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ロートル作家は回想を聞いている 5

最近だいぶ暑いですね…体気をつけて、元気にですねぇ…。


 ロートル作家は回想を聞いている 5






「はい、良く頑張りましたね、これで今回の外出許可が出せますよ。

 本当、最近どんどん体の調子が良くなってきてますね。

 このままいけばもしかしたら…」



 お医者様は私の症状が良くなっているのを、ものすごく驚いていた。

 きっと彼らとの楽しい時間が、私に生きる、治す力をくれているんじゃないかしら…。

 そう思えて仕方ない。


 屋敷を出て、出た角のところで待ち合わせていた者と、落ち合って町へ出る。

 一緒にいてくれているのは、我が家の使用人のコッドさん。

 今回はかなりの荷物を持って行くことになったので、そっと内緒で頼んだの。


 まず向かったのは花屋さんだった。

 うちにも結構卸してくれている花屋さんだけど、

 今回の花があるのはここくらいしかなかったので、ここに来た。

 店先には主におかみさんが立っていることが多く、人柄はかなり良い方。

 そんなおかみさんに声をかける。


「すみません、それを三十本下さい」

「え?これをかい?十本で銅線一枚でいいよ」


「ありがとうございます」

「ところで、こんな花、何に使うんだい?」


「面白いことにですよ」

「ふーんそうかいー、まぁなんにしろこれが売れるなら、

 ありがたいことだよ。なんなら、種とかつけてあげるかね」


「それは助かります。是非ください」

「変なお客様だねぇ…まぁ、いいね…。毎度さん」


 花屋のおかみさんは首をひねりつつも、

 それがお得意のお嬢さんであることには気づかずに、

 おまけまでしてくれていた。

 変装はばっちりだったみたいね。

 コットでばれるかと思ったらそうでもないみたいだし、

 いつも花を届けてくれているのは、おかみさんじゃないから、

 わからなかったのかな?まぁいいか…。


 そんなことを考えながら、次に向かったのは、材木屋だった。

 こちらは木はあるけど毛は無い、良くそういって笑っているおじさんが、

 店をしているといっていたわ。


「あのーすみません…失礼を承知で聞くのですけど、

 中身がすかすかになっている木材とかありませんか?」


「あ?中身がすかすか?そんなの何に使うんだい?」

「面白いことにです」


「ふーん、まぁないことはないけどな。値段もつかないんで、

 ほら裏に放ってあるやつがそうだよ。あれは管木っていって、

 森とかにあると邪魔だから切ってこないといけないやつでね。

 栄養をなんかぐんぐん吸い取っちゃうらしいから、ついでに周囲を整えるためだけに、

 切ってくる木なんだよ。あれがあると最終的に、他の木の邪魔になるからな…」

「へぇー、そうなんですか…見せてもらって良いでしょうか?」


 実は私はもうこの木についても調べてある。

 この管の木が今回の遊びにはベストなのだもの。


「あぁ、どうぞ構わないよ。アレだったらお金なんか要らないから、

 好きにして構わないさ」

「え?本当ですか?」


「あぁ…構わないよ好きにしな」

 材木屋の親父は頭の横で手をひらひらと振って、

 私に好きにしなと言いながら、奥へと入っていく。


 私とコットは頭を下げて、裏手へ回る。そして束でコットに渡す。

 ひもは用意してあったので、それで縛っておく。


「これは素晴らしいわ…コットごめんね…重くない?」


 手に取った管の木をコンコンと当ててみる。

 軽いし、自分の手でトントンしたけどたいして痛くない。これだわ。

 これで間違いないわ。


「大丈夫ですよ、お嬢様。このくらいコットにはなんてことはありません」


 コットは農家の出らしく、重いものなども平気で持ってしまう。

 下手な男の人より余程力は強いみたい。


「ふふ、これで準備はできたわ…。ごめんなさいね、今日は付き合ってもらってしまって」

「いえいえ、お嬢様のお役に立てて、嬉しいですよ」

 。

「あ、コットさん、今日は絶対お嬢様って言っちゃだめだよ?

 私は男の子っていう設定なんだから…ね?」

「はい、かしこまりましたお坊ちゃま…でよろしいですか?」

「うーん…まぁいいかな…それでいこうか」


 色々思うところもあるけど、とりあえずそこで妥協することにした。


「ところで、こんなに風船花と中身の無い棒を何に使うんですか?

 ちなみに、この風船花は割れたら、結構臭いですよ?

 まぁ、洗えばおちるものですし、余程の衝撃を与えないと、簡単には割れませんけど…」

「ふふふ、これはね…」


 私はコットに内緒にしていた遊びの計画を伝える。


「あらまぁ…それはそれは名案ですわね」

「でしょ?」


 怪我が絶えない遊びをしてる子たちがいて、

 その子達にこの遊びをしてもらいたいのだということ。


 中身の無い棒はこれに衝撃を与える程度の強さが必要だったからということ。

 それを聞いているコットンは楽しそうに、そして時には、

 私の計画に感心するように、頷いていた。


 ただ最後に、それぞれのご家庭でのお仕事が一個増えそうですけどね…、

 と言っていたけど、そこは聞かない振りをしておいた。



いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。

『ロートル作家とおとぎの異世界』80話です。

思えばだいぶ遠くに来ました。しかしお話しはそんなに進んでません。

どうかそれでもよろしくお願いいたします。

ではまた次回で…。





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