表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/238

第22話 コボルトに安定した生活を

 

 宴の翌日から、俺達は行動を開始する。


 まずはコボルト達の生活を安定させるのだ。

 生活と言えば、衣・食・住である。


 衣については、コボルトは毛皮を着ているようなもんだし、大丈夫……かな?


 まあ、どうにかしようとしても材料も道具も無い。

 後にせざるをえない状況だ。


 というわけで、食について考えよう。

 食については色々手を打ってみたいのだが、料理よりも食糧の確保が優先だ。

 当面は俺の『収納』にある魔獣やらで何とかできるが、それに依存されても困る。

 俺だって『分解』してDPを工面せねばならんのだ。


 最初に打つ手としては、原始的に狩りをする。

 残念ながら森の中では虫ばっかりで、食用になる獲物が少ない。面倒だが平原まで出なければ、まともな獲物がいないのだ。

 普通に平原まで行こうとすると、スムーズに進んでも二日かかってしまう。往復すれば四日だ。

 どうにか良い方法が無いかと考えていると、支援者(システム)が妙案を授けてくれた。


〈同期の進行により、ダンジョンの入口を二つまで接続可能になりました。なお、以前接続した座標は記録されていますので、再接続可能です〉


 出ました、裏技! 支援者(システム)さん、タイミング良すぎです!


