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第111話 同期率40%


「これは……凄まじいものだな」


 感嘆の声を上げているのは領主だ。

 何に領主が驚いているのかと言うと……。


「マスター、すぐ終わらせます!」

「マス!」


 ノアとコノアが屋敷の裏庭を片付けている様子に、だ。


 領主との話でダンジョンを裏庭に接続すると決めたものの、当の裏庭に来てみるとコテツが吹っ飛ばした屋敷の瓦礫や魔獣の死骸が散乱してひどい有様だった。

 そこで領主に提案して、ノアとコノアに片付けをしてもらうことにした。


 カラカルに魔獣を送り込まない件? 屋敷の敷地内ならグレーゾーンだろ。

 領主の許可も得ているし、人払いだって済んでいる。

 一応、領主に足を運んでもらったところで、先程の言葉が出たというわけなのだ。


 ノアは基本的にダンジョンに残っているので、こういった要件でもすぐに対応してくれる。

 コノアはコボルト達と採集の出掛けたりしていることが多く、今も三体ほどしか作業に参加していないが、それでも十分だ。

 領主ではないが、俺も目を見張るほどの速度で戦場の残骸を『収納』してくれていた。


 この景色を見ていると、平原で駆け回っていた頃を思い出して何処か懐かしい気持ちになってくるな。


「ふむ、君の提案に乗って正解だったかもしれんな。人の手ではここまでスムーズに作業は進むまい。しかし、あの者達は本当にスライムなのか? 私が知るスライムとは似ても似つかん」

「特別なスライムですから。大きい方がノアで、小さい方がコノアって言います」

「ほう、名前もあるのだな」

「アル!」


 と、一体のコノアが俺と領主の下に転がってきた。

 何やら『収納』から取り出したみたいだけど……。


「これは……私のペンダントだ」

「領主様の? コノア、凄いじゃないか、よく分かったな!」

「スゴイ!」


 褒められて嬉しいのか、ピョンと飛び跳ねたコノアは再び作業に戻っていった。


 いや、本当によく分かったな。

 変わったものを見つけたら俺の方で確認して領主に引き渡すつもりだったんだけど、ペンダントだけは先に渡しに来たということが驚きだ。

 実際、他の執務室の物については何の反応も無く、『収納』に収めまくっている。

 ペンダントだけ何か感じるものがあったのかもしれないな。


「これは友人からもらった物なのだ。件の騒動の折に失くしたと思っていたが、こんなところに落ちていたとは……」


 そう言う領主の顔には安堵の色が浮かんでいる。

 よほど大事なもののようだ。


「ふむ……コノアと言ったか。初めて会う気がしないのは不思議で仕方が無い」

「えっ?」

「フフ、まあ気のせいだろう。あのような可愛らしいスライムに会っていたら、忘れるわけがないだろうしな」

「カワイー!」


 今のは聞こえてたのか。たまーに俺のこと無視するのにな……。


 ともあれ、作業を開始してから一時間もしてないうちに、裏庭の片付けは終わりを迎えた。

 裏庭はすっかり元の姿に……とはいかないが、かなり見栄えが整ったと思う。


 そして当初の目的であったダンジョンの入口も、裏庭に面する屋敷の壁に繋げさせてもらうこととなった。


「こうやって見ると流石に目立つな」


 領主の言葉ももっともだ。


「取りあえず、扉を付けておきましょうか」


 俺も入口に扉を『創造』するのは初めてだが、やってみるものだ。

 イメージどおりの重厚な木製の扉が、ダンジョンを物々しい雰囲気へと変えてくれた。

 これなら、不用意に入り込もうと考える奴はいないだろう。


「……便利なものだな」


 驚きを通り越して呆れられたようだ。

 そう言われても、便利なんだから仕方が無い。


「それではこれで一旦戻ります。ノアとコノアも帰るぞ」

「はい!」

「カエル!」

「君達もありがとう、本当に助かったよ。今は無理だが、また来てもらえると私も嬉しく思う」


 この様子だと、領主はノア達を気に入ってくれたのかな?

