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第19話 新しい力

 

 ゴブリンとの戦いを終えて……。


 ダンジョンの周りはゴブリンの死体だらけだ。

 コボルト達も、この有様では休むこともままならない。

 仕方無いか、片付くまではダンジョンで休ませてやろう。

 多少狭いかもしれないが、そこは我慢してもらう。


(マックス、流石に外じゃ休めないだろ? 中で休んでくれて良いぞ。ただ、コノアにちょっかい出すなよ。あいつも疲れてるからな)

「いや、流石にそこまで世話になるわけにはいかない。ゴブリンの始末もせねば……」


 言うと思った。

 けど、その顔は疲労の色が濃い。

 当然だ。一晩戦い続けたのだ。疲れないわけが無い。


 マックスは遠慮しているが、他のコボルト達が気の毒なので、半ば無理矢理休ませることにした。

 コボルト達がダンジョンに入ったところで、俺達は作業を開始する。


 外で転がっているゴブリンの死体をノアに『収納』してもらうのだ。

 キバ達は『収納』できないので、ノアのところまで運ぶように指示した。

 コノアも動ければ効率が上がるのだが、今のコノアは合体の影響で身動きが取れない。ノアには悪いが、その分頑張ってもらうしかない。


 そんなノアは、次々とゴブリンを『収納』していく。

 結局のところ、ゴブリンが314体、ホブゴブリンが12体だった。

 五十人程度のコボルトを攻めるのに、やりすぎだろ、こいつら。

 まあ、返り討ちにしてやったが。


 その戦果がこれだ。



獲得DP:18700

獲得スキル:夜目、悪食、統率、剣術、棍術、囮、毒耐性、火魔術、痛覚鈍化、遠視、逃走強化



 流石に数が多い分、DPが一気に増えた。

 数の割に少ない気もするが、ゴブリンが弱いからか? 

 スキルの方は思ってたよりも豊富で驚いた。

 共通しているものもあれば、その個体しか持っていないスキルがあったのだ。

 まあ、手に入ったなら何でも良いや。


 昼には作業も終わり、周りにはゴブリン襲撃の痕跡は無くなっていた。

 コボルト達は余程疲れていたのか、まだ誰も起きてこない。


 次は何をしておくか……。


〈同期率が20%に達しました。(コア)の処理能力が向上しています〉


 うおっ! ビックリした。そうか、同期のことをすっかり忘れてた。

 今回のゴブリンの件で一気に同期が進んだようだ。


支援者(システム)、具体的には何ができるようになったんだ?)

〈ダンジョンの容量が増えました。加えて、『付与』によって眷属を進化させることができるようになりました〉


 ダンジョンの容量か……。

 ちょっと、ダンジョンのステータスを――



名称:なし、自称:マスター

種族:不定形、ダンジョン

(コア)耐久力:20000 DP:18934 同期率:21% 階層:1/2 部屋:2/5

スキル:生成、収納、分解、解析、鑑定、創造、付与、思念波、土魔術、夜目、火事場、物理耐性、再生

ユニークスキル:同期、化身

加護:女神の加護



 階層と部屋が増えてる! 何気に(コア)の耐久力も増えてるし、良いことだらけだ。

 それと、『付与』で進化?


(どうやれば、進化させれるんだ?)

〈イメージです〉


 ですよねー。俺のスキルは結局イメージありき、なんだよな。

 まあ、支援者(システム)が、できるって言うならできるんだろう。

 じゃあ、誰を進化させるか?


 ――ノアだろ。


(ノア、ちょっと良いか?)

「はい、何ですか? マスター」


 作業を終え、側に控えていたノアに声を掛けた。


 最初の眷属であり、家族だ。

 今まで俺が無事にいられたのもノアのおかげだ。


(俺は進化を『付与』できるようになったんだ。ノアに進化してもらうつもりだけど、それで良いか?)

「マスターのためにもっと強くなれるなら、是非お願いします!」


 俺のために、か。

 ノア達は少しは自分のために生きてもらいたいんだけど、それが望みなら俺がどうこう言うことじゃないな。


 よし! 進化を『付与』するイメージ……。


 イメージを始めるとノアに青白い光が集まっていく。

 光が全身を包むと、程なくして光は霧散していった。


 ……成功、か?


 しかし、残されたノアに変化は見られない。


 あ、あれ? 確かにDPは減ったんだけど……。


「マスター! ありがとうございます! 進化できました!」


 成功してんの? ノア自身がそう言ってるんだしな……。

 『鑑定』すれば、何か分かるか。



名称:ノア

種族:不定形・粘性、マジックスライム

称号:特殊個体(ユニーク)名付き(ネームド)、ダンジョンの眷属

生命力:161 筋力:153 体力:180 魔力:261 知性:167 敏捷:103 器用:159

スキル:収納、擬態、物理耐性、痛覚無効、再生、分裂、危険察知、火事場、気配察知、麻痺液

ユニークスキル:魔力放出



 中身が全然変わってた。

 マジックスライム? 種族が変わったんだな。

 能力の上昇は、当然と言えば当然なんだけど……『魔力放出』って何だ?


(ノア、『魔力放出』って使えそうか?)

