ロートル作家はテントに戻る
自分の本気出せるときに一回だしたかった。そんな気持ちを代弁するかのように、
ナガラは全力で町と町の間を走ります。
ロートル作家はテントに戻る
俺の使っているテントはオージからもらった、付与具になる。
『開』で開き『閉』で元の小さな置物になる。
持ち運びにも便利だし、本当重宝している。
防音、遮光、温度調節、耐久力ともに大変優れている。
防音は、中の声が聞こえない。だが、外からの呼びかけは聞こえる安心設計。
遮光は中に誰が居るのかが影で分からないようになっている。
外からの光に関しても、必要な分だけしか入ってこないようだ。
恐らくこれにも、なんかしらのキーワードがあるんだろうな…。
本当にオージからもらった?借りた?テントは秀逸だよ…。
んでだ、そのテントは今、理由があって、二人の若者に貸している。
まぁ今後のこともあるし、自発的に色々考えて頂かないとな。
しかし…本当凄いよな、あの距離をなんと1時間で、
走破できるのだからたいしたものだ。
その結果については、我ながら驚くばかりだ。
誰にも見られないという利点も在るので、
夜の、この区間のダッシュは楽しいのもある。
それに、女神様からもらったこの体の、ちょっとした本気を見たかったのもある。
実にグレートだった。
やがて、自分のテントも見えてきたので速度を落とし静かに到着する。
一応、テントの側から声をかけてみる。
「おーい、中でいちゃついているか?これから入り口の布をめくるから
いちゃつくのいったん中止してなー」
うん、俺紳士的だ。とりえず、二人に先に予告をしてから入ることにした。
「やぁ、全て終わったぞ!いちゃついてたかい?」
「「いちゃついてません(ない)!」」
そうかそうか、なら安心だな。俺は二人にそれぞれの家に、
家出証明書が届けられたことを伝えた。
「さて、これで一段階クリアだな」
「一段階?」
松が俺の一段階という部分に引っかかったのか、聞いてくる。
「あぁ、まだ最初の段階だ。次は第二段階なのだけど、
泉の方に隠れ家を作らないといけないな」
「え?隠れ家を作るんですか?!」
今度はマーガレットだ。まぁ気持ちは分かるが、
いつまでもこのテントを貸し出しするわけにも行かないからなぁ…。
「そりゃそうさ、このままこのテントに居られても、
困るしな泉の側にログハウスでも建てれば、
まぁなんとかなるんじゃないか?」
「確かにテントにずっと居るわけにもいかないものな」
「うん、松さんよくわかってるね。そうなので、明日は家を作ります」
まぁ三人で協力し合えば何とかなるだろうさ。
「っというわけで悪いけど俺は寝かせてもらう。このテントは広いから、
もし心配なら半分からこっちが俺、そっちは二人の領地としようじゃないか。
異議は無いね?」
「あ、あぁ…」
「なら、良し!では明日に向けて寝るとしようか、お休み」
お、なんかテントの中が暗くなっていっている気がする。
あぁこれがキーワードか?とにかく明日を楽しみにして俺は眠りについた。
いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。
『ロートル作家とおとぎの異世界』67話。
どうかよろしくお願いいたします。
ではまた次回で…。
米




