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第83話 『解析』結果を報告します

 

 夜が明け、ダンジョンの入口から太陽の光が差し込み出した頃、支援者(システム)の言葉が俺に届いた。


〈情報の『解析』が進展しました〉


 俺はすっかり忘れていたようだ。

 情報? 何それ? ってなってしまった。


〈本気ですか?〉


 あわわ……もしかして、支援者(システム)さん、怒ってらっしゃる?


(覚えてるって! あれだろ? えーっと……そう、あれだ! 『希望』の件だ!)

〈……肯定。『希望』と呼称される物体から、有用な情報を入手したので報告しました〉


 ふう、良かった。正解だったか……って、有用な情報?

 それじゃあ、ついに呪いを解く方法が分かったんだな。


〈否定。残念ながら、そこまでの情報は入手できておりません。入手できた情報は補助核(サポートデバイス)の情報です〉


 補助核(サポートデバイス)? 何で『希望』から補助核(サポートデバイス)の情報が?

 というか、補助核(サポートデバイス)って、支援者(システム)の機能を拡張するために作ったやつだよな……。

 それを情報として入手って、どういうこと?


〈マスターは補助核(サポートデバイス)の認識を誤解しているので、改めて説明します。補助核(サポートデバイス)は私の機能を拡張するためのものではなく、マスターの補助を行うために創る新たな(コア)を指します。本来、補助核(サポートデバイス)は何も能力を有しておりません。そこに何かの能力を書き込むことで、その機能を発揮することができるものなのです〉


 めちゃくちゃ早口で言われたので今ひとつ分かり難いけど、俺の解釈としては――


(書き込む内容で効果が変わる外付けの(コア)、それで前回は支援者(システム)の機能を書き込んだってところで合ってるか?)

〈概ね肯定です。厳密に説明すると……聞きたいですか?〉

(結構です)


 答えが分かってて聞いてるよな?


〈話を戻します。現在入手した情報を基に補助核(サポートデバイス)を『創造』した場合、マスターの演算能力が向上し、結果として『解析』の進行の促進を図ることが可能となります〉


 原理なんて全然分からんが、状況が良くなるなら『創造』した方が良いだろう。


(それなら、早速『創造』しよう。俺はまた(コア)のイメージをすれば良いのか?)

〈残念ながら、補助核(サポートデバイス)を『創造』することはできません〉


 あ、あら……? 今までの流れだったら、すぐ『創造』に取りかかれそうなものなんだけど……。


〈前回の補助核(サポートデバイス)同様、『創造』には(コア)の基となる材料が必要となります〉

(材料って……まさか、魔窟の(コア)がいるってことか?)

〈肯定〉


 いやいやいや……魔窟の(コア)って言われても、あんなものすぐに手に入るわけないだろう。

 前回の補助核(サポートデバイス)の情報を応用してDPだけで『創造』するとか、できないのかな……?


〈マスターの案は最終手段です。DPで『創造』する場合、甚大なDPと時間が必要となります。DPで100000以上、時間は87600時間程必要となります。なお、現在の演算能力で『解析』を続けた場合、『希望』の『解析』が完了するまで450000時間以上の時間を要します〉


 ……。


(よし、魔窟の(コア)を探しに行こう)


 DPもさることながら時間がえげつない。

 これなら、魔窟の(コア)を探す方が建設的かもしれない。


 しかし、探すって言っても、どうやって探せば良いんだろうか?

 森にあった魔窟も偶然見つけたようなもんなんだし、探して見つかるようなものかどうかも分からん。


 ここは一つ、改めて情報収集をした方が良いかもしれない。


(よし、それじゃあ魔窟を探すところから始めてみるよ)

〈了解〉


 ……


「……というわけで、皆に集まってもらったわけなんだ」


 俺は会議室に集まった皆に『希望』について判明したことと、『解析』を進めるために魔窟の(コア)が必要になったことを掻い摘んで説明した。


 集まってもらったメンバーは長老……もとい前長老のソフィと現長老のマックス、フロゲル、あとは森の外の情報に一番詳しいコテツだ。

 ここ、ダンジョンの会議室では会議の真っ最中なのだ。


「ふむ……そうなると、魔窟が何処にあるかを調べる必要があるというわけですな」


 マックスが議題の要点を述べてくれた。


「しかし、魔窟は伝承でしか聞いたことの無かったもの。ヘルブストの森に魔窟が存在したことは最近まで知られておりませんでした。他にも魔窟が存在するかと言われれば、我々には判断しかねます」

(ワシも長く森に住んでるけど、レーベンの壁よりこっちで魔窟が見つかったなんて聞いたことも無いわ。それこそ、マスターが潰したってゆう魔窟が森にできた初の魔窟ちゃうんかな?)

