表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/238

第79話 教えてフロゲル先生 スキル編

 

 事の発端は支援者(システム)の一言。


〈マスターはスキルについての理解が不足しています〉


 何をいまさら? とも思ったが、支援者(システム)が言いたい相手は俺ではなく、フロゲルに対してだったようだ。


(スキルについてか? 何やったら、ワシが教授したろか?)

〈お願いします〉


 正直言うと助かった。

 その時の状況と言えば、俺はコボルト達とともにフロゲルにしごきあげられている最中だったのだ。


 場所がダンジョンの中だったことが幸いし、支援者(システム)の助け舟が入った。

 それが無ければ、俺は今も地獄のような稽古に苦しめられていただろう。


 そもそも、フロゲルはスパルタにも程がある。

 と言うか、俺に対してめちゃくちゃ厳しい。


 俺が『痛覚無効』と疲労しないことを知った途端、鬼のようなメニューを押し付けてきたのだ。


 確かに俺はフロゲルに稽古を付けて欲しいと頼んだが、これはおかしいだろ!?


 何で俺だけ延々と実戦形式の訓練させられているんだ?

 コボルトとの多対一ならまだ良い。攻撃せずに防戦しろっていうのも、まあ分かる。


 しかし、ビークと素手で戦えとかふざけんな!

 一歩間違えたら怪我で済まんぞ!

 何度、壁までふっ飛ばされたか数え切れんぐらいだ!


 やさしいのはコノアだけだな。

 倒れる度にポーションをかけてくれる。


 ……それが、次のラウンドの開始の合図になってるんだが、それでも優しさが体に染みる。


 どうやら、コボルト達も限界が近いようだな。

 休憩無しの稽古に、ほとんどの者が根を音を上げている。


 そんな状況の中、悲壮な空気を切り裂くように支援者(システム)の天啓が舞い降りたというわけだ。


 ……


 場所はうって変わって会議室。

 疲労困憊の亡者で埋め尽くされている。


「マスターさん、お疲れ様です!」


 ココが木製のコップを俺の机に置いてくれた。

 コップの中身は果実をすり潰した飲み物のようだ。

 鼻を近付けると、果実の甘い香りが鼻腔を擽る。


 味の方は……ぬああ! うんまい!


 これは果汁に蜜を混ぜてるのか!?

 酸味に甘味が加えられているから、濃厚なミックスジュースのようだ!

 ネクターと言った方が正しいかもしれない。

 その上、キンキンに冷えている!


〈ダンジョンの機能を活用して、冷蔵庫を再現しました〉


 やりすぎですよ、支援者(システム)さん!

 とはいえ、これはありがたい!


 冷たいジュースなんて飲み慣れてないコボルトの中には、感動して泣き出す奴がいるぐらいだ。

 疲れた体に余程染み渡っているのだろう。

 コップを配っているココが天使に見える。


(いやー、こりゃ美味いわ! 疲れも吹っ飛んだところで、スキルの話を始めよか)


 おっと、ジュースに感動して危うく忘れるところだった。

 スキルの講義が本当の目的だったな。


〈可能な限り、基本事項からお願いします〉


 支援者(システム)は俺に配慮してくれているのかもしれない。

 俺もスキルについて、よく分からないことが多いのだ。

 それこそ前世で存在しない力だし、基礎から教えてもらえるなら助かる。


(じゃあ、スキルの種類からいこか。まずは……)


 ……


 フロゲルの言うスキルの種類とは、スキルの発動条件で大別したものを表すそうだ。


 スキルは大別すると、『アクティブスキル』と『パッシブスキル』に分けられる。


 アクティブスキルは、所有者の意思でオン、オフを切り換えるタイプのスキル。

 俺の持ってるスキルだと、『創造』や『鑑定』など、今から使うという明確な意思で発動するものを言うようだ。


 次にパッシブスキル。

 これは意思とは関係無く、自動で発動するスキルを言う。

 俺のスキルなら『同期』なんかがそうだな。

 強化系のスキルも、多くがパッシブスキルに当たるようだ。


 それと、パッシブスキルの中には発動の有無を切り換えるタイプもあるみたいだな。

 俺のスキルだと……『解析』が当たるらしいが、切り換えたことが無いから今一つピンとこない。


〈『囮』や五感を強化するスキルが該当します〉


 なるほど……『囮』は「来いよ!」っていう意思がある時に発動してるし、五感は集中している時に発動していた。

 発動させない選択肢もあるパッシブスキル、という認識で良いだろうな。


 取りあえず、これでアクティブとパッシブの違いは分かった。


(次は……そうやな、スキルの習得方法やな)


 おおっ! これは興味があるぞ!

 俺は『解析』で入手できるけど、はっきり言って邪道だ。

 できれば真っ当な方法でスキルを入手する方法を知っておきたい。


 ……


 フロゲルの言うスキルの習得方法とは、ひたすら鍛練すること。


 鍛練と言っても、愚直に反復練習するだけでは習得に至るのは難しいかもしれない。

 体で覚え、頭で理解する。

 要は全身に刻み込め、という話だ。


(ちなみに種族で適性があるからな? 適性が無かったら、どんなに努力しても多分……習得は無理やろうな)


 適性か……。

 俺に適性ってあるのかな?

