」
「テレシアは私の代わりに騎士団の管理してもらわないと困りますから。」
背の低い少女は自分より大きい白い十字架を背負い笑顔で神霊騎士団本部の扉を開く。
「それでは、行って参ります!」
最年少の神霊騎士、リンド・アーキマン。
「よう、リンド様。」
「バカにしているんですか?」
カウラとリンドは墓の前で待ち合わせをしていた。
「1年、経ってしまったな。」
「ええ、もう終わりは近いです。」
2人は厳しい顔で墓を見つめた。
墓にはヴァルナとミトラ、サティの文字が彫られてある。ここに埋まっているのはヴァルナとミトラだけだ。
「私はどうにかして今の王を止める方法を探します。」
「俺は機動隊を辞める。」
「え?」
「俺も止めるために核心に潜入するさ。」
「まさかそんな危険なことを……。」
つまりはスパイ。リンドは背負った十字架を振るようにカウラと向き合う。
「貴方がいなくなったら……それこそ二度と帝国の救済なんて……。」
カウラがリンドの言葉を遮った。
「弟の行方も分からないんだ。多分、帝国のせいだろうな。」
「まさか貴方の弟って……。」
「誰にも言うなよ?弟の部下とか兄の面子がな。」
リンドは強く目を瞑る。
「カウラ……、必ずです。必ず生きて……。」
「分かってるさ。」
カウラはそう言ってリンドの頭を撫でた。
「子供扱いしないでください。これでも私は神霊騎士団のトップですよ?」
「リンちゃんも気をつけて。形見の十字架も似合ってるぞ。」
「ええ、貴方も気をつけて。リウラさん、見つかるといいですね。」
それじゃあ、また。
「私はピュセル・ドルレアン。」
こいつの双子の妹よ、彼女はそう付け足し、ジャックマンの頭をはたく。
ジャックマンは少しイラッとした顔をした。
「ヴァルナ、貴方が亡くなったのは1年前の事よ。どうして生きてここにいるのか分からないけど、つまりはそういうこと。」
「そうか。」
意外と俺自身は動揺しなかった。
全て元のままで生き返るのは不自然だと感じていたから。
「で?ゾンビのヴァルナは何しに来たんですか?」
喧嘩売りの口調でジャックマンが尋ねてきた。
「いや、まだお前らは俺の質問に答えてない。」
ピュセルとジャックマンは何者なのか。
何故、消えたアングラにいるのか。
「そうね、私達は……レジスタンスよ。」
「……!!」
こいつらが、ミトラを殺した奴らなのか!!
「お前らが……ミトラを殺したのか!!」
なら……殺すしか!!
「私達はミトラ様を殺したりなんかしてない!!」
「あれはレジスタンスがやったんだろうが!!」
剣を握り直し、ピュセルの元へ突っ込む。
「ピュセル!!」
「仕方ないわね!!」
ミトラの仇だッ!!
精神的に若返ったヴァルナ君は短絡的で戦闘狂です。
……たぶん戦闘狂ですよ、はい。
やっぱファンタジーとかバトルもん苦手だな私は。