ロートル作家は森の中に入る 2
昔、某アニメで見た森の景色に少しの間だけ、心が持っていかれそうになったことがありました。
どんな芸術も自然の作る神秘的な世界には、きっと勝てないのしょうねぇ…。
ロートル作家は森の中に入る 2
「うわぁ…」
マーガレットが声を上げる。無理も無い。
俺達の今、見ている泉の在るこの場所は、まるで何かの物語から、
抜け出てきたかのように、神秘的な情景だったからだ。
泉の水は限り無く透明。そこに木々の隙間から陽の光が差し込んでいる。
それらは泉を照らし、まるでスポットライトのように四方八方から当てられて、
泉をライトアップしている。
恐らく月明かりでも同じことが起きるだろうな。
むしろそ、の時は夜である分、もっと綺麗かもしれない。
ずっと見ていたくなる衝動を、俺は今はぐっと抑える。
そうだ…作業をしなくては…。辺りをざっと見回す。
いい場所は無いかな?
泉から少しだけ離れたところにいい空き地があった。
もしかしたら、誰かがここに家でも昔立ててたんじゃあないか?と、
思わせるには十分な広さだ。地面もなんとなくだけど整地されている気がする。
そこだけぽっかり空間が開いていて、草が無い。
「ここにしよう…」
場所は見つかった、後は建てるだけ…。
材木はここは森なのだから、拝借すれば良いとして、どうやって建てるかだが…。
ここはかつて木造建築やログハウスに関して、
取材をした経験を活かすことにするか。
「よし!ここをキャンプ地とする!」
昔見たテレビ番組のように宣言をしてみる。
「「おぉ!」」
色々いいものを見たせいかテンションも高くなって、
二人はいい返事を返してくる。
「ではまずは材料を用意しないといけないな…。
材料に関しては俺が調達してくるので、
二人にはそれを組み立ててもらうことにしよう」
「組み立て方が分からないのだが…どうしたらよいだろう」
「うむ、松さんいい質問だ。材料調達の前に、簡単な説明書を書くので、
それに合わせて、しっかり対応してくれれば大丈夫だよ」
そういって俺はすぐに、紙を取りだして、図とやり方を簡単に書いていく。
「その間にふたりは飯でも食っていてくれないか?」
二人が食事を取っているのを見て説明書作成作業に戻る。
コンクリートとかはないので、本当にただ家を組み立てて、部分部分には、
インスタント空想術の『固』をかけて建てるだけにすることにした。
「まず俺が木を切って持ってくる。それを二人で組み立てるそれだけだ。
途中は手伝うけど、基本的には自分たちでなんとかしてくれな?」
「わかった…」
さて出来上がるまではどうするかな…俺のテントを貸すのもやめておくかな。
「よし、じゃあはじめるか…。あ、そうそう出来上がるまでなんだけどね、
そこがいいと思うんだよ、その木の洞ね」
「え?テントは貸してくれないの?」
マーガレットが驚いたような顔をしている。
「…マーガレット僕らは二人でここで頑張ると決めたんだから、
ここはナガラの好意にこれ以上甘えたらダメだと思うんだよ」
松、お前いいこというな。
「さすが松!まぁマーガレットもそんなに心配しないでほしいな。
最低限の手伝いは俺もするからさ」
「ナガラさん…そうですよね!わかりました!私もできることを手伝いますね!」
「あぁ、僕もがんばるよ!」
いいねぇ…ただどこまでもつかなぁ…とは思うが…。
「よし!まぁまずは家つくりだな!頑張ろう!」
本当はこの後、食事も自分でダヨ?って言おうと思ってんだが、
今は決意に浸る二人の気持ちをそぐのもなんなので、後で言うことにした…。
いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。
『ロートル作家とおとぎの異世界』69話です。
どうか今後ともよろしくお願いします。
ではまた次回で…。
米