 案外、俺の仲間が受け入れられる日も、そう遠くないのかもしれないな。


 さあて、それじゃあ帰るとしましょうかね!


 ……


 ダンジョンに戻った俺は、ノア達と別れて(コア)ルームへと移動した。

 当然ながら、そこには新しい補助核(サポートデバイス)(コア)の周囲を浮遊している。

 化身(アバター)を通して見る紫の補助核(サポートデバイス)は、不思議な存在感を放っていた。


 これ、本当に俺が『創造』したんだよな……。

 苦労した分、より一層感慨深い。


〈マスター、眺めていても仕方がありません。同期率の上昇も含めて諸々の確認をお願いします〉

(そうだな、じゃあ同期率からいってみるか)


 てなわけで、自分自身のステータスを確認してみる……。



名称:なし、自称:マスター

種族:不定形、ダンジョン

称号:狗頭人(コボルト)の守護者、蝦蟇人(トードマン)の理解者

(コア)耐久力:40000 DP:86719 同期率:45% 階層:3/4 部屋:6/20 門:5/10

スキル:生成、収納、解析、鑑定、創造、付与、思念波、痛覚無効、再生、物理耐性、遠視、剣術、危険察知、気配察知、土魔術、滑走

ユニークスキル:同期、化身(アバター)、不屈、次元力操作

加護:女神の加護



 ん? 門って何だ? こんなの、今まで無かったよな……。


〈ダンジョンに接続可能な入口の数を表しています。同期率の上昇に伴い表示するように変更しました〉

(それは助かるな。しかも、一気に増えてるし!)

〈同期率の上昇時に、入口に関する機能の向上を優先しました〉

(そんなこともできるのか? じゃあ、今までの機能の向上って、支援者(システム)がやってくれてたのか?)

〈肯定。マスターの行動から優先すべき項目を判断し、機能の向上時に反映させていました。次回からはマスターの意向を優先することになります〉


 なんだ、それならそうと教えてくれてても良かったのに。

 ともあれ、あとはダンジョンの拡張以外の能力の向上が気になるところだ。

 前回は『思念波』が強化された。じゃあ、今回は何が強化されるのだろうか。


〈ありません〉

(えっ?)

〈今回はスキルの強化はありません〉

(マジで? じゃあ、支援者(システム)の機能が向上したとか……)

〈ありません〉


 マジですか……。

 何か、今回の同期率の上昇はパッとしないな……。


 ダンジョンが強化されてるっていうのはありがたいけど、スキルの方も強化されてほしかった。

 密かな楽しみでもあったんだけど。

 でも考えてみたら、何気にユニークスキルが二つも増えてるんだよな。


〈『次元力操作』を使いこなせれば、機能の向上以上の効果が発揮できます。頑張ってください〉

(はいよ、ここからは俺の努力次第ってわけね)


 『次元力操作』は確かに幅広く使えるスキルかもしれない。

 ダンジョンの外でも『収納』から服を取り出せたわけだし、上手く使えば『創造』もできそうだ。

 どういうわけか、一度試しただけなのにそんな手応えを感じていた。


 うーむ、何だろう……自分の能力に対して、妙に自信が持てるようになってきたんだよな……。

 できそうな気がするのが、はっきり感じるっていうのかな? そんでもって、実際にそれができる。

 前までは、ここまで自信を持ってスキルを使えなかったんだけど。


〈それは新しい補助核(サポートデバイス)の効果です。マスターの(コア)の演算能力を高めているため、マスターの思考が行動やスキルにダイレクトに反映されるようになりました〉

(おおっ、それって俺の頭が良くなったってことか?)

〈否定。そんなわけがありません〉


 ちょっと支援者(システム)さん、辛辣過ぎやしませんか!?

 


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