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ロートル作家は宣戦布告をさせる 1

何とか、書けています。

 ロートル作家は宣戦布告をさせる 1


 宣戦布告

 松~ヒトシ



「坊ちゃまがお戻りになりました!!」


 松の家の使用人が、松の戻ったことを告げる。


「あら、松が?」


 家の中では使用人の声を聞いて、母親のユキが部屋を出て行こうとする。

 ヒトシはこのとき同じ部屋にいたが動かない。

「松、大丈夫? ちゃんとご飯食べてた? 急に家出とか……。

 お母さん本当に心配したわ。あら? そちらの方は?」


 松を抱きしめて、心配そうに母親の雪は聞いている。

 そして俺の存在にも気がついたようだ。

「お母さん、彼はナガラという少年です。今回、無理を言って、

 僕らの無茶に快く付き合ってくれた、僕らの大事な友人です!」


 一応、フードを目深に被った状態で、顔をは見せないようにしている。


「あら、うちの松がご迷惑をおかけしてすみませんね」


 一応気にせずにと声を出さずに身振りで答えて、深めの礼をしておく。


「それで、お母さん、お父さんは?」

「あぁ、いるのだけどねぇ…あのひとは奥にいたまま出てきてないわね」


「そうですか……今日は、お父さんに僕とマーガレットのことを、認めてもらうために来たんです」

「そうだったの…、今日はこのまま戻るの? それとも?」


 母親としてはそちらも心配だろうが、むしろ今日戻ってくるのか?

 についてもやはり心配なのだろう。

 松は左右に首を振り、それをやんわりと否定する。

 そんなやり取りをしていると、ヒトシがやってくる。


「お父さん!」


 まゆ一つ動かさずに、ヒトシは松を見る。

 松はそれを受け止めるように、口をきゅっと結んで、見返す。


「我が家を出て行くのであれば好きにすれば良い。

 男である以上、それ相応の覚悟があったのだろう?」


「はい!ですが、今日はそれだけで来たわけではないのです。

 私たち二人は町同士の不和、それの原因、全てを取り除いてこれからの、

 ハナとウエキの関係を築きたいと思っているのです!」

「ほう…原因? といったか?」


「はい、その為にも我々新しい世代は、古い世代である、

 お二人に宣戦布告をしに参りました」

 松は必死に何度も練習したスピーチを続ける。

 ヒトシは息子の宣戦布告の言葉に、余り穏やかではない顔をする。

「宣戦布告? 尻の青い子供が、私にか? そして私はその原因だと?」

「いえ!お二人にです!!」

「二人?」


 怪訝そうな声を出すヒトシ。


「はい! そして、戦う方法はこれです!」


 松の言葉を合図に俺は、かばんに(正確にはあの箱なんだが) 隠していた、

 風船花と管木の棒を出す。


「それは……!?」

 ヒトシの顔が驚いたと同時に、少し曇る。

 ユキの方は、そのセットを見て、目が細くなり、懐かしそうに少し微笑む。


「はい! ヨシノさんの考えた遊びで使うものです!」


 その一言を聞いたとき、ヒトシの顔は更に難しそうな顔になる。


「なぜお前らがその遊びを…。それは禁止した遊びのはずだ。しかも我々の代でな」


 マーガレットがヨシノから聞いていたこと、

 そのヨシノさんの意思も継いで、二人を倒さなければいけないと感じたこと。

 だからどうしてもこれで対決してほしいこと。松は必死になってヒトシに伝える。


「お父さん!いやウエキの神童、ヒトシさん。どうか我々の挑戦を受けてください!!」

「なぜ私がそれを受けねばならない? する意味はなんだ?」


「それが、マーガレットの話を通して、ヨシノさんから託されたものだと思うからです!

 父さんがヨシノさんにどういう感情を持っていたのか、想像はついています。

 また、それも、要因としてハナの町と険悪になっているのであろうことも、

 想像についています! どうか、もう下らないことでいがみ合うのは止めてください!」


「断る! 子供の遊びに付き合う暇など私には無い! 」

「お父さん!」


 ヒトシと松の交渉は決裂しそうに見えた。

 まぁ余り触れないほうがいい部分に触れているからね。

 俺は他の手を考えなきゃなぁ……と思っていると。

 思わぬところから助け舟は出た。


「あなた……? ウエキのヒトシは、勝負から逃げない男でしょ? 

 自分の息子からの勝負を、逃げるような真似はなさらないで下さい」

「お前までが何を言うんだ!」

「いいんですよ。ヨシノさんの事なら……。

 私はそれを分かった上で、貴方のもとに来たのですから……」


 ヒトシがそれを聞いて驚いた顔をする。


「松……お母さんがお父さんを説得してあげます。

 その代わり、改めてちゃんと家にもくるんですよ?

 その遊びはルールが少々細かいのですからね」

「おまえ、何を勝手に……」


「あなたは黙っていてください! 息子が自分の誇りを賭けて、

 親へ挑んできているのです。それも恐らくもう一人のあの優しい女の子もですよ?」

「お母さんすみません!」


「ふふ、懐かしいわねぇ……あの遊び……。

 後はお母さんに任せなさい。お父さんとはこの後ゆっくり話しておくから」


 さすがの俺も少し驚いた。ニコッと笑うユキの顔は、

 その瞬間な、んだかやんちゃな子供みたいに見えたし、

 まさか、こちらの力になってくれるとは思ってもいなかったので。


「あなたもごめんなさいね。内の息子の我侭に付き合わせてしまって、

 今度良かったら遊びにいらっしゃい。

 ヨシノさん直伝のサンドウィッチを食べさせてあげるわ」


 ユキはそういうと少し楽しそうに笑って言う。


「ではお父さん!よろしくお願いします。日時ルールは、また改めて!」

「おい! 待て松!」

 俺たちは、ここが潮時と考えて、二人にそのまま一礼をして、松の家を後にした。


いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。

『ロートル作家とおとぎの異世界』85話です。

最近体調が優れないこともありまして、更新頻度を少し落とすことにしました。

夏を越えればまた早い、更新に戻せると思うのですが、申し訳ありません。

今後は三日に一度くらいになると思います。

どうか、今後に着きましてもよろしくお願いいたします。

では、また次回…。




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