ロートル作家はハナサカの都の話をまだ聞く
情報収集はまだまだ続きます。まだね、もうちょっと、もうちょっと続きますよ。
ロートル作家はハナサカの都の話をまだ聞く
「ハナサカの都は今のポチ様になってからだが、その人間に身分によって、
入れる場所が制限されるようになっているんだ」
「身分?」
「そうだねぇ…貴族とか、そういった身分だね」
身分では入れる場所が決まる??ヒエラルキー的なものか?
一般の人間の住める場所や行動範囲が決まっている。
そういうことでいいのだろうか?だとしたらずいぶんな話だな…。
「あぁ…ナガラはそういうタイプの人間なんだね…」
「そういうタイプ?一郎さんが何を言っているのか、
良く分からないけど、そういうのは、俺は余り好きじゃないのは確かかな」
なんか気持ちが熱くなるな…。
気に入らないと思う…すごく気に入らない。
なにか間違っている…。
みな平等なんて、綺麗事は言うつもりはない…が、それはポチ様の考えじゃない。
多分今の王族は道を誤っている…そんな気がしてならない。
あれ…何か感情がオーバーヒート起こし始めたそんな感じで、
頭が熱くなっていく…。
だいたい…あいつが…そんなたまな、わけがない…!
…ってあいつって誰だ?
何か気持ちがおさまらない…あぁむかつくな…。
何だか一瞬だけど、すごく困った顔で優しく笑う、
イヌミミの女の子の顔が浮かんだ気がした。
「あぁ、ナガラすまなかったね…何か気分を害して…」
何も言わない俺に気を使ってくれているのだろう、
一郎はその場を取り繕うようにしている。
なんかそういうの関係なくて、頭の中で何かが騒いでいるような、
感覚がどんどん強くなっている…。
そう考えていると俺の口は、勝手に一郎へ向かって、
大きくはないが強い意思を持って、言葉を吐き出していた。
「気に入らないな…だいたいさ!ソレって何だよ!
なにより…ポチがそんなこと許すわけがないだろ!」
「ナガラ…?!」
一郎が俺を見て何か驚いたように、慌てて体を軽く叩いたり、
ゆすったりしている。
いや大丈夫だよ一郎…俺はいたって冷静だ。
冷静に憤慨しているんだ。
何だか気持ちがおさまらない…あいつが…いや…。だから誰だ?
あいつって…。
頭が痛いな…。そもそもなんだこの感情は…。
「ナガラ?!大丈夫かい?ナガラ!!」
「え?あぁ、一郎さん…。あ、すみません!」
なんかふわっと頭が軽くなって、一瞬湧いた感情が消えた気がする。
「なんか…ポチ様を呼び捨てしちゃってたりとかしていて。
全く見たこともない人なのに…」
とりあえず謝ってみている。不敬だよな…。
いかんいかん、しっかり謝らないといかんよ。
「聞いていたら、なんだか急に腹立たしくなってしまって…。
ご心配かけて申し訳ありませんでした」
「あぁ、いいやいいんだよ…気にしないでいい。ここには僕らしかいないしね。
僕のほうこそ、取り乱してすまなかったよ。
まぁ新しいお茶でも飲んで、一息つけようか」
いつもと違う、俺の様子に何だかだいぶ慌てていたようだが、
俺がいつも通りに戻ると、安心したように、少し考えた後、
もう一杯新しいお茶を入れてくれる。
「あぁ…そうか…感情移入をしていたんだね?
いやぁ、なんか本当ポチ様を知っているような話しぶりなので、
何が起きたのかと思ったよ」
「あ、すみません…。なんか、こう…急に腹が立ったんで…。
勇者様の話少しだけ聞いたんですよ。
弱虫の優しいポチ様が、絶対やらないことだなぁって思ったら…」
「ははは、いやぁ驚いたよ。そうだね、優しき正直者で、
良い意味で弱虫であったと言われているからね、ポチ様は…。
でも、最終的には、勇者様のお仲間の中では、一位二位を争う、
強さを持っていたとも言われているんだよ?」
弱虫ポチ様は、勇者の最初の仲間だったといわれている。
腹をすかして、倒れそうだったポチ様を、勇者が食料で釣ったらしい。
食料をもらい、風呂や寝床、大事にしてもらったポチ様は、
イヌミミ族の掟に従い、勇者へと忠誠を誓ったらしい。
弱かったポチ様は人一倍の努力をして、勇者を守るものといえば、
ポチ様といわれる程になったらしい…。
なるほどな…そりゃ余りにもおかしい話だ。
俺が憤ったのも無理もないな…。よく分からんがそう言う事なのだろう。
「いやぁ…本当すまなかったよ…まさか、ナガラがそこまで反応するとは、
思っていなかったからね…」
「いや、こちらこそ、びっくりです。本当すみませんでした」
ただ…まだ、何だか胃の辺りが辺りがむかむかするな…。
余程イラッとしたんだろうな…いかんいかん。
平常心平常心…。
「落ち着いたかな?では、改めて身分による入場の制限について、
説明をするからね?都での動きには良く注意をするんだよ?」
すっかりおもいっきり、話の腰を折ってしまったせいもあり、
ようやく、入場制限の話へと話は移っていくようだ。
しかし、さっきのあの感情はなんだったんだろうな…。
いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。
『ロートル作家とおとぎの異世界』49話です。
次回はなんと50話。なかなか話が進まなくて申し訳ありません。
どうか、また次回もよろしくお願いします。
米




