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第126話 立ち塞がる関門 可能性


「何スか、これ?」


 青白い光に包まれながら、ビークは怪訝な表情を浮かべている。

 なんてことはない。光の正体は俺の『次元力操作』によるものだ。


 ビークが無理をする理由は分からん。

 しかし、するなと言ってもするだろう。ノアやキバもそうだった。


 じゃあ、俺がするべきことは制止ではなく、無理しても大丈夫なように配慮してやることかもしれない。

 そう考えた俺は、『次元力操作』を使ってビークを回復してやることにした。


 当のビークは、自分が何をされているのか分からず戸惑っているようだけどな。


「詳しい説明は省くけど、DPを回復に使う裏技みたいなもんだ。回復してる実感あるだろ?」

「回復能力まで身に付けてたッスか。でも、これは……ううん……」


 気にいらない……というよりも何か気になってるのか?


 ともあれ、ビークの思案が纏まるよりも先に回復が済んだようだ。

 まあ、外傷らしい外傷は無いしな。傷が無い方が次元力による回復が早いということだろう。


「まさか、最後のピースをこのタイミングで見つけることになるとは思わなかったッスね」

「考え事は終わったのか? 最後のピースってのがよく分からんが」

「うーん……上手く言えないッスけど、自分に足りないものが何か分かったってところッスかね?」


 なるほど、分からん。


「まあ、マスターが分からんのも無理ないッスよ。自分も理屈じゃ分からんスもん。でも確信してるッス。自分に足らないものは、今のやつってことはッスね」

「今のやつ……『次元力操作』のことか?」

「そうッス! せっかくなんで、自分の考えをマスターに聞いてもらいたいと思うッス」


 まあ、ここまで焦らされたんだ。一応、聞くには聞いてみるが……。


「自分達はマスターの『創造』で生み出された眷属ッス。『創造』はマスターのDPとかいう力が素になってて、自分達の体も元を正せばDPでできてるはずッス。んで、今のマスターの『次元力操作』もDP、つまり同じものってことッスね。んー……考えてみたら、『生成』もDP使ってるんじゃないッスか?」


 おお……俺が説明していないことも自力で理解してる。

 こいつ、意外と賢いのか?


「凄いな。全部正解だ。同じDPだから回復に使えるんじゃないかって思って、さっきみたいなことをしたんだ。ちなみに他のスキルも、俺の場合は全部DPを元にしてるぞ」

「なら自分の仮説もいけそうな気がするッスね。結論を言うと、自分に足りないもの。それはDPだったッス! DPさえあれば、自分も何か変身みたいなやつができそうな気がするんスよ!」

「変身ってお前……『筋肥大』も変身みたいなもんだろ?」

「違うッスね。どちらかと言えば……そう! 進化ッス!」


 進化? 進化って自力でできるものなのか?


 ……いや、できるだろうな。コボルトが自力で進化してた話はフロゲルから聞いてるし、天然の魔獣が進化することだってあるかもしれない。

 進化が俺の『付与』に限るものじゃないことは、当然と言えば当然のことだ。


「前にノアとキバが進化した時も、二人は光に包まれたッス。あれってDPッスよね? 今のもDPなら同じものッス。だから自分もやってみるッスよ!」

「興奮してるところ悪いけど、あれは俺の『付与』によるものだぞ? 今の『次元力操作』とは別物だ」

「いーや、大丈夫ッス。感覚ッスけど、今の光があれば自分も進化できるッスよ!」


 こいつの自信が何処から来てるのかさっぱりだが、進化か……。


 もしもこいつの言うとおりだとしたら、DPの可能性はまだ先があるかもしれない。 

 俺の力のもっと奥底を知る切っ掛けになるなら……ビークの試みはやらせる価値がありそうだ。


「分かった。じゃあ、俺がお前に――」

「それには及ばないッス! 自分、マスターにもらった『生成』で多分できるッス!」


 ビークは俺の言葉を遮って、自信満々の表情で言い切った。

 『生成』で『次元力操作』の代用なんかできるわけがない。俺がそう思っていた矢先に――


「おおお……! 来たッス! これッスよ!」


 ビークの周りに光が集まっていく。


 もしかして、こいつはダンジョンのDPを『生成』で集めているのか!?


