牙を研げ
クリスマスはいかがでしたか?
私はスマホゲーをしている間にクリスマスが終わっていました。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……。」
「テレシア……落ち着くのです……。」
神霊騎士団本部、そこでリンドとテレシア、カウラとリウラが集まっていた。
目の前にはヴァルナの遺体。
ぽっかりと胸に風穴を開けて、眠るように死んでいる。
「クソッ……。」
カウラはヴァルナから目を背け拳を握りしめていた。未だ大量に出血した為か、ふらつきがある。
「……。」
リウラはただ沈黙する。
計画は失敗した。
ミトラ・ドラースの葬儀の後、ある噂が挙がった。
ヴァルナがミトラ・ドラースを殺したのではないか。
誰がこんな噂を流したのか分からないが、もしこの噂が本当になってしまった時、ヴァルナは確実に処刑される。
それと同時にテレシアの元にある情報が舞い込んできた。
神霊兵の中にミトラの娘の情報を流した者がいる、と。
また、カウラの元にはまた別の情報が入ってきた。
人さらいは帝国が行っている、と。
そして、リンドの元には……。
ともかくリンドはテレシア、カウラ、リウラを呼び、ヴァルナの救済を計画した。
ハラリにはこの計画を勘づかれたが、彼から参加を申し出た。
「今回の計画には裏切り者がいた。」
リウラが沈黙を止め、独り言のように話した。
「……ハラリ総監だ。」
リンドが目を強く閉じた。
止めようとしたのだろう、絞り出るように涙が一筋。
「くそあほ……。」
「そもそも何でハラリだと分かったんだ?」
カウラがリウラに尋ねる。
「これを見てくれ。」
リウラが今回の計画書を見せてきた。
「これはハラリ総監の机にあった、ここを見てくれ。」
そこには“王宮政務課に”と書いてあった。
王宮政務課、つまり王の元に筒抜けだったという事だ。
「そうか……。」
カウラはただ立ち尽くす。
「だとしたらおかしい事が一つだけあります。」
リンドが涙を拭いて言った。
「何故、ハラリは作戦通りテレシアの魔眼を受けに行ったのですか。」
「その方が警戒されなくて済むと踏んだからじゃないか?しかもあの時、ヴァルナは眠っていなかったしな……。」
そう言ったカウラはふらり、とよろめき膝を着いた。
「カウラ、この中で1番傷を受けているのは君だ。もう休んでくれ。」
「こんな状態で休めると思うか?リウラ。」
帝国はこの時も動いている。最悪の幸福を作るために。
「どうすればいいんでしょうか……。」
泣き腫らした赤い目をしたテレシアが呟く。
………………。
思考が停止していく音があたりに響いた。
「そうか、やっぱりここはアングラか。」
細く大きい十字架が砂に刺さっている。
ここは墓だ。
アングラは700人程が住む村だった。
歴史は古く、帝国が出来る前からあった村らしい。
まぁ嘘だとは思うが。
アングラの特徴は地上に無いことだ。
鍾乳洞にできた天然の迷路を進み、地下に潜ってやっと見つけられる砂に囲まれた地底の村。
俺はアングラの、地底の、神だった。
「皆、ただいま。」
墓には誰一人埋まっていない。
ただの地面に十字架を刺し埋めただけだ。
アングラの民は一人残らず死んだ。
生き残ったのは神性を持つ俺だけだった。
バァナは突然現れた。食べるでもなく、ただ惨殺して地面に引き込んでいった。
「ッ……。」
思い出すだけで、首の後ろを中心に血が熱で噴き立つ。
刺さっている細い十字架には字が彫られている。
ヴァルナが善き神であったことを、ここに証明する。 ミトラ
ミトラは俺を拾ってくれた。行き場のない怒りを、殺すしかやることのなかった俺を受け止めてくれた。
ミトラの為に、サティを……。
そして帝国を殺す……!!
腰に提げた剣を抜いた。
十字架の下を素手で掘る。
そこにあったのは赤錆びた両手剣。
装飾はほとんど取れてしまっている。
どれだけこの剣で人を殺しただろうか。
骸の山が出来るくらいには殺しただろう。
「帝国にも骸の山を作ってやるさ……。」
その剣を握る。血を吸って紅く光る刃は妖艶な輝きを醸し、手に絡みつくような感触を感じさせる。
「おい、お前。そこで何やってる。」
ゆっくりと立ち上がり、後ろを見る。
男が1人、素手で仁王立ちをしていた。
誰もいないアングラに人がいた。
「こっちのセリフだ。お前こそここで何やってる。」
「他人に話すつもりは無いんでね。」
長身の男が拳を鳴らす。
そうかそのつもりならいいだろう。
「やめてくれないか……?」
「ん?」
「今少し機嫌が悪いんだよ……。」
長身の男の瞼がピクリと動く。
「もしかしてヤバい奴か?お前。」
たぶん、男が発する殺気より俺は現実味を帯びた殺気を発している。
「来るならさっさと来い。」
久しぶりの感覚だった。戦いに身を投じる時の高揚感が止まらない。
「クソッ……出来れば退散して欲しかったぜ……!!」
男は戦闘態勢に入る。
俺は先程掘り起こした剣を片手で握り、振る。
フォン……。
人を殺す。その覚悟はミトラとサティのために。
「お前、名は?」
「ジャックマン、ジャックマン・ドルレアン。」
「俺はヴァルナ。ジャックマン、せいぜい楽に……」
死んでくれ、と言いかけたその時。
「止めなさい!!そこの2人!!」
一人の少女の声。
金髪を三つ編みにして、2丁の拳銃を構える女。
「ピュセル!!こいつはこの場所に侵入してきた不審者だぞ!?」
「だからっていきなり殺り合う必要は無いでしょう?!」
拳銃を構えながら近寄るピュセルという少女。
その少女の顔はミトラと瓜二つだった。
ピュセルはミトラの髪色を金髪にして、幼くした感じです。
ピュセル・ドルレアン。ピッチピチの17歳だよ!!
ちなみにミトラは25歳でした。
2次元の中ではもう既にBBA……))Д´) アヒャスパーン