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第209話 新たな『創造』 準備段階


 ドゥマン平原ゴブリンの巣での決着から、かれこれ四日。

 あいつを生まれ変わらせる約束を、俺はいまだに果たせずにいた。その約束を果たす時が来たのだ。


「マスターの言う新たな眷属っていうのは、もしかして……」


 お? ビークが首を傾げて俺を見ている。とっくに察しは付いてるだろうに。


「ゴブリンロードだ。あいつを眷属として『創造』するんだよ」

「あー……やっぱりッスか」


 ほら、分かってるじゃねーか。

 しかし、何で難しい表情してるのかね? こいつは。


「マスター、ビークが気にしているのは種族のことでは?」

「なるほど。じゃあ、俺の言葉が足らなかったな。改めて言うと、ゴブリンロードを別の種族として生まれ変わらせてやるってことだ」

「はあ……それならまあ、分からないでもないッスね」


 やれやれといった様子で頷くビーク。

 俺だってゴブリンロードのまま『創造』したら面倒なことになるのは分かってるっての。


 ロードが付いてもゴブリンはゴブリン。集団で弱者を襲う、人間だけでなく獣人からも嫌われる存在だ。

 あいつがいくら人間よりの姿をしているからといっても、俺達と一緒に暮らすとなると周囲にどんな感情をもたらすのか想像も付かん。

 余計な軋轢を生むことだってあり得るのだ。それは避けたいところである。


「別に、あいつとは種族がどうのって約束まではしてなかったしな。俺もはじめからゴブリンとして『創造』する気はなかったよ」


 とは言っても、代替案までは決めてなかったけど。決まっていたのはゴブリン以外。それだけだった。


 いやはや、これにはなかなか悩まされたものだよ。

 なんたって一生に関わる問題なのだ。別の種族に生まれ変わらせるにしても、元とあまりにかけ離れた姿にするのも気が引ける。


 とはいえ、何か良い案あるのか? と言われると無いんだよなぁ……。


 俺の中のあいつのイメージは、単独で特殊個体(ユニーク)の魔獣を倒せる猛者。

 こんなこと皆の前では言えないけど、獣人にするには相応しくない気がする。何と言うか、もっとこう……強者のイメージがある種族にするべきというか……。


 そんな考えのせいで、俺は『創造』を実行に移せないままでいた。


 だがしかし、ついさっき一筋の光明が差したのだ。まさに『希望』によって。


「今ある情報を組み替えて、まったく新しい種族を『創造』する。ゴブリンロードの情報を書き換えて、ゴブリンじゃなくしてやれば良いって寸法だ。それで万事解決するだろ」


 最悪、見た目だけでもなんとか上出来だ。

 まだ試したことのない作業だけど、何も心配していない。何と言っても、今回は俺一人の作業じゃないからな。


「ボクもお手伝いさせてもらいます!」


 そう、ノアがいる。ノアと一緒なら何でもできそうな気がするのだ。

 だから大丈夫。うまくいくと確信している。


「そんなわけで、俺は今からノアと一緒に作業を開始する。まあ、(コア)の世界での作業だから、ビークは見てても面白くないと思うぞ? 俺達は寝てるようなもんだし。何なら、見張りでもしててもらえるとありがたいかな」

「えー……そんな面白そうなことを二人だけでするんスか。自分も付いていきたいッスよ。魔改造するとこ見たいッス」

「魔改造って、遊びじゃないんだぞ。それに、お前を連れて行こうにも方法が無いだろ。方法があるなら構わないけど」

「マスター……そんなこと言うとビークは」

「言ったッスね! 駄目でもともと、やるだけやってやるッス!」


 あー……いらんこと言ったかな。

 こいつならやりかねん。っていうかやるだろう。多分、おそらく、ほぼほぼ、確実に。


 まあ、良いか。


「そんじゃ、ノア。行くか」

「はい!」


 ノアの返事を受けて、俺は(コア)の世界に意識を移した。


 ……


 (コア)の世界はいつものように真っ白な世界が広がっている。

 いつもと違うのは、すぐ側にノアが……いる?


「あれ? ノアの姿がスライムのまま?」

「はい。マスターが判別しやすいように外の世界の姿を取っています。勝手ながら、マスターもクーシーの姿にさせていただきました」


 おお、本当だ。

 よく見れば手足がある。今の俺はクーシーの姿のままで宙を漂っているような状態か。


 まあ、複数人で(コア)の世界にいる場合はこっちの方が都合が良さそうだしな。今後もこれで行こう。


「で、やっぱりいるんだな。お前」


 自分の姿を確認していると、案の上、視界の端にビークがいた。外の世界と同じく、オウルベアの姿のままで。

 

「そりゃあもう、イメージはできてるッスからね。『次元力操作』で意識をマスターに同調させる。それだけッス」


 そんな簡単にできるものなのかよ。


「マスター、それよりも……」

「ああ、そうだった。早速始めようか」


 ビークは放っておくとして、俺はゴブリンロードの情報を視界内に表示した。ついでとして、参考用に平ゴブリンの情報も。下位種と上位種の違いを確認するためにだ。


 ……ふぅむ、なるほど。ゴブリンロードは、ゴブリンを限界まで強化したってところか。比較してみるとよく分かる。


 興味深いのは、人の手が加えられたように見えないところだな。ゴブリンが自然にロードまで進化する道筋も見て取れるのだ。

 ただ、そこに至るまでは奇跡に近い道のりがあるみたいだけど。


 さて、比較してはっきりしたのが、ゴブリンとしての核になっている部分。ここをうまくいじれば、能力等々への影響を抑えつつ、別の種族に変化させることができるはず。


 ……とはいっても、何をどういじれば良いのやら。


「核となっている情報を、可能な限り『分解』してみてはどうでしょうか? 何か見えるかもしれません」

「うーん……そうだな。ものは試し。そこからやってみるか」


 ゴブリンの核を『分解』する。構成されている情報が少ないので、事は一瞬で完了した。


 こうやって情報レベルでみると、本当にスキルと大差無いな。特に、ベースとなっている部分に別の因子がくっついてるところが……ん?


「マスター、これって」

「ノアも気が付いたか。こいつら……元は人間だ」



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