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第16話 ゴブリン迎撃 準備

アクセス数が急に増えてビックリしました。

読んでくださっている方、本当に感謝です!

 

「マスターさん……。どうして――」

「ココ! 言うな! これは我々の問題なのだ。食糧を分けてもらったばかりか、未来まで託すなど虫の良すぎる話だ。マスター殿を咎められるはずがなかろう」


 マックス、ココ、そうじゃないぞ。

 俺は決めた。コボルトを救うんだ。


(二人とも、勘違いするなよ。俺は、お前達を死なせたくないんだ。)

「マスター殿、それはどういう意味か……?」

(ゴブリンが襲って来るまで、どのぐらい時間がありそうだ?)

「……奴らが、ホブゴブリンに率いられていると考えると、深夜だな」

(深夜か、あまり時間は無いな)

「何をするつもりだ?」

(俺も腹を括るってことだ)


 俺は巨大な岩の前まで歩みを進めた。

 岩はコボルト達の集まる場所の中心に聳え立っており、周囲にはゴブリンの襲来の話を聞いた者達が不安気に身を寄せ合っていた。

 俺が近付くと、察してくれたのだろうか、道を開けてくれた。

 どうやら、マックスが俺を上位の存在と言ったことや、食糧を分け与えたことで、俺を敬意の対象と見なしてくれているようだ。

 今はその方がやりやすい。


(えっ……と、支援者(システム)、ここに入口を接続できるか?)

〈了解、以降は意思決定支援システムを支援者(システム)と呼称。入口の接続は問題ありません〉


 良かった。支援者(システム)って勝手に省略してたけど、受け入れてくれたようだ。

 それよりも、接続してみるか……。


 目の前の岩に入口をイメージ……。


 ……


 よし、俺のダンジョンに繋がった。

 ノア達が居るのは、先に確認済みだ。俺に気付いて近付いて来る。


「マスター? これは一体?」

(ごめん、ノア……先に謝っておく。また、お前達に無茶をさせてしまうことになった)

「マスター、謝罪は必要ありません! ボク達はマスターの望みのままに働きます!」


 ノアはいつもどおりだ。申し訳無いと同時に、ありがたくもある。


「えっ? ノアさん?」

「マスター殿、これは一体どういうことだ?」


 当然、気付くだろうな。周りにいたコボルト達も、ざわついてきたんだし。

 説明している暇は無いんだけど……。


(マックス、俺を信じる気はあるか?)

「マスター殿……我々を見捨てないでくれるのだな? ならば信じよう」


 よし、マックスが俺を信じてくれるなら話は早い。


(詳しい説明は、無事に済んだ後だ。俺の指示に従ってくれ)

「心得た!」


 ……


 ここからは時間との勝負だ。

 ゴブリンの襲撃は深夜、もしかしたら前後するかもしれない。

 襲って来ない可能性もある。

 しかし、希望的観測など生命の危機の前では愚行でしかない。

 コボルト達は、一縷の望みをかけて行動を開始している。

 会ったばかりの俺に賭けてくれたのだ。

 やるしかない。


 まずは、戦闘員の把握だ。


(マックス、戦えるのは何人だ?)

「……二十人。怪我人と子供、戦闘経験の無い者は数に入れていない」

(そうか、戦えない者はこの穴に避難するように指示してくれ)


 なるほど、二十人か……。


(武器は? 防具もあるのか?)

「全員に持たせる武器や防具は無い。まともなものは、この一式ぐらいだ」


 外では見えなかったが、マックスは装備に身を包んでいた。

 今は夜光草の明かりで、朧気ながら見ることができる。

 マックスは革の鎧で身を包み、腰には鉄製のショートソードを差していた。

 革の鎧といっても籠手や脛当ても身に付け、軽装ながらも防御力は高そうだ。


(すまんが、その装備を貸してくれ。勿論、すぐ返す)

「む? ……分かった」


 マックスも一瞬戸惑ったが、俺を信じているのだろう、装備を外して目の前に置いてくれた。

 俺はそれを『収納』し『分解』、『解析』する。

 時間にして一秒にも満たない。

 そして、すぐに『創造』した。二十人分だ。


「マ、マスター殿、これは一体……?」


 理解できるはずは無いだろう。

 自分がさっきまで身に付けていた装備が目の前で消えたと思ったら、次の瞬間には増えているのだ。


(さあ、さっさと装備してくれ。体型の差までは保証できんけどな?)


