表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/115

ロートル作家は決戦前夜を迎える

梅雨を抜けると、そこは真夏でした……。

  ロートル作家は決戦前夜を迎える

 ~ハジメ視点になります~






 ハジメは悩んでいた。


 かつてヨシノと共にこの遊びを考え、実に楽しかった。

 だがいま、この戦いでするのは自分の娘との決闘。

 我侭に育てたとはいえ、あいつと俺の娘。


 決してダメなわけではない。

 本音を言えば、そのままマーガレットの選んだ松と、別に結婚してもかまわないとは思っている。

 それがマーガレットの、自分たちの娘の幸せだというのであれば。


 ヨシノと約束をしていたから……。あいつを、マーガレットを幸せにすると。

 だからコレは父親として俺のできる精一杯だ。ヒトシと組むのは正直に気が進まない。

 あいつがヨシノとの件で、身を引いたのはなんとなくなわかっていた。

 何があったかは知らないが、突然ある日を境に、ヨシノに対して、一切のアプローチが止んだ。


 見舞いにもなかなか来なくなったし、いつもの戦いの場所にも、だんだんと姿を現さなくなった。

 声をかけてもしかめっ面でこちらに嫌悪感を向けるだけ。

 だんだんと俺たちは大人になっていき、他の奴らともなかなか会えなくなっていくんじゃないかと、

 すこし怖くなっていたときもあった。


 そうこうしているうちに、俺とヨシノの結婚式となり、あいつを呼んだけど、あいつは来なかった。

 ただ、家の前に誰からのか分からない、ヨシノ宛の花束が届いただけだ。

 おそらくあいつだろうな……と思っていたのだが、今までのあいつらしくもなく、

 胸の中がモヤモヤする感じがした。約束を破って告白をしたのは、確かに悪いとは思うが、

 ソレを差し引いても、俺の中でのヒトシの株は大暴落していたのは確かだった。


 やがて親父が倒れて、俺はハナの町長になった。

 頃合同じくして、ヒトシはウエキの町長になった。

 どうしてもやらなければいけないから、仕方なくだったが、会議で会うたびに、

 なぜかあいつの態度が気に入らなくて、つい噛み付いていた。

 噛み付く俺を子供で見るような目でヒトシは見て、何も言わずに会議を進めていく。

 ソレも気に入らなかった。ヨシノが生きている間、会議のことをヨシノにすると、

 いつも窘められていたっけかな。


 そうだ! ヨシノが死んだときもあいつはこなかった……。

 あれ程好きだ何だの言っていた相手が、危篤状態になって苦しんでいるのに、

 俺の使者をあいつは、ただ帰してきた。

 あの時はあまりに頭にきて、庭の木をへこむくらい殴った。

 そして、もうあいつとはライバルですらないと思った。


 相違やあの頃、あいつはウエキの町の一大イベントと称して、

 街道や、ハナサカや、自分の町に勇者が好きだったという『サクラ』の木を植えていたらしいな。相違やヨシノもサクラ好きだったっけかな? 


 まぁいいや……バカ親父だとは自分でも思うが、俺にはこういったやり方しかやっぱできねえんだよ。

 頭の良いふりなんて、物分りのよさそうな父親なんて無理だわ。

 明日はまっすぐ中央を全力で突っ走る。そして二人のくびねっこひっ捕まえて、謝らせて、最後には…。

 しかし、俺も腹も出て、走ったら息ぎれして、確かに昔の姿の見る影もないよな。

 あぁ、おやすみ、ヨシノ。明日は俺じゃなくてマーガレットの方へ味方についてやってくれな。

 じゃあな…。



いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。

『ロートル作家とおとぎの異世界』91話になります。

今回で戦いに入ろうと思ったのですが、どうしてもハジメが、

物申したいというので、仕方なく、足してみました。

不器用な親父の独り言ですが、どうかよろしくお願いします。


ではまた次回で……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