ロートル作家は回想を聞いている 3
回想編です。
ロートル作家は回想を聞いている 3
笛の音はハジメへの合図だったの…。
「一回目の笛が鳴ったら、そこから全速力で自陣地へ戻ること。
それが合図だからね?」
「よし、わかった!」
作戦を聞いていた、ハジメは約束をして、強く頷いた。
そして今、その約束をした時の笛の音が聞こえた。
「鳴ったらもどるぅうううう…」
ハジメは約束通り、今度はくるりと方向を変えて、自陣地へ戻っていく。
「「「逃がすか!」」」
ウエキ側のマークについていた三人が、
それを怖気づいたものだと勘違いをして追いかける。
「隊長!ハナのハジメが急に逃げ出しました。
今それをうちの三人が追っています!」
ヒトシの側近の一人が現状を報告する。
「何だ?なんか変だぞ…」
いつもと違う違和感にヒトシは一瞬躊躇する。その一瞬で十分だった。
「「「追えー!逃がすなー!」」」
「もどるぅうううう!」
ハジメは特攻していたときと同じ速度で、自陣地へと帰ってくる。
そして在る程度いったところで、二度目の笛が鳴った。
「いいかい?戻ってきているときに二度目の笛の音が聞こえたら、
思いっきり前方へ高くジャンプするんだ」
「前方に高くジャンプだな?分かった!」
もう一つの約束を思い出す。そして純粋にそれを行う。
「二度目の笛が鳴ったら…前方に高くじゃぁーんぷぅぅぅ!!」
ダッシュをしたまま思いっきりジャンプをする。
「「「にがすなぁああああ!!」」」
追っていた三人は、急にジャンプをしたはじめを捕まえようと、
そこから加速を強くする。
「「いまだあぁあああ!」」
不意にハジメのいた場所、すこし離れた所から二人の声がする。
同時にロープがピンッと張られる。
「「「なんだとぉおおお!!」」」
勢いのついていた三人は思いっきりロープによって体制を崩す。
「「とらえろぉおおお!」」
「「うぉおおおおおおお」」
隠れていた他のハジメ陣勢が現れて三人をロープでぐるぐる巻きにしてしまう。
その後も、遠距離攻撃や、ゆさぶり、カモフラージュした服を着た、
隠密部隊によって一人ずつ、一人ずつとウエキの勢力をそいでいく。
そして、いよいよウエキ最後の一人…。
ヒトシとの一騎打ちになる。
ヒトシは知略には富んでいたが、実践は差ほどではなかった。
逆にハジメは一対一でさえあれば、そうそう負けることはなかった。
「ヒトシ…悪いが今日は勝たせてもらう!」
「言ってろ!まだ、ボクがここにいる限り、ウエキは負けていないぞ!」
「「やぁあああ!!!」」
二人の声が木霊する!一瞬の交差…ハジメはヒトシの木の棒を、
自分の木の棒で巻き取り、空へと飛ばす。
そして、返す棒でヒトシの胴を打ちぬく!
「ま…まいったぁああ!!!」
ヒトシの声が胴に当たる寸前で降参を言い渡す。
それを聞いたハジメは寸前で棒を止めた…。
「「うおおおおおおおおぉ!!!勝ったぁああ!!」」
ハジメから自陣の勝利が叫ばれる。
ハジメの仲間はハジメの側に行き、今日の勝利を一緒に叫んだ。
「よしのぉおおお俺たちの勝利だ!」
こっちを見て、叫んでいるハジメに遠くから手を振る。
「ははは、良かったねぇ…ハジメ…」
長い間、日に当たっていたのは久しぶりだったせいもあって、
ちょっと疲れてきていた。
なので私は、私の近くで伝令役を務めてくれていた子に、
私はもう時間だから帰るけど、はじめによろしく言っておいてねといって、その場を離れた。
「ふぅ…楽しかった…」
戻った私の疲れた感じに、両親は若干慌てていたけど、
体に別段何もないのに気づいてくれて、事なきを得た…。
「また、皆で遊ぼう…」
私は窓の外から聞こえる、声に呟いていた…。
いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。
『ロートル作家とおとぎの異世界』78話です。
次回も是非よろしくお願いします。
ではまた次回で…。
米