〈肯定。かなり変則的な使用法ですが不可能ではありません〉


 『生成』もDPを素にしてダンジョンを変化させるもの。

 俺の『次元力操作』でDPを直接受けたばかりのビークは、DPがどういうものか体で分かっている。ものが分かっていればDPを『生成』することもできるかもしれない。現にビークは俺の目の前でそれをやっていた。


 こいつの『生成』の使い方だけでも、俺には興味深いものがあるな。


 とはいえ、DPを集めるだけで進化できるなら苦労しないだろう。

 光は集まるだけで、ビークの体には変化が起きる兆しが見当たらない。


「くう……DPが体に馴染まんッス! 取り込めればいけそうなのに……!」


 そうなのだ。俺の『次元力操作』は、相手の体を構成する情報が分かっているが故に簡単に馴染ませられる。ただDPを集めただけのビークには、DPを吸収する術が無いのだ。


 こうなってくると、ぼちぼち俺が助け舟を出して良い頃合いかもしれない。俺ならDPを半ば強制的に吸収させることも可能だからな。そこから先はビーク次第で――


「ビーク! 貴様もマスターの眷属ならば、与えられた力を自分のものにしてみせろ!」

「うおっ!」


 いきなり真後ろから響いた怒鳴り声にビックリしてしまった……!


 驚いた拍子に振り返ると、そこにはキバがいた。ノアとコノア達もいる。

 目覚めたキバと共に、ビークの部屋に入ってきたようだ。


「キバ、お前何ともないのか?」

「心配お掛けしました。しかし、今は我よりもビークを!」


 『僕』じゃなくて『我』か、いつもどおりのキバで一安心だ……っと、確かに今はビークのことだな。


 俺は再びビークに目を向けるが、事態は進展していない。

 それどころか、ビークに疲労の色が見え始めていた。


 「はは……そのセリフ。言われる方は堪らんッスね。うくく……DPを制御するコツは『生成』で掴んだつもりなのに、まだ足らんッスか……!」


 これ以上はビークが持たん。

 俺は一旦DPを収めようとしたところで、今度はノアがビークに声を掛けていた。


「ビークは何になろうとしてるの!? なりたい自分をしっかりイメージして! そうすれば次元力が……マスターの力がビークを支えてくれるから!」

「なりたい自分ッスか……確かにイメージできてないッスね……! なりたい姿、なりたい自分になる……そうか、分かったッス! 次元力を扱う方法が!」


 何かを掴んだビークは、より一層DPを体に集中させていく。

 もはや、光に遮られてビークの体は見えていない。完全にDPが……次元力がビークを包み込んでいた。


「キバ、ノア、ありがとうッス。おかげで掴めたッスよ。次元力ってこういう力なんスね。凄い力ッス……!」

「お前、制御できてるのか?」


 聞くまでも無い。ビークは次元力を制御できている。

 さきほどまでと打って変わって、ビークに苦痛を感じている様子は見られない。


 それに、俺にはDPの変動が感覚として分かる。ビークに向かって、ゆるやかにDPが流れていくように感じるのだ。


「ああ、今思えば最も参考になるのが目の前にいたッスね。マスターもDPで姿形を変えてたッス」


 俺? ……なるほど、『化身(アバター)』か。

 言われてみれば俺の『化身(アバター)』なんか、変身って言っても差し支えないものだ。DPを使って全く違うものになっている。


「お前の言うとおりだけど、これも自由自在じゃないんだぞ。ある程度は制限がある。それこそ、確固たるイメージがないと――」

「だからイメージさえあれば、この力は何でもできるッスよ!!」


 そう言うや否や、ビークは眩いばかりの閃光を放ち出した。


 直視するには強すぎる光。しかし、それも数秒ほどで収まりを見せている。

 今までビークがいた場所には、オウルベアではない存在が佇んでいた。


 

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