ロートル作家は回想を聞いている 2
回想はまだ続きます。
ロートル作家は回想を聞いている 2
ハジメたちと会うようになって私は変わった。
とにかく楽しかった…。
清潔だけど静かな、音だけが聞こえてくる部屋にいるよりは、ずっと楽しい。
別にそこがだめだっていうわけじゃないんだ。
でも、あの部屋には笑い声は無い。私が参加できるのは一ヶ月に一回だけ。
お医者様から厳重なチェックをされた後。
ようやく、ほんの数時間だけ、許可が下りる。
その数時間を全て、あの二人とその仲間たちと過ごすことに使った。
「ハジメ…だめだよ真っ直ぐ行っちゃ…」
「男は正々堂々だって父さんは言っている…」
「それで仲間が怪我してもハジメはいいんだね?」
「いや…それは…」
「うーん…どうしても真っ直ぐ行きたいの?」
「う…できれば…」
「はぁ…仕方ないなぁ…」
私はハジメの気持ちを折るのも違うなぁと考えていた。
ならば、ハジメには突撃するタンクになってもらうのはどうだろう…。
それで、脇からハジメを狙ってきた人たちを倒す。
普通は盾役何だけどなぁ…。まぁいいか…。
あとは…いいところまで行ったらすぐこちらへ戻ってきてもらって、
隠れている二人でロープを張って追いかけてきた人たちには捕まってもらおう。
「うおぉぉぉぉぉ!まっすぐー!」
ハジメが奇声を上げて、猛ダッシュをしていく。
それを見たウエキの陣にいるヒトシは深いため息をつく。
「はぁ…あいつはいい加減、作戦とか戦術とか無いのか…。
まぁいいや、いつもどおり代わる代わるあいつを相手して、倒してしまえばいい。
後残りはどうにでもなるからな…」
「隊長!それにあの先には泥泥地帯にしてあるので、すぐに足を取られると思います」
「あぁそういえばそうだったな…ってことは今日もそろそろ終わりかなぁ…。
この戦いごっこもだいぶ、つまらなくなってきたなぁ…」
ヒトシが結局はいつもどおり終わるのだろうと、振り向いて、
自分の陣地の奥へ引っ込もうとした時だった。
彼らの戦場に笛のような、強い音が聞こえる。
「ん?笛??」
そうね…その笛の音こそが、私が考えた作戦の一つであり、
ハジメがヒトシへ初めて勝利する最初の一手だったのよ。
いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。
『ロートル作家とおとぎの異世界』77話です。
まだ暫く回想ですが、よろしくお願いします。
ではまた次回で…。
米