「はい! ご覧にいれましょうか?」

(頼む)


 俺が返事をすると、ノアに変化が起きた。

 体に纏っていた青白い光が、一点に集約され始めたのだ。

 集約された光が玉の形になった瞬間――


「いきます!」


 ノアから青白い光の玉が放たれた。

 光の玉は真っ直ぐに進み、正面に位置する木へと向かっていく。

 その速度はなかなか早い。俺のストーンバレットと良い勝負かもしれない。

 光の玉は木に命中し、その幹に穴を穿っていた。

 バランスを保てなくなった木は、メキメキと音を立てて倒れていく。

 威力も申し分無さそうだ。


(凄いな、ノアも遠距離攻撃ができるようになったか)

「全て、マスターのおかげです!」


 ノアは俺を何だと思っているんだ。


「マスター殿、今の音は?」


 おっと、マックスが木の倒れる音で起きてしまった。

 何人かのコボルトも、後から付いてきている。


「今のは木の倒れる音だったのか。む! マスター殿、ゴブリンの死体はどうしたのだ?」

(ああ、邪魔なんで片付けといた)

「あの量を? この短時間で?」


 今、説明するのは面倒だな。

 とはいっても、そのうち説明するつもりもあるんだし……。

 こういう時は、アレだ!


(マックス、説明は後でする。それよりも腹減ってないか?)

「む? 確かに空腹ではあるが――」

(よっしゃ! 宴と洒落込もうぜ!)


 マックスの返事を待たずに、俺はダンジョンに入っていった。

 後ろからマックスが何か言ってるが、気にしない。


 中に入ると、ほとんどのコボルトが起きていた。

 俺に気付くと姿勢を正して向き直してくる。

 いつの間に俺はそんなに偉くなったのか。


(楽にしてくれ、今から宴でも開きたいんだけどな。残念ながら、俺は料理ができん。誰か手伝ってくれ)

「マスターさん、今から狩りに行くんですか?」


 ココだ。俺に慣れているから、代表して質問しているようだ。

 ココの質問に何人かが頷いている。


(ココ、俺を誰だと思ってやがる。こんなこともあろうかと……)


 俺は目の前に『収納』していた平原の獲物を取り出した。

 何も無かった空間に山積みされた食糧を見て、その場の誰もが目を見開き唖然としている。


 素晴らしい、これは癖になりそう。


(コボルトが何を食べるか分からなかったから、色々用意した。まあ、狩ったのはノアなんだけどな)


 そうなのだ。

 俺がここに来る二日間で、ノアに狩りをしてもらっていた。

 ちなみに、全部出したわけではない。

 全部出したら大広間がとんでもないことになる。

 それでも、コボルト達を驚愕させるには十分な量だ。


(で、誰か料理してくれないか?)


 ……


 ダンジョンの前では、かがり火が焚かれている。

 昨日は火を使ってなかったから、コボルトは火が嫌いなのかと思ったが、別段そういうわけじゃないらしい。

 虫が寄ってくるのが嫌なだけだという。

 確かに、目が見えて寒くなければ火が無くても良いのか?


 ともかく、今はかがり火の前で大量の肉を焼いている。

 料理をするにしても調理場も無いのだ。

 獲物を下処理した後は、ひたすら焼くのみだ。

 勿論、調味料など無い……と思っていたのだが、ココが香草を用意していた。

 確かに『植物学』なんてスキルを持っていたな。

 ココって意外と優秀なのかもしれない。


 コボルト達は飲み水にも困っているようだったので、ダンジョンの水を与えてやることにした。俺からすれば、水など幾らでもある。

 自由に飲んで良いと言ったら、水場が干上がる勢いで飲み尽くされたが、目の前で再び水を『創造』してあげたら、声を上げて喜んでくれた。

 こんなに喜んでくれたら、悪い気はしない。


「マスター殿、焼けたようだ。さあ、召し上がってくれ」


 俺の目の前に、こんがり焼かれたホーンラビットの肉が置かれた。

 皿の代わりに木の葉を使っているが、反って趣を感じさせる。

 肉の表面には、臭み消しだろうか? 香草のような物が散らされている。


 ……めちゃくちゃ良い匂いだ。

 火の通った食事は転生して以来だからか、目が釘付けになってしまう。

 ? 皆がこっちを見ている……。


(どうした? お前らも食えよ)

「マスター殿、この場の最上位者はマスター殿なのだ。マスター殿に召し上がってもらわねば、誰も口をつけられぬ」


 そういうもんか?

 うーん……俺待ちってことだったら、待たせても悪いな。

 いただきます!


 ……


 ……うおおお!! うんま!!

 肉だ! マジで肉だ!

 兎の肉なんて食べたこと無かったけど、こんなに美味いのか!?

 調味料が無くても、イケる! 全然イケる!

 悔しいことに、この香草がまた良い仕事してやがる!

 くそう……ココめ、やるではないか。


 俺が肉を食べ始めたのを皮切りに宴が始まった。

 マックスが何か口上を垂れているが、それどころではない。

 肉が美味すぎる!


「気に入ってもらえて何よりだ、と言っても、マスター殿が用意してくれた肉なのだがな」

(いや、俺は料理ができんからな、助かる。久々にまともな料理を食べたよ)

「ほう、以前は料理を食べれる環境にいたのだな」


 おっと、口が滑ったかな?

 さて、どうしようか……。

 転生したことを話してもいいんだけど、ココの話だとコボルトは人間に迫害を受けている可能性がある。

 上手くぼかして説明するとしようか。


「マスターさんは蜜しか食べないって言ってたけど、肉も食べるんですね」

「蜜……そう言えば、あの大量の蜜はどうやって手に入れたのだ?」


 ココの乱入で話が入れ替わった。グッジョブかな?


(ああ、ココにも言ったけど、あの蜜は平原のシロップアントが集めたものだ)

「シロップアント? そんな魔獣がいたのだな」

(魔獣じゃなくて、ただの虫だよ)

「魔獣でない、ただの虫か……」


 何だ? マックスが考え込みだしたぞ。


(なあ、マックス、そう言えば、ただの獣と魔獣って何が違うんだ?)


 ちょうどいい、俺の疑問に答えてもらうとしよう。



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