ロートル作家は回想を聞いている 6
回想はまだ続くのじゃ
ロートル作家は回想を聞いている 6
その日、私はハジメとヒトシとその仲間たちを呼んで、説明をしていた。
今のままでは、怪我が増える気がする。
いずれ大人によって中止させられる可能性が高い。
それにヒトシは頭脳戦、ハジメ肉弾戦。
このままだと、勝利条件が余りに簡単に決まりすぎる。
それじゃあ、いずれつまらなくなると思う。そういっていると、
二人は真面目に私の話を聞いていてくれた。
「あぁーわかったわかった!難しいことはいいよ。
要するにこれをつけて、その棒や怪我をしにくい罠とか使って割ればいいんだな?」
私がそうそう、とうなづくと、ハジメはそれをつけはじめる。
頭に着けようとしたので、それは止めておく。
アレは割れると大変なことになる花なので。
「ふーん、まぁいいでしょう。そうか君が、ハジメのバカを勝たせた軍師くんか。
いいでしょう!我々もそれを受けてたちます」
ヒトシものってくれた。しかも一式は私が用意したということ、
今後の必要な分もすぐ確保できること、怪我の治療費を考えたら、
全然、安く道具は手に入ることを伝えると、ヒトシは私の話を暫く感心しながら聞いていた。
「キミはかなり優秀な人なんだね…」
「ははは、ありがとう。でもそれほどじゃないさ」
とりあえず、今まで隠していたある話をこれから伝えることにする。
「それでね、実はこの花、ものすごく安くて、使い勝手はいいんだけど、
もしもこの花を誰かに割られると…こうなるんだよ゛」
私は目の前で一個、棒で強く叩いてみせた。
においきつい…つい最後に鼻をつまんじゃった。
「こ…これは…」
ヒトシがいつもの冷静そうな顔を崩して、しかめっ面になる。
「くせぇええええ!しかもなんか色出てるし、なんだこれ! あははは」
ハジメは叫んで笑って大忙しだ。
「はっはっは、どうだい?これなら叩かれて割れたら十分にきついだろ?
しかも割られたらすぐ分かるし、これを三つ、割られた人は、戦線を離脱になるとするんだ」
私はこれを思いついてから色々考えてたルールを一気に説明する。
「いいんじゃねぇーの?俺は構わないぜ!
まぁ臆病なヒトシはもしかしたら嫌がるかもだけどな」
白い歯を出して、ヒトシを挑発するようにハジメは笑う。
「はっ?! 何をご冗談を!! 我々ウエキにそんな軟弱者はいませんよ?
臭い? 色がつく? 上等です! むしろ、あなた方こそ、
その悪臭と色塗れにして差し上げようじゃないですか!」
二人の間に熱い火花が散る。男の子だなぁ。
私はその姿を見て少し羨ましくなる。
「よし!じゃあ今後はこれで戦いをしよう!
あ、ちなみにその色も臭いも軽く洗濯するだけで取れるからね?
最初は慣れるために、一対一のトーナメント戦でもしたらどうだい?」
「あ?そんなん俺が一位になるに決まってるじゃねぇか」
ハジメはそこの自負は譲れないらしい。
「いやぁ…この棒ね?実は強く扱っちゃうと、すぐに壊れちゃうんだよ。
なのでハジメがもしも力任せに、この棒を使ってしまうと、
すぐなくなっちゃうんだ。だから……」
私は、棒を壊したらその人は負けというルールをつけた。
元々、早々に壊されても困るので、つける予定だったんだけどね。
「あ? おいおい。ん~わーったよ! 大事な遊び道具だからな!
それでかまわねぇよ」
そのあと、双方の仲間が全員呼ばれ、遊びの説明を私から受ける。
全員、それぞれのリーダーが了解していることもあり、すぐに受け入れてくれた。
あと、怪我しないで済むとハジメ陣営から感謝もされた。
それから数時間後、私を除くほとんどの子が、紫っぽい色と、
悪臭に塗れて、笑顔満面でいつもの場所に立っていた。
私も参加したかったんだが、さすがにコットに止められたので、
そこは我慢して審判をしていた。
「あぁ、ヨシノ! ありがとうな! また遊びこいよ!
体弱いならそこで見てるだけでもいいからさ!
また面白いもの見せてやるからさ! お前ももっと面白い遊び考えてくれな!」
「ええ、今回は結局、またハジメにトーナメントの優勝はされましたが、
これならお互い良いハンデで戦えます。あなたは本当、凄い人です!また遊びましょう!」
何だか二人に認められてくすぐったく感じる。
他の皆もコットと帰っていく私のことを、だいぶ長い間手を振って見送ってくれていた。
「ふふ、なんだかあの中に入れてもらえたようで、嬉しいなぁ…」
「おじょ…お坊ちゃま…よろしかったですね…」
そうして、私たちは屋敷へと見られないように帰っていった。
いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。
『ロートル作家とおとぎの異世界』81話です。
何とか連続更新してますねぇ……。
これからもどうかよろしくお願いします。
ではまた次回で…。
米




