ロートル作家は戦闘中 3
ロートル作家は戦闘中 3
「実にあっけない戦いでした」
「ちょっと娘を任せるには不安要素の強い方ですね」
実況のハガが残念なものを見るような目でユキと一緒にサラスを見ている。
「ただあの場合はナガラくんを褒めるべきかもしれませんね、相手の弱点を的確に見抜き、確実にしとめていますから」
「そうですね、うちの旦那様の若い頃を、いや今でも旦那様は本当素晴らしい方なんですよ?」
ユキがヒトシの方を見てうっとりしている。
「はい、ごちそうさまです」
では次の戦いを見てみましょう。
※
「ユキは何を言っているんだ……。しかし、何とか言うかアレだな……」
自陣地からその様を眺めていた、ヒトシは苦笑しか出なかった。
あいつはもう少し雇う人間を選ぶべきだと思うんだがな。禿げマスタもサラスの姿に、少し引いている様に見える。
いずれにしろ、これであの化け物じみた少年がハジメに行くかな?
それとも状況的に見てアレは、松かマーガレットのどちらかに倒させるんだろうか。
しかし、ハジメはまるで子供の頃のような戦法だね。アレは散々俺に倒された方法じゃないか。何を言っても、あぁやって行ってしまうから、ヨシノさんが良く苦笑していたような気がするよ。
一瞬懐かしい声が聞こえた気がしたが、すぐに現実に戻る。
「父として、そう簡単に松にやられてやるわけにもいかないしな」
そろそろ動くか……。
※
直進あるのみの、ハジメは中央辺りで、フトシと押し合いをしている。時折、相手の風船花を狙うが、互いにおでこを付け合って、押し合う姿は、一昔二昔前の不良のようにも見える。
先ほどサラスが退場したとき、ハジメはそちらを見なかった。
口をきゅっとしめたまま、ただ前のフトシをしっかりと見ている。
もうだいぶ長い間二人は中央で押し合っている。ただ無言で、二人は自分の力のみで、そして少しずつ少しずつだが、ハジメがフトシを押し返している。フトシもそれに負けずになんとか踏ん張っている。
純粋に力と力の比べあい。フトシは良くがんばっている。自分たちが信愛している、マーガレットの父であり、ハナの町の町長ハジメは子供の間では、結構英雄扱いだ。誰もが知っているし、誰もがあこがれていた。憧れと直接対決をしている。それがどれだけすごいことなのか……。
「負けるわけにはいかないんだな」
「ふん! 小僧良いものを持っているな!」
押されているとはいえ、それでも単身抑えこんでいるフトシをハジメは純粋に褒めている。
「だが、まだまだ早いな! このわしに挑むには!」
ハジメはそういうともうひとつギアをあげるように、筋肉の一つ一つに意思を伝えるようにしていく。
「コレでわしの勝ちだな!」
ハジメの言葉通り、フトシはそこまでだった。そこからハジメ一気に力で押し崩して前へとフトごと進んでいく。途中チャンスとばかりにガリがひとつだけ、ハジメの風船花を割るも、ハジメに張り手一発でのされて、残りの風船花を割ってしまう。
「つえぇえな……ハジメ……」
さすがに俺もそう思わずにいられなかった。
いつもご覧になって頂き、真にありがとうございます。
『ロートル作家とおとぎの異世界』96話です。
ではまた次回で……。
米




