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ロートル作家は宣戦布告をさせる 3

三日に一度ペースは思ったよりも良いようで、だいぶ落ち着いてきました。

ただ、それでも夏の暑さにはほぼ対抗できずにいますが……。

 ロートル作家は宣戦布告をさせる 3


 宣戦布告

 マーガレット~ハジメ



 マーガレットはものすごーく緊張しているのがわかる。

 父親への反抗もそうだが、お付のあのサラスの目が怖いからだろうな。


「小僧……よくもおめおめと私の前に……」


 あーあ、目とか凄いな充血しているよ? 

 もうちょっとアイケアとかしたほうがいいよ?


「何をどう勘違いをしているか知らないが、俺は手を貸しているだけだが?」

「そ、そうよ、サラス……! わ、私たちがナガラにお願いをしたの、手を貸してほしいと」

「お嬢様はその小僧に騙されているだけです! 

 お嬢様がそんなことをお考えになるはずもありません」


「過保護だなぁ……」

「なにぃをぉ!」


 俺達が、やいのやいのと騒いでいると、奥からハジメが出てきた。


「おぉ、マーガレット! 家出にようやく飽きたか? 

 さぁ、馬鹿なことは止めて家に戻ってきなさい」


 今までのことは何も無かったかのように笑顔で、

 マーガレットを家の中へと迎え入れようとする。


「おおかた、どこぞのバカ息子に誑かされただけだろう。

 あいつの父親も策を練ることだけは、得意だったからな。腕はからっきしの癖にな」


 何か嫌なものでも思い出すように、眉を顰める。


「いえ……お父様、私は誑かされてなどいません。

 純粋に松さんが好きなだけです! お父様が、かつてお母様に感じたように、

 私も松さんを、そのように想っているだけです」


 一瞬、片方の眉が激しく上がる。だが、それを殺すように、ハジメは、俺に話しかけてくる。


「あぁ、君は、旅人のナガラくんだったかな? 

 すまないね、今回はうちの娘が迷惑をかけたようで……。

 少々我侭に育ててしまったようで、こういうことには本当に疎い子なんだ。

 この後は私達で話すので、君は気にせずに、元の旅を続けてくれて構わないぞ」

「お父様! そうではないのです! 私たちはお父様達に宣戦布告をしに参ったのです!!」


 怯えを取り、真っ直ぐな目でハジメをみて、マーガレットは約束どおり宣戦布告を行う。


「オジョウサマ?」


 信じられないものを見たと言う目で、サラスがマーガレットを見た後、

 すぐに、矛先を変え、憎しみのこもった目で俺を見る。

 俺はその目を見て、わざとニコッと笑って流しておく。


「くだらないことはやめるのだ、マーガレット。

 大体、私とお前とでは、力の比べ物にもならないだろう…相手にならぬわ」


 ハジメは少し強く、ふんと鼻を鳴らしながらマーガレットを抑えに入る。

 そのまま抑えられてもこまるので、ここ他ちょっと助け舟を入れることにする。


「それはどうでしょうねぇ……」


 ちょっとだけよ?


「今回はこれでやろうと思っているんですよ」


 俺は風船花と管木の棒、それと光る染料も見せる。


「それは! その遊びは我々の代で封印したはず! なぜお前がそれを知っている!!」


 おーおー一瞬で顔が真っ赤になった。


「いやぁ、マーガレットさんがこの遊びのことを、お母さん、

 ようするに、ヨシノさんから聞いていたらしいですよ?」

「そうなのお父様! だからこれで戦ってください! 

 お二人に私たちは勝って、松さんとの仲、それだけではなく、

 ハナとウエキの町のみんなが楽しく暮らせるようにしたいのです」


「くっ…! 二人と言ったか? 

 あの頭脳バカがそんな得のない話を受けるわけがなかろう! 

