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ロートル作家は宣戦布告をさせる 2

暑い夏が続いていますねぇ…夏は本当苦手です。

 ロートル作家は宣戦布告をさせる 2






 松と俺が帰った後、ウエキ夫婦の話は始まった。


「あなた? ここはしっかりと息子の気持ちに応えるべきです」

「ユキ……お前も知っているだろう? ハナにはあいつがいる。

 私はあいつを許してはいないんだよ」


「ヨシノさんのことですか?」

「ぐっ……、いや、無いわけではないが、それだけではない」


「全く…大の男がうじうじと…、二人ですっきりするまで、

 やりあえばよいではないですか!」

「お前に何が分かるというのだ!」


 さすがに、男と男の話になると、ヒトシも黙ってはいられなくなったのだろう。


「あなたこそ、なにがわかっていらっしゃるので?」

「なにを!」


「私はあなたとハジメさんとの戦いを、ずっと目の前で見てきたから言っているのです」


 ユキは少し目に涙をためつつも、毅然とした態度を崩さずに、話を続ける。


「目の前で? ユキ、お前何を言っているんだ?」

 ヒトシは自分の妻の言葉に違和感を感じていた。

 目の前で? 何を言っている? ユキとは親の縁談で始めて会ったはず。

 その妻が、なぜ自分とハジメの戦いを目の前でみれるのだろうか…。

 よしんば艦船組にいたとして、そこまでは言えないだろう。


 あの戦いは、ウエキ陣営は、私が厳選したメンバーで行っていた。

 その中にまさか……いやそんな馬鹿なことは無い。

 あの中に女の子は入れていなかったはずだ。


「私は間違いなくあなたのすぐ側で、ヨシノさんの提唱した、

 戦いを幾度と無く見ていましたし、そこに参加もしていましたよ、ヒトシ隊長……」

「ユキ……どういうことだ?」


 ヒトシはすぐ側でと言われて、頭をひねる。自分のすぐ側においておいたのは、二名。

 壁役の大柄な太、それと華奢であるも、すばやくて頭の切れる、隠密と言う役割のイクオだけだ。

 太はないだろう、いやそれはさすがに。

 まさか……。しかも今隊長と言った。

 ヒトシは自分を隊長と呼ぶことをなんとなく、止めさせていた。響きが好きじゃなかったのと、

 そこまで偉い者でもないだろうと思っていたからだ。

 そういえば、何回言っても、嬉しそうに隊長と言う人間が一人いたな。

 それは隠密係のイクオ…。


「ユキ……お前、まさかイクオか?!」


 さすがに面を食らっていた。息子への怒りとか、ハジメのこととか一瞬どうでもいい程に。

「はい……隊長……イクオです。あの頃私ほとんど凹凸無くて、

 別に身体検査されるわけでもなかったので、男ですといって隊に入っていました……」


「おいおいおいおいおいおい……それはさすがに予想外だったよ…。

 あぁ…そうか…私は存外に節穴なのだなぁ……やつのことを何もいえない、

 苦笑しかでないよ」


「ごめんなさい……父から縁談を聞かされたとき

 、最初にイクオのことを言おうと思ったのですが、言いそびれてしまって。

 そのことをヨシノさんに相談したら、

『別にいう必要も無いでしょ? 後で驚かしてあげればいいわ』と言われて、

 今日まで言うのも忘れてしまい」


「はぁ……、あははは、そうか、あの人らしい判断だよ」


 ヒトシは随分ぶりに笑った気がする。まさか、あの人が亡くなって、

 こんなに自分が笑えるとは思ってもいなかった。

 本当に予想の上を毎回行く人だ。


「あの人の意思を託されたか…」

「そうよ、隊長」

「ユキ……隊長はよしてくれ。全く、それで私が好きな、

 ヨシノさんのお昼ご飯だった、サンドウィッチのつくり方も知っていたのか……」

「はい……ヨシノさんとは仲良くしてもらっていました」


 ユキは少し昔を懐かしむように、目を細める。


「ユキ! 分かった! 父として、ウエキのヒトシとして、

 我がバカ息子の挑戦を受けよう! 昔のなじみに連絡を。

 それと、あのハナの馬鹿が受けるか否かは知らないが、一応、策のひとつも練るとしよう」


 松は『お二人に』と言っていたからな、

 私が行って煽りでもすれば、あいつのことだすぐ食いつくだろうさ。


「まさか、あのバカと組む日が来るとはな……」


 こんな話をあの人が聞いたら、神様の国からでも観に来るんじゃなかろうか。

 ユキはこんな私の気持ちを見透かしているように、微笑んでいる。

 女の人は怖いものだ…この戦いがどうなるかは知らないが、

 松とはいずれそういった話もするようになるのかね。


いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。

『ロートル作家とおとぎの異世界』86話です。

後もう少しでハナ+ウエキ編も……というところです。

ではまた次回で……。





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