「レーベンの壁の向こうにはあったのか?」

(あったってゆっても、魔の攻勢の時のことやで? とっくに破壊されてもう無いわ)


 二百年近く昔のことか……そりゃ破壊されてもおかしくないか。

 魔の攻勢の中で、魔窟みたいな魔獣の巣窟を放置したら被害が拡大する一方だろう。

 潰せるなら潰してしまった方が安全に決まっている。

 しかし……。


「あんなもの、よく破壊できたな? この前、俺が破壊した魔窟は、魔素が吹き出すわ空間が固定されたとかで逃げれなくなるわで大変だったんだけど、何かコツでもあるのかな……?」

(そうやなぁ……詳しいことは知らんけど、魔の攻勢の時はエルフの連中が出張ったとか聞いたな。その時だけはエルフも獣人に協力してくれてたみたいやわ)


 エルフがヘルブストの森に住んでいるという話は聞いていた。

 それに、エルフは他の種族との交流を避け、下手をすると一方的に攻撃してくることも。


 そんなエルフも、魔の攻勢の時は獣人に協力してくれたんだな。

 

 まあ、考えてみれば当然だろう。

 獣人は魔獣の侵攻を食い止めるためにレーベンの壁の建設に一役買ってるんだし、むしろ攻撃してくる理由が分からないぐらいだ。

 魔窟のことも含めて話を聞いてみたいな。


(エルフから話を聞くのは無理やで。あいつら、獣人を魔獣扱いしかねんからな。そんなことするぐらいやったら、レーベンの壁の向こうに行く方が簡単かもしれへんな)

「壁の向こうって……行けるのか?」

(知らん。魔の攻勢以降、壁の向こうに行く理由も必要も無いからな。しかもワシらはそれどころじゃなかったし、ワシからは何とも言えんなぁ)


 フロゲルは頭を掻きながら嘆息を一つ漏らした。

 

 俺はソフィとマックスの顔を見てみるが、コボルトも壁の向こうに行こうと思ったことは無いのだろう、申し訳無さそうに首を横に振っている。


 レーベンの壁の向こう……どんな壁かは知らないが、俺のスキルを駆使すれば壁の一つや二つ、乗り越えることは可能かもしれない。

 それをやっても良いのか、それとも無理は承知でエルフに話を聞きに行くべきか……。


「旦那! もしレーベンの壁の向こうに行きたいなら、ヤパンに行けばなんとかなるかもしれないニャ!」


 俺が今後の方針に頭を悩ませていると、今まで口を噤んでいたコテツから意見が挙がった。


「ヤパンから壁の向こうに行けるのか?」

「行ってみないと分からないけど、多分、大丈夫ニャ。ヤパンで使われる魔石はほとんどレーベンの壁の向こう側で狩られた魔獣から手に入れてるから、同じように壁の向こうに行く方法があるはずニャ!」


 確かに、ヤパンでも魔導具が使われるなら魔石が必要になる。

 それなら魔獣の狩場があってもおかしくないだろう。


 よく考えてみれば、ヤパンで魔窟の情報を集めるという手もある。

 それに加えて、前回の会議で決めたヤパンとの交流にも着手できるかもしれない。


〈レーベンの壁の向こうに魔窟が存在する可能性は低いでしょう。しかし、ヘルブストの森に魔窟が存在する可能性はそれ以上に低いと推測できます。合理的に判断して、コテツの案は現状における有効な一手と考えられます〉


 今の支援者(システム)の言葉は皆にも聞こえていたようだ。

 意見を求めるつもりで皆の顔を見ていくが、皆は俺に頷いて返してくれた。


 これはもう、決まりだな。


「それじゃあ、コテツにはヤパンまでの案内を頼めるか?」

「そういう約束だったし、勿論構わないニャ!」


 よし! そうなると、善は急げだ!


「今からキバを呼ぶから、コテツは急いで準備してくれ。準備でき次第、出発するぞ」

「えっ? 早過ぎないかニャ? 旦那の準備は?」


 フッフッフ……俺を誰だと思ってやがる。


「準備なんていらん。俺はいつでもここに帰ってこれるからな」

「なるほどニャ……! そうだった、旦那は意味分からん便利な能力があったんだニャ」


 意味分からんは余計だよ。



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