 私とて暇な身ではない! ダメだ、ダメだ!」


 もはや先程までの優しい取り繕った感じではなく、

 ハジメ本来の荒々しさの出た反応で断ってくる。


「おや? ハナのハジメが、自分の愛娘からの、

 真摯な戦いの申し出を逃げるので? ヨシノさんが聞いたら呆れてしまうでしょうね」

「何を小僧が聞いた口を聞くな!」


「どちらも似たような対応をするものだなぁ……。

 ウエキの大将は受けると思いますよ? あなたは逃げるので?」

「逃げる……だと?」


 俺たちが喧々諤々としていると、背後で声がする。


「おい、バカハジメ!さっきから聞いていれば人のことを、

 頭脳バカだの、策のみ腕はからっきしとか、何を勝手なことを言っているんだお前は!」


 振り返るとそこには松とヒトシ、それにユキもいた。


「何を!本当のことだろうが! なぜお前がここにいる! ヒトシ!」


 三人の姿を見て、ハジメはイラついた顔をそのままに、ヒトシを睨みつける。


「は?! なぜ居たらまずい? どっかのバカ町長が、

 私の息子の友人に、今にも飛び掛らん顔つきで、モノを言っているから、助けに入ったまでだ」


「あ? お前か! この絵を描いたのは!」

「はん? 下らない! 腑抜けきったお前なんぞにわざわざ、

 この私が策など練るか、ヨシノさんが生きていて、頼まれれでもすればわからんがな!」


 怒り狂うハジメに対して、言葉は悪いが、冷静な顔つきで、ヒトシはハジメを煽っていく。


「なにをぉ! この作戦バカが!」


 このままでは埒が明かないと思い、参戦を決めてくれたヒトシへ向かって、

 俺は言うことにする。


「さすがは、ウエキの知将ヒトシさんですね…。

 残念ながら今のところ、ハナの愚将ハジメさんは、逃げるそうですが……」


 俺はこの際なので、色々危なくなる気もするが、思いっきり煽ってみることにした。


「小僧!! 我が主をどれだけ侮辱すれば気が済む!」


 あ、こいついたんだったな。いいやこいつも煽っちゃえ。


「は?主…あぁ腰抜けの町長さんのことですか? 自分の娘の真摯な願いも聞けない?

 これがかつて、ハナにこの人が居れば安心と言われた、

 子供の間でのヒーローとはとても思えませんけどね!」


「いわせておけばぁああああ!!」

「あぁ、ひょいっとな」


 サラスが俺に突っ込んでくる。俺はそれを、わざと寸前で見切る。

 加護付の俺からしたら、どれだけ凄い奴でも、よほどのことがなければ、

 子供みたいなものだ。我を忘れて攻撃をしているサラスとひょいひょいといなしていく。


「お父様!」

「ハジメ!」


 俺とサラスが始めてしまったものだから、

 不安になったマーガレットと、仮にも少年の姿の俺に大の大人が、

 本気でやってきているのを止めるためか、ヒトシもハジメの名前を呼ぶ。


 ハジメは俺とサラスのやりあいをみている。余裕綽々で受け流す俺の動きを。


「ふん、小僧やるな……。サラスお前ではその小僧の相手にならないわ!

 やめておけ!」

「お父様、ちゃんと聞いてください! 私は亡き母の意志を、

 お父様に伝えたいのです。ですので私は勝ったら、

 母が最後に私に聞かせてくれた言葉をお伝えします。ですからどうか!」

「ヨシノの? あいつの言葉だと?」


 ハジメはその数分程、黙って腕を組んで考えていた。


 ――数分後


「分かった! その挑戦を受けることとする! ただし!

 俺はその頭でっかちと組むつもりはないぞ。

 あくまでハナのハジメとしてだ! それなら受けよう」


「は?私として、息子たちの気持ちは汲んでやるが、

 お前と共闘なぞ、可能だとは思っていないわ! こちらはこちらで人を集めてやる」

「「ふん!」」


 そのあと、ユキがとりなしたりして、互いに少し落ち着いてから、

 ルールを決めることとなった。

 松もマーガレットも息を吐いてほっとする。


「さーてと、後はルールと参加者の選定だなぁ…」



いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。

『ロートル作家とおとぎの異世界』87話です。

この後ルールに準備をしていざ戦いです。

次回もどうかよろしくお願いします。

では次回で……。





6/15

少し本文を修正しました。

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