 コボルトは恐らく技術系のスキルに適性がありそうだ。

 トードマンはよく分からん。そこまで親密じゃないから、何が得意か判断できんのだ。


 それに、俺の眷属達はどうなんだろ? 自力でスキルを習得してくれたら心強いけど。


(おーい、マスターは聞いてるんか?)


 げっ! しまった! 聞いてなかった!


(おい、あんまりぼーっとしとったらリブスネイルを食わせるで?)


 それはマジで勘弁だ!

 ともかく、もう一度説明してくれるように頼んでおこう。


(しゃあないな……もう一回言うで? 魔人は魔力がスキルの発動に関係してるんやけど、精霊人は何か

違うみたいや、霊素が関係するんやろうな。ワシも詳しくは知らんけど、精霊人は魔力じゃなくて精霊力っちゅう力を使うらしいわ)


 ほうほう……で、つまるところ、俺ってどっち使ってるんだ?


〈マスターはDPを使用しています。暫定的に魔力に変換していますが、精霊力に変換することも可能です〉


 あー……前に聞いたことがあったな。

 魔素と霊素はDPに変えれるんだったっけか。その逆も然り……と。

 しかし、それならそれで気になることができた。


「フロゲル先生、質問して良いか?」

(先生? ええな、それ。質問もオッケーや、言うてみ?)

「次元力って知ってるか?」

(次元力? 何じゃそりゃ、聞いたこと無いなぁ)


 何気なく聞いてみたけど、やっぱり知らないか。

 次元力ってどうにも異質な力な気がするんだよな……。


(他に質問が無かったら次行くで?)

「……頼む」

(そんじゃ、次はスキルの等級の話やな)


 等級……ユニークスキルとかの区別のことかな?


(一般的なスキルは『コモンスキル』のことを言うんや。そんで『ユニークスキル』はちょっと特殊。まあ、上等なスキルってことや。他にもあるようなことを聞いた気がするけど、お目に掛かったこと無いし、分からんな……)


 コモンスキルは俺が大量に持ってるスキルか。

 ほとんどの生物が持ってるし、レア度は低い感じだな。


 それに対して、ユニークスキルはレア度が高いというのはよく分かる。

 たまーに持ってるのを見かけるぐらいだ。しかも、名前から強力な雰囲気が醸し出しだされている。

 ユニークスキルも『付与』できるみたいだけど、『付与』する制限もコモンよりも厳しい。

 いまだに『付与』するための同期率が足りないらしいのだ。

 

 しかし、他にも等級があるんだな。

 ユニークの上ってことかな?


 そう言えば、当たり前にスキルって言ってるけど、スキルって何だ?


「先生! スキルって、そもそも何ですか!?」

(は?)


 会議室は静寂に包まれた。


 俺はどうやら頓珍漢な発言をしてしまったようだ。俺に向けられる視線が突き刺さってくる。

 質問されたフロゲルは「質問の意味が分からない」と言いた気に俺を凝視している。


 俺の発言って、たまにこういうことあるよな……しかし、知らないものは知らないのだ。 


(哲学的な質問やな……神様に与えられた能力とも言われとるし、努力の結晶とも言える。皆、何かしらスキルを持っとるのが当たり前やし……難しい質問やで)

「すまん。ちょっと気になったんだ。ついでに聞きたいけど、皆は自分の持ってるスキルをどうやって知ったんだ? それにスキルの効果と使い方も当然のように知ってるみたいだけど……何で?」

(何や、子供でもせえへん質問してくるな。自分のスキルぐらい何となく分かるもんやろ? 習得した時も自然と気が付くし。使い方も、指を動かすのを人から教えてもらってないのと同じように分かるもんやで?)


 フロゲルの言葉に、コボルト達も同意を表すように頷いている。

 俺にとっては何一つ常識では無いのだが……。


〈マスターは特殊な方法でスキルを入手していることが原因です。自然に習得したスキルでないために、マスターは習熟に訓練が必要となります〉

支援者(システム)は?)

〈センスです〉


 ぐうの音も出ん……。


(取りあえず、こんなところでええかな? 皆も疲れが出てるようやし、今日の講義はこれでおしまいにしとこうか。スキルの実践は稽古の中でやったらええやろ)

「ああ、ありがとう。凄いためになったよ。明日も何か教えてくれよ」

(明日もか? ええよ、考えとくわ)


 フロゲルは快諾してくれた。

 何だかんだで、フロゲルって人に教えるのが好きみたいだな。


(じゃあ、明日も稽古の後やな。楽しみにしといてくれ)


 明日も地獄のしごきがあるのか……疲れない体とはいえ、精神的に応えるんだよ。

 ちょっと憂鬱になってきた……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