ロートル作家は回想を聞いている 1
どんな昔話しなのか、ちょっと覗いてみましょうか…。
ロートル作家は回想を聞いている 1
私の母は実は体が弱かったらしいです…。
マーガレットは早くに亡くなったと言う自分の母親のことを、
話し出した。
~以下回想~
マーガレットの母親、ヨシノの視点
私は体が弱かった。
あの木の上に登るのも結構必死だった。
自分の家はそこそこの家で、ハナの町で華道とかいうものの、先生をやっていた。
ソメイ流という流派らしいが、正直花には余り興味が無かった。
風邪をひいては倒れ、夜更かししては倒れ、すこし頑張ったと思うだけで倒れていた。
だから、たまに遠くから聞こえる元気な二人組みの声を、
羨んだとしても罪にはならないと思う。
「またあの二人なの?どんだけ元気なんだろう…」
窓際のベッドから外を見る。赤髪の男の子と、金髪の男の子が、
盛大に喧嘩をしている。自分も男だったら、あの中に加われるのになぁ…。
あ、元気って言う条件があったわ…。
「一回でいいからあの中にはいれないかなぁ…」
何とかして、あの二人を見に行きたい。
「お医者様?私何とかして家の外に出たいんです…」
「ならしっかり、お薬を飲んで、無理をしないようにして、
まずは今の状況をもっとよくしないとだめですね」
「わ…わかりました!」
その日から、今まで以上にヨシノは薬をしっかりのみ、
無理をしない生活を心がけた。
両親には今の計画を、特に母親には絶対ばれないようにしながら、頑張った。
とにかく頑張った、アレをもしも誰かに頑張ったと認められなかったら、
なにを頑張ったというのか聞きたいくらいだわ。
あ、後、町の中を歩きやすいように、女だとばれないように、変装の練習もした。
あの日から重ねた努力のその甲斐もあってか、ようやく外出の許可が下りる。
ただし絶対に一日三回の薬を飲むこと、可能な限り運動はしない。
とか水には気をつけるとか…条件は本当色々あった。
でも、逆を言えば、それだけ何とかすれば外へ出るというのだから、
今までよりもずっと簡単だわって思っていた。
とにかく彼らを見たかった。毎日うるさいくらい元気な声を出している、
あの二人組みを。
「ベストプレイスだわ…ねぇ…。俺は…いや、
僕は…、うんこっちの方がしっくり来る感じ」
言葉遣いも気をつけなきゃ…僕は男の子、僕は男の子…。
手に入れた帽子や、男物の服もしっかり身につけている。
これで完璧でしょ?
やがて、お弟子さんたちに二人の事を聞いたら、
赤髪の子が、ヒトシ。金髪の子がハジメだとわかった。
ヒトシはウエキの町の子、ハジメはハナの町の町長の息子だった。
この国ではハジメという名前はさほど珍しくない。
勇者の名前がハジメという名前だったので、勇者のようになれということで、
多くつけられている名前だから。
ヒトシとハジメでは、正直、ハジメのほうが戦術という点では劣っていた。
私は本を読むことくらいしか、できることが無かったので、家中の、
なんだったらお弟子さんの持ってきた本も全部読んでいた。
お弟子さんの中には、警備兵さんとかも混ざっていることがあって、
彼らの持っていた戦術書というのも暇つぶしに読んでいた。
ようやく目の当たりにした二人の喧嘩?は思ったよりも一方的だった。
何でなのかは知らないが、一直線にハジメは仲間と一緒に、
ヒトシの陣地へ突っ込んでいく。
なので、ヒトシは対処方法を既に考えていて、罠なども使って、
これを迎え撃つ。
見ていて段々、可哀想に見えてしまったので、つい声をかけてしまった。
「やれやれ…怪我して痛くないのかい?君はもしかしたら大猪かなにかなの?」
「あ?誰だ?!誰が猪だ誰が!」
あっ、っと思ったときにはもう遅かった。
私に居場所はばれて、ハジメは機嫌悪そうに私を見ている。
「お、おい…喧嘩する気は無いぞ?ただ見ていて、
危ないなぁと思ったから、声をかけただけだ」
私は慌てて、敵は無いんだということをすぐに伝える。
「ん?危ない?どういうことだよ」
「君って真っ直ぐすぎるんだよ、そのままだと仲間も、
ほらケガをしている子もいるじゃないか」
「あぁ…これはあれだ…男の勲章ってやつで…」
ちょっと罰が悪そうに、ハジメは私に言ってくる。
「え?何言ってるの?怪我したらそれが元で、
死んだり病気になったりもするんだよ?君は大将なんだろう?
だったら部下の命を大事にしなきゃいけないじゃないか!」
私はちょっとその物言いにイラッとしたみたいだった。
自分は理由は違えども、病にふせってこれほど外へ出るのに苦労しているのに…。
そう思ってしまったのかもしれない。
「お、おい…そんなにらむなよ。悪かったよ。あぁ…大将…そうだな…。
お前の言うとおり俺は大将だな…。でも俺は戦術なんてしらねぇし…」
「よし、わかったよ。ならボクがそれを教えてあげる。
なんなら部下にはなれないけど、特別軍師になってあげるよ」
「特別軍師?」
「あぁ、今度の戦いの時にボクのそばに伝令役を置いてくれ、
その子に僕は作戦を伝えるから。でも僕は戦いには参加しない。わかった?」
「お、おう…よし!それで仲間が怪我をしにくくなるんだな?
ならそれでいい!特別軍師か…ところでお前の名前は?」
「僕の名前はヨシノだよろしく」
「あ、俺は下の名前を聞いたつもりだったんだが…。
まぁいいや、ヨシノよろしくな!」
こうして、私は、ハジメの特別軍師になることになったんだ。
いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。
『ロートル作家とおとぎの異世界』76話です。
今後ともどうか、よろしくお願いします。
ではまた次回で
米




