ロートル作家は回想を聞いている 8
ちょっと長くなってしまいました。
ロートル作家は回想を聞いている 8
お昼はコットお手製のサンドウィッチ。
猪の肉の燻製ベーコンに緑菜、少しだけ聞いたマスタードに
マヨネズの組み合わせ。あとはお茶の入った水筒。
ちゃんとお手拭も用意されている。あ、あと、薬ね。
「あ、それ美味そうだな、一個俺のと交換しねぇか?」
ハジメがサンドゥイッチを指差して、
自分のおにぎりと交換してほしいと言ってくる。
「ん?いいけど?」
「おぉ、そうか。ありがとなぁ」
おにぎりはどうやら自分で握ったらしい。
うーん、ハジメはちゃんと手洗ってるよね?
まぁ……大丈夫でしょ。
ハジメは私と交換したサンドウィッチを食べて、絶賛している。
だいぶ気に入ったのかな? じゃあ今度コットに多めにつくってもらおうかな。
「午後から開始だけど皆大丈夫?」
「んぁ? 問題ないんじゃね?」
「食事終わったら陣地の整備しないとね、それと今日は僕はみているだけにするからね?」
「あぁ、かまわねぇよ? ってかいつも見てるだろ」
「あぁ、いやそうではなく、今日の戦いはまず自分たちで一回工夫してみてよ。
僕はそれを見てちょっと考えるからさ」
「あぁ、でーたーしゅうしゅうってやつか?」
「そうそう、それ」
わかったといって、サンドゥイッチを食べ終えたハジメは仲間を集めて、
作戦会議を始めた。
午後一で戦いは始まり、夕方までには終わる。
今回の勝者はヒトシ。さすがだなぁと思う見事な手際だった。
将来は町長なんてやらないで、軍事関連にでも勤めた方が良いのではないだろうか。
なんて思うほどだった。
そのあと、内緒にしていた、隠し球を投入し、
戦いはもっと複雑なものになったけど、皆楽しそうだったのよ?
もちろん私も楽しかった。
※
そして皆と出会ってから一回目の冬に、私は倒れてしまった。
前日のお医者さんの検査は問題なかったの、
でもたまたまその日に夜更かしをしてしまい。
私はちょっとふらつく体のまま、皆のところに行ってしまった。
皆と会った後はなんか急に調子が良くなってきて、朝のこととか忘れてた。
ついでに、お昼の後の薬も忘れてね……、うん、気がついたら倒れてた。
「ヨシノ! ヨシノ!」
「ダメです、そんな揺すっては!」
「やべえよ、ヨシノマジで苦しそうだ!」
「落ち着きなさいハジメ! 僕らが慌ててもどうにかできるものでもない!」
「バカ野郎! 仲間が倒れてんだ! 落ち着けるか!」
あぁ…なんか二人が喧嘩している。私のせいか……。
その状況をたまたま様子を見に来たコットがみつけたらしい。
「お嬢様!!」
ものすごい勢いで私を見つけ、バスケットの中の薬を飲ませる。
来る狩った呼吸が一段楽してくれる。でもちょっと声を出したり起きたりは無理みたい。
「お嬢様!!」
あぁ、コット……ダメだってここではお坊ちゃまでしょ。
皆に私が女だってばれちゃうじゃない……。
「おじょう??」
「あぁ、いつもヨシノさんと一緒にいる方ですね?ヨシノさんが急に倒れまして!」
「大丈夫です、恐らく薬を飲み忘れているだけでしょうから」
「そうですか……よかった……」
今まで冷静さを失わないようにしていた、ヒトシが泣きそうな顔になっている。
「おじょうって、おい!」
その声を聞いて、コットがしまったという顔で、間を空ける。
「大丈夫です! 僕らは知っていましたから!」
「え?なん??」
ハジメだけ少し間の抜けた声を出している。
「ヨシノさんが女性だということは随分前から気づいていたので、
「そうでしたか」
「それよりヨシノさんを早く!主治医の方に」
「え?ヨシノって女だったの??」
「あぁそうですよ! もう君は! 後で君にも分かりように、話すので今は黙っててください。
今は、一刻を争うときですから!」
「お、おう!?」
その後私は、屋敷に運び込まれて、外出禁止になってしまうのね。
二人は結構お見舞いに来てくれていて、
自分だけ私が女だって気づいていなかったハジメは、しばらく文句言ってたけど、
結果はあなたも知っている通りよ?
あのあと、ハジメと私はいい喧嘩友達になり、
ヒトシも合わせて三人で仲良くしてたんだけど、
ハジメがなんだかの約束を破ったとかで、私に告白して、
私はそれを受けて付き合うようになる。正式なプロポーズを受けた頃、
ハジメのお父さんが亡くなって、ハジメはハナの町長さんになるわ。
私はそのあと町長夫人?になって、あなたが生まれたの。
結構反対されたわ~、大変だったのよ?でも、ハジメさんとヒトシやコットたちが、
絶対産むべきだって言ってね…。ほらお母さん体弱いからね。
もうものすごい頑張ったんだから、あなたの顔をちゃんと、
大きくなるまで見るためですからね……。
でも、本当ちょっと厳しかったわねぇ……。
まぁ結構まだ、あなたを産んだことは色々言われてるけどね、でもね私は満足よ?
あなたという大事な大事な娘がいるからね。あなたのお父さんにも感謝してるわ。
仕事で今は忙しいけど、私を偉いお医者様に診せるんだって、なんか張り切ってくれてるし。
ふふ、楽しいわね……最近ヒトシとは会ってないけど、
元気にしてるかしら……?
あら…マーガレット?寝ちゃったの?
そうよねぇ……昔話なんて退屈よね。
じゃあお母さんもちょっと疲れたし、一緒に寝るわね?
明日はハジメさんにいって、ウエキの町にでも行ってみましょうね。
「じゃあ、おやすみなさい……」
いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。
『ロートル作家とおとぎの異世界』83話です。
これでようやく回想編も終わりです。
次回も是非よろしくお願いします。
ではまた次回で
米