 何はともあれ、できるなら早速やってしまおう。


 再接続は、簡単に接続できた。

 情報を視界に表示すれば、後は選ぶだけで良かったのである。

 大広間にある森への入口のすぐ隣に、平原への道を作ったのだ。

 同じ部屋から、全く違う景色が見られる。不思議な光景だ。コボルト達は、誰もが二度見するので面白い。

 俺と一緒にいるってことは、こんなことが日常茶飯事となる。今は困惑していても、そのうち慣れるだろう。


 しかし、平原で狩りができるようになったのだが、コボルト達は平原に出るのは腰が引けるようだ。

 何でも、神龍の存在が恐ろしいことと、人間に捕まることを恐れているらしい。

 当然と言えば当然だろう。平原が安全であれば、とっくに平原で生活しているはずだ。

 仕方が無いので、平原での狩りは俺達が担当しよう。平原ならノアがお手の物だしな。


 次の手は採集だ。

 森には植物が豊富なのだ。勿論、食用の植物も生えている。

 コボルトの中には『植物学』や『菌類学』のスキル保持者もいるので、期待できそうだ。


 今まで食料に困っていたのは、魔獣の存在によるところが大きいらしい。

 食用の植物の近くには魔獣、特に魔虫がいることが多く、コボルト達はそれらを避けなければならなかったのだ。


 しかし、今は俺達がいる。

 コボルトに護衛として、コウガとコノアを同行させている。

 コウガは同族のブラッドウルフよりも強いので、大抵の魔獣には問題無く対応できるだろう。

 しかも、体が普通の狼よりも大きいのでコボルトが一人乗るぐらいなら大丈夫だ。普段から乗せるわけにはいかないが、逃走する時にはコウガに乗るように指示してある。

 コノアは戦闘力が低い分、『収納』で貢献できるし、全身が五感を再現できるので全周警戒も可能なのだ。体も小さいのでコウガに乗せても何の負荷にもならない。

 なので、コボルト一人、コウガ一体、コノア一体のチームで動いてもらっている。


 実際に動いてもらうと、初日から大量の木の実や茸が『収納』されていった。

 一日の成果を皆の前で取り出すと、喝采が起こる程なのだ。

 聞くと、ここまで採れたのは初めてだと言う。

 チーム編成は成功のようだ。


 ……狩りも採集も結局のところは自然の恵み頼りである。

 そこで着手したいのは、やはり農業だ。

 とは言っても、耕地や種子も無い。

 採集した中で種子として使えそうな物は試していきたいのだが、その前に耕地を整理しなければならない。


 耕地を整理するにあたり、住の改善も行なう。

 どちらかと言えば、住居の整理のついでに耕地の整理を行なうのだ。


 本当であれば、平原に集落のようなものを作りたかったのだが、コボルト達の事情を考慮して森の中に作ることとなった。

 今いる、巨岩のある場所だ。

 コボルト達が以前住んでいた場所に再び住む、という選択肢もあったのだが、魔獣が滞在している可能性が高いらしい。

 魔獣を退治しても良いのだが、マックスは今の場所が良いと言い出した。


 なんでも、俺のダンジョンのある岩から、微弱ながら霊素が出ているとのことだ。

 俺は全然分からなかったが、支援者(システム)も検知していると言っている。

 ノアやキバも感じるらしい。


 じゃあ、俺だけか、気付いてなかったのは。

 ……なんか悔しい。


 ともかく、霊素が出る岩の近くであれば、魔獣が寄り付きにくくなるそうだ。

 霊素が出ている理由は不明なのだが、マックスに聞くと各地にこういった物質が存在しているという。

 この岩は規模が小さいので誰にも知られていなかったようだが、規模の大きい物は周囲に人が集まるらしい。

 人間が作ったと言われるレーベンの壁は、この霊素を出す物質を用いられて魔獣の侵入を阻止しているとのことだ。

 それを考えると、この岩の存在を無視するわけにはいかない。

 引き続き、この地に居を構えた方が良さそうだ。


 この岩の周囲は、森としては開けている土地である。しかし、地面は起伏が激しく、雑草や剥き出しの岩で荒れている。

 当然、木々も密集しており建築に適した土地ではない。

 そこで、まずは開拓していかなければならない。


 ここで、またもコノアが活躍することになる。

 まずは、コノアが平原の時のように地面を掃除していく。

 木は流石にコノアでは処理できないので、俺やノア、キバで強引に伐採する。

 伐採した木は一旦、ダンジョンへ格納していった。

 加工するにしても、一度には加工できないので一旦『収納』するためだ。

 とにかく、まずは場所を開けることを優先したのだ。


 仕上げとして、合体したノアが地ならしをしていく。

 ノアの巨体と『変形』を使って、ロードローラーのように地面を平らにしていくのだ。

 短い時間で融合解除すれば、コノアの負担も小さく済むようなので、数日かけて整地する。

 すると、作業開始から一週間もしないうちにダンジョン周辺は平坦な更地となった。


 更地にする作業の間に、コボルトには別の作業を頼んでいた。

 伐採した木を木材に加工してもらう。

 満足な道具が無いので、どうなるか不安はあったものの、コボルト達は見事な木材を用意していた。

 そうなると、次は俺の出番である。


 コボルトが加工した木材を『分解』、『解析』する。

 あとは、『収納』された木を材料にして『分解』と『創造』していくのだ。


 最近になって思い出したのだが、俺の『分解』はDPにするだけでなく、素材にすることもできる。要は加減なのだ。

 一言で加減と言っても、目指す姿形がイメージできなければ成功しない。

 しかし今回、完成した見本が俺の中に情報として獲得できたので、『分解』でも『創造』どちらでも可能になった。


 単純な木材なら『分解』で事足りる。サイズを大きくしたりする時には『創造』を使う。

 俺自身、使い分けてるつもりも無いが、結果として最適なスキルを使用できているみたいだ。


 さて、材料があれば『木工』を持つコボルト達が主役になる。

 建築技術が無いのは残念だが、小屋ぐらいなら建てられる。

 力作業は俺の眷属にも手伝わせているので、次々と小屋が建っていく。


 小屋だけでは防御面に不安なので、集落を囲むように木の塀も建てた。

 ダンジョン入口の前に大通りを作り、塀の開口部は大通りからの道一本にしてある。余裕があれば、門を作りたいものだ。

 塀も2メートルを超える高さにしてあるので、飛び越えるのは簡単ではない。

 しかも格子状なので視界を妨げることもない。

 つい先日までとはまるで違う、堅牢な集落に仕上げた。


 住については、当面このぐらいで良いだろう。

 住人が増えるのであれば、さらに小屋なりを建てればいいのだ。更地はまだまだあるからな。

 建築技術を手に入れることができれば、建て直しも考えていきたい。


 しかし、発展していく光景というのは、たまらない充実感がある。

 やりがい、というものだろう。


 勿論、発展させるのはコボルトの集落だけではない。

 俺のダンジョンにも色々と手を加えているのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