 納得はできていなくても、何をするべきかは分かっているようだ。

 周りでは戦士達が装備を手に取り、戦えない者達は避難を始めている。

 

 この間にするのは情報の共有だ。

 ノア達にも状況を説明しておかなければ。


(ノア、間もなくゴブリンが攻めてくる。ゴブリンは敵だ。コボルトは味方だからな。間違えて攻撃するなよ? コノアもだ)

「分かりました! マスター!」

「ター!」


 そんなやり取りを、コボルト達が見ている。

 ノアやコノアを見て驚いているが、マックスとココが行動するように促してくれている。

 ダンジョンに入れと言われた時も多くのコボルトが戸惑っていたが、ココが大丈夫と言うと皆が従ってくれていた。

 ココって意外と信頼されているのかもしれない。少し見直した。


(ところで、ノア達は暗闇の中でも見えるのか?)

「視覚以外の感覚を使っていれば、特に問題はありません!」

「マセン!」


 簡単に言ってるけど、それって凄いんじゃないのか?

 まあ、問題が無ければ良いか……。じゃあ、俺だけか? 見えないのは。


「ゴブリンも夜目が利く」

 

 装備を終えたマックスが俺の疑問に答えてくれた。


(ゴブリンも『夜目』のスキルを持っているのか?)

「そこまでは分からない。しかし、それか、その代わりになるものを持っている可能性は高い」


 なるほど、まあ、深夜に襲撃するぐらいだ。暗闇の中で自由に動けるはずだ。

 そうなると、スキルを持っていると考えて良いだろう。

 そのスキルがあれば、俺もハンデが減るんだけど……。


(どうにか、一体でも『解析』できればな……)


 俺は、つい呟いてしまったようだ。


「マスター、それでは、ボクが『収納』してきましょうか?」


 おっと、ノアに聞こえていたか。

 そうして欲しいが、状況に不明な点が多すぎる。

 今は自重してもらわなければ。


(ノア、申し出はありがたいけどな、敵の数も分からないんだ。お前を突撃させるわけにはいかん)

「そうですか……。数はどのぐらいか、予想できるんでしょうか?」

(さあ? 五十ぐらいじゃないのか?)


 マックスを見ると首を横に振っている。


「最低でも百体は超えるだろう」


 何? ここを襲うのに、そんなに来るのか?

 マックスは何か根拠があるんだろう、言葉に迷いは無い。


「……奴らがホブゴブリンに率いられている。つまりは統制が執れている。

 ホブゴブリンの恐ろしいところは、知恵があることなのだ。姑息なことに、勝てる戦いしかしようとしない。おそらく、ここの人数などは既に知られているだろう。」

(……人数が分かっているなら、それ以上の数で、か)

「そういうことだ。しかも、奴らは自分達が一体一体は大した戦闘力でないことを理解している。その分、数も多くなるだろう」

(ゴブリンだけだったら?)

「ホブゴブリンがいなければ烏合の衆だ。頭を無くせば、どうにかなるかもしれないが……ホブゴブリンは、前に出てこないのだ」


 自分は安全な所にいて、あとは手下にやらせるのか。

 指揮官としては至極真っ当だな。

 頭だけを潰す……できなくもないが、それ一つしか策を考えないのは危険だな。

 罠を仕掛ける時間は……無いだろうな。

 ダンジョンの中なら時間は掛からない。入口の側に落とし穴でも効果はありそうだが……。

 それは、追い詰められたら、だ。

 後出しジャンケンはこっちが有利なのだ。対策をその場で実行できるからな。

 

 情報を絞っていくか。


(マックス、ホブゴブリンは必ず一体か? 戦ったことのある者は?)

「私は過去に戦ったことがある。その時は二体いた。それを考えると今回は四体以上いるかもしれない」


 うん、先に聞いといて良かった。


(どういう戦い方をしてくる? 飛び道具は使うのか?)

「数は多くないが中には、いる。弓を使ったり、スリングを使う者もいた」

(ううむ……。こっちは、弓矢はあるのか? 使える奴はいるのか?)

「狩りに使う程度の簡素なものだがな、大体皆使える」


 どうやら、既に用意してあるようだ。

 装備を終えたコボルト達は各々の弓を肩に掛けている。

 自分達の戦いという覚悟はあるようだ。士気は高い。

 先程までは、未来に命を繋ぐという、どこか悲壮感の漂う面持ちであったが、今では勝って生き残るという、生に渇望する意思が見えている。

 コボルト達の目は力強い。

 戦えない達もまた、戦士達の無事を信じて疑わないようだ。


 そうだった。これはコボルト達の戦いなんだ。

 何でもかんでも、俺が考えることじゃないんだ。


「マスター殿には感謝している。食糧のことだけではない、生き残る可能性まで与えてくれたのだ。

 だが、これは我々の戦いだ、我々が死力を尽くさねばならん。マスター殿だけに死線を潜らせるつもりなど無い」


 マックスの言葉に他のコボルト達も一様に頷いている。


 こいつら、強いな。心が強い。


(お前達は劣等種族じゃない、俺が保証する)



